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子宮全摘出手術について。①

 201x年。私は腹腔鏡手術式で子宮全摘手術を受けた。

 娘と二人でいて、夫は不在であった時に、突然に膣から大きな凝血塊が降りて来た。立った姿勢で、力を入れなくても、レバーのような塊が、ボトン、ボトン、今まで見たこともないような大きな塊で、下着でも受け止められずに足を伝って落ち始めた。
その凝血塊は手のひらにドンと乗るような大きさで、レバーみたいな色をした血餅のように見えた。その後、大量の出血が膣から溢れ出した。その出血は夜用の大きいサイズの生理用ナプキンが1時間も持たない程の量であった。鮮血だったので、嫌な予感がした。

 もうそろそろ閉経してもおかしくない年であるのに、忘れた頃に月経の血よりもサラサラとした鮮血が、気まぐれのように年数回やって来ており、いまだに閉経しないことを鬱陶しく思っていた。でも今回は大きな凝血塊が何度も降りて来るのはおかしいと思った。すぐに病院に行ったほうがいいのではと思うが、おそらくこのまま入院になるかもしれない。今夫は不在。血はその間に止まるかもしれないし、帰って来るまで待とうと、三日間家で過ごした。その間、血が止まることはなく、大量出血が続き、トイレの間にも続き、便器を見ると鮮血で真っ赤になっていた。血が満遍なく飛び散っていたため。出来るだけトイレで血を落とそうとトイレに篭ったりした。
寝る時は夜用ナプキンを4枚使って前後左右をカバー出来るような十字につなげた。それでも安心して眠れるはずもなく、目が覚めるたびにトイレに篭る程だった。
凝血塊は降り続けた。その量は子宮の大きさを遥かに超えていたと思う。鶏の卵大くらいの子宮に、あんな量の凝血塊が詰まっていたとすれば、子宮内膜はぱんぱんに大きく膨れて、内膜は相当分厚くなっていたか、子宮に血液を供給する血管から血栓が送り込まれていたのか?4日目に病院で診てもらった時にはすでに凝血塊は出尽くしていて、大量出血がおさまりかけていたし、医師は凝血塊を直接見ていないので予想するしかなかった。

 病院について問診を受けている時は、朦朧としており、様子もおかしかったと思う。睡眠不足、貧血、上手く話せない、聞き取りは難しかったかもしれない。
続いて、多少屈辱的な診察台に上がる。膣を広げて診られる時に耐えがたい痛みを伴った。医師は「真っ赤で何も見えない」と。
これは何の痛みか?出産や月経の痛みとは種類が違う。血管をギーッと引っ張られているような痛み。例えば、まだ点滴の針を刺すのに慣れていない看護師さんが、患者に与える血管の痛みと同じ種類のような痛み。多少の痛みなら声を出さずに黙って耐えられるタイプなのだが、この時ばかりは痛みが強すぎて暴れてギャーギャー叫んだ。診察室の看護師は、呆れたような表情をしていたけど、私は痛みには強い方と自負している。それでも我慢出来ない痛みだった。本当に。

 この時期は、甲状腺機能低下の診断を受けて、チラーヂンで甲状腺ホルモンを充填する治療も始まっていた。甲状腺ホルモンの分泌が長期に低下すると、それに伴いコレステロールの代謝が鈍り、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の上昇につながる。基準値は70~140mg/dLであるのに、私の場合は280mg/dLを超えていることもあった。この時はまだ高血圧と高脂血症の投薬治療は始めていなかった。甲状腺ホルモン充填で、落ち着いて来ると悪玉コレステロールの値も下がると当時の担当医は言っていた。その時、背中の背骨辺りから、冷たいものがポタリポタリと止まることなく落ちて来て、腰回りに溜まっていく感覚、腰の周りの奥の方にぶるんぶるんとした冷たいものが溜まっている感覚がある、これは何だろうか?と質問してみたけれど、簡単に言えば「気のせい」的なこととしか答えてもらえなかった。私の想像でしかないけど、これは子宮内膜を柔らかくするため、そこに溜めるための血液が、今回異常にドロドロとしたものとなり、更年期になって、プロゲステロン(黄体ホルモン)が暴走し、そのドロドロした血液をずっと溜め続けていたのかも知れないのではないか。周期性を無視して、プロゲステロンが長期間優位に働いてしまったために、爆弾のような凝血塊がゴロゴロ出来てしまったのではないかと。

 これは、全摘手術後の話になるのだが、新型コロナ禍で、大きな病院は避けて、専門クリニックに転院したら、医師からチラーヂンだけでなく、高血圧と高脂血症もきっちりコントロールしましょうとなった。
遺伝的なもので、チラーヂンだけではコントロール出来ないという事だった。もし、チラーヂンだけではなく、高血圧と高脂血症の治療を同時に始めていれば違っていたのかとも思うけれど、今となってはわからない。更年期による女性ホルモンの不安定な周期、橋本病による甲状腺ホルモンの減少、ホルモンは体の中でほんの少ししかないのに、不調になれば身体にとって、さらに大きな不調につながってしまうのは、人体の不思議。ホルモンというのは、例えば、25m×15mの、学校にあるようなプールの水の中に、スポイドで落とす一滴分しかない、というのを聞いたことがある。ほんのわずかな量のものが正常な指示系統を担い、それに従い身体を作っている。

 話しを戻す。
診察にて、結果はとにかく私の顔色は真っ青で、このまま帰宅はさせられない、3日間の出血による貧血、もしまた出血が始まれば輸血も必要になるので、即入院となった。

続く。

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