財務分析の基本 【ブリッジチャートの考え方】
会社の決算資料をよく見る方であれば、以下のようなグラフはおなじみかと思います。実はこの要因分析の見せ方は投資銀行でもよく用いられ、様々な資料で出てきます。今回はこの分析の考え方について、初心者にも分かるようにサクッとまとめました。
概要
まずグラフの名称ですが、金融の世界では橋の様に見えることから「ブリッジ」と呼ばれることが多いです。また、滝のように見えることから「ウォーターフォール」とも呼ばれます。
ざっくり説明すると、ブリッジはあるスタート地点から始まり、どのようにしてゴール地点に到達したかを、一目で分かりやすく見せるためのグラフです。
前提条件
かなり簡易的なPLですが、前提は以下の様に置きます。
売上は単価×数量で計算
一年目は$50×10個で$500
二年目は単価・数量ともに増加し、$60×15個で$900
コストも単価×数量で計算
一年目は$40×10個で$400
二年目は単価・数量ともに増加し、$45×15個で$675
損益は売上−コスト
一年目は$500−$400で$100の利益(20%の利益率)
二年目は$900−$675で$225の利益(25%の利益率)
要因の分解
さて、ここからが本題です。損益の増減要因を特定するところから始めます。今回は簡易的なモデルなので、以下の3つです。
数量
売上単価
コスト単価
一年目(スタート地点)と二年目(ゴール地点)の間に、3列追加し、各要因による増減インパクトを計算していきます。
売上
先ほどの前提通り、一年目は単価$50で10個(=$500の売上)、二年目は単価$60で15個(=$900の売上)売れました。仮に二年目の単価が一年目と同じ$50で、数量だけ増加した場合、売上は$50×15個で$750になります。つまり数量の増加による売上への影響は+$250ということになります。
次に数量が増加した状態で、単価も$60に増加した場合、売上は$60×15個で$900になります。これはひとつ前のステップで計算した$750より$150高いので、単価の増加による売上への影響は+$150ということになります。
コスト単価は売上には関係なので飛ばします。
まとめると、売上が増加した$400の内訳は、数量の影響が+$250で売上単価の影響が+$150です。
損益
おおまかな考え方は売上と同じです。
一年目はコスト単価$40で10個(=$400のコスト)、二年目はコスト単価$45で15個(=$675のコスト)売れました。仮に二年目のコスト単価が一年目と同じ$40で、数量だけ増加した場合、トータルコストは$40×15個で$600になります。つまり数量が増えたことにより、コストは$200増加しました。そして数量の増加による損益への影響は、先ほど売上のセクションで計算した$250から$200を引き、+$50ということになります。
次は売上単価。トータルコストには関係ないのですが、損益への影響はあります。理由は売上単価を上げてもコストは増えないので、売上単価の増加分がそのまま損益の増減につながるからです。この場合+$150です。
最後に売上の時と同様、数量が増加した状態で、コスト単価も$45に増加させると、トータルコストは$45×15個で$675になります。これはひとつ前のステップで計算した$600より$75高いので、単価の増加によりコストは$75増加しました。そして、こちらもそのまま損益への増減につながるので、単価の増加による損益への影響は−$75です。
まとめると、損益が増加した$125の内訳は、数量の影響が+$50、売上単価の影響が+$150、コスト単価の影響が−$75です。
利益率
これは単純にProfit / Revenueを%表記して、差分で各要因の影響を計算しているだけです。数量の増減は利益率には影響しないので、数量の列の利益率の差分はゼロとなっているのが確認できます。
アウトプットの作成
今の世の中はとても便利になったものです。エクセルにデフォルトでブリッジチャートを作れる機能が備わっているのですから。私が新人だった頃は手動で作っていたので、慣れるまで厄介なグラフでした・・・
まず以下のような各要因の影響がまとまった表を作り、それを選択したうえで、挿入→ブリッジチャートで一瞬でグラフができてしまいます。
一点だけマニュアルな調整が必要なのは、合計の列を指定してあげることです。これをしないと全ての列が積み上げになってしまいます。列を右クリックして、Totalとして設定するだけのことですが笑
以下が完成したブリッジチャートです。増と減で色分けしてあげると見やすいですね。あとは好みにもよりますが、私は余計なものは全て省きたいので、グリッドや軸線は消すようにしてます。
以上、ブリッジチャートについて簡単にまとめてみました。かなりよく使う分析手法なので、考え方を理解しておいて損はしないと思います。
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