田尻のケツ割れ日記 2022年9月1日~30日
9月1日「三澤威」
神保町の神田すずらん通りを歩いていたら、元プロレスラーの三澤威が個展を開催中との看板が目に飛び込み、思わずギャラリーに入ってしまった。
三澤威は現在、お坊さんの修行を積み、僧侶的な名前を与えられ、そして画家としても活動をしつつ、ダイヤモンドを砕いた粉を練り込んだサポーターを販売してるらしい。
三澤威についての知識はライガーの浴びせ蹴りで頸椎を負傷。プロレス引退後、トレーナーに転身。若いころは顔が似てるだけの理由で蝶野二世とか呼ばれてた、程度しかなかった私は、一気に三澤威に関する新しい情報が雪崩れ込んできて、頭がパンクしそうになった。
ギャラリーの一角では、横山剣のようなチョイ悪風なスーツに身を包んだ、三澤威本人と思しき人物が数名のマダムを相手にし、何かスピリチュアルな会話を交わしている。絵は普通に上手だった。
9月2日「アンハッピーセット」
目が悪過ぎてマクドナルドのメニューがよく読めなかったのだが、最近はモバイルオーダーを駆使することで弱点を解消し、頻繁に利用している。
近くに座っていた親子連れがドラえもんのオマケが付いた、ハッピーセットを注文していたようだが、男児が望んでいた種類のドラえもんが出なかったらしく、彼は笛みたいな猫型ロボットを床に叩きつけ、大きくバウンドすると、私がいる席のアクリル板にヒットした。
男児の憤りに触発されたのか、たまたまカバンの中にメルペイで購入した金正恩&側近フィギュアが入ってたので、アンハッピーセットを作ったのだが、組み立て中に側近の首を床に落として失くしてしまい、恐ろしいことに…。
9月3日「水害と将軍様の鞄」
家が水害に見舞われてしまった。といっても自然災害の類ではなく、近ごろ購入した床置き型エアコンの使用ミスである。
除湿機能を用いた際、申し訳程度のタンクは設置されているのだが、熱帯雨林化した東京では容量がモノの数時間で満杯に溢れるため(タンクがいっぱいだと勝手に電源が止まる)、専用ホースで外のポリバケツに直、排水している。しかしこの方式だと水を捨て忘れて寝たとき、安全装置皆無なバケツが水をぶち撒け、とてもアクアでマイナスイオン出まくりな部屋で目覚めてしまう。もう少し大きなポリバケツを買おうかとも思ったが、それで排水をしばらく忘れたときには、さらなる大水害が起こると気づくと同時、昔、朝鮮総連系の本屋で立ち読みした、金正日を讃える本に書かれていた、“将軍様と鞄”みたいな一節を思い出した。
“いつも我々、人民のためを思い、忙しい業務を抱え、書類で鞄をパンパンに膨らませている偉大なる金正日同志。
ある日、お誕生日だったかに大きい鞄を側近たちがプレゼントしたのだが、人民、ないしは共産主義の未来を想い、働きづめの首領様は結局、すぐに大きな鞄もパンパンにさせてしまうのだった。”
それは多分、ズボラな性格を直し、処理済の書類はどっかに箱詰めでもするか、シュレッダーにかけたほうがいい。もっと大きな鞄を買ってあげたら重過ぎて、肩が破滅する。とりあえずポリバケツはそのままにした。
9月4日「コスプレ神」
政治と宗教の関係が取りざたされる中、うっかりそんな現場を目撃してしまったことがある。十年ほど前、みすず学苑(合格してクレオパトラとか、印象的なコスプレ広告が有名)を主宰する、ワールドメイトの教祖様、深見東州(半田晴久)の演歌コンサートを聞きに行った。
会場の渋谷公会堂に着くと、エントランスにはお祝いの花が多数。
その中のひと際、目立ったフラワーギフトの送り主は、“内閣総理大臣 安倍晋三”。そのほかにもそれらしき自民党議員の名前が立ち並び、今だったら「おぉ~…コレかぁ!!」と大いにテンションが上がるに違いない。
否…その当時でも高揚してしまった私は、携帯で無邪気にバシャバシャと写真を撮りまくり、コレがいけなかった。
「お客さま、撮影は禁止です!!」
と係員が飛んできたのだが、ココでワールドメイトの特殊性(教祖様がコスプレ好き)が現れ、スタッフが全員、アニメのコスプレをしているのだ。
私はワンピースのルフィとドラえもんに両腕を捕まれ、会場の外に摘まみ出された。作中ではいつも穏やかなドラえもんが…
「ルールは守ってもらわないと困りますよーッ…!!」
とマジ切れしてきて、本当に怖かった。結局、のび太君よろしく「もうしません…」と謝罪した私は、会場に入れてもらったのだが、信者ではないのでコンサート中は眠くて堪らなかった。
欠伸を我慢しようと何度も目を擦っていたら、泣いてると勘違いされたらしく、隣のおばさん信者がもらい泣きしてた。
9月5日「アンパンマン問題」
バイト先の女性社員、Yさんとアンパンマンについて話をしていた。
Yさんは十歳くらい年下だが、アンパンマンくらいの強力コンテンツともなると、ちょっとやそっとの世代差は無問題。
普遍的な共通の話題だなー、などと思っていたら、
「幼稚園の紙芝居がアンパンマンの日は嬉しかったな。やっぱり暴力描写があると子供は喜ぶもんね」
という私の発言にYさんがドン引いてしまった。
原因はバイオレンス云々の下りではなく、紙芝居のフレーズ。
アニメではなく、紙芝居でアンパンマンを知った世代として、私はその瞬間から完全なおじいさんとして扱われている。
多分、紙芝居というワードの強さから、Yさんのイメージの中の私は、公園で鼻水垂らしながら水あめ配ってもらってるのだが、まだ四十代前半なのでその時代までは知らない。
9月6日「人生のリクエスト制度」
「どうして君だけ演奏してないんだ!?」
人生におけるビデオ判定がほしいことがある。上のセリフは小学校の合奏中、私だけピアニカを吹いていないと、担任から疑念を抱かれたときのこと。
ちなみに演奏はしていた。今でもやってる感の逆、やってない感を本当に出してしまう性質なので、特に今より社会性の薄い小学校時代、マジで何もしてない感丸出しの児童だったのだろう。でも、さすがに吹くところから口が離れてでもういない限り、吹いてない証拠にはならないので、やっぱりリクエストで白黒ハッキリさせたかった。
「話を聞いてるの!? 今、違うこと考えてたでしょ!?」
コレは人生で何百回言われたかわからないので、逆に具体例が思い出せない。話の内容を復唱すれば聞いてた反証にはなるが、違うこと云々は脳内の問題なので証明できないし、別なことを考えるくらいの人権は欲しい。
自分がどのくらい興味のなさそうなムカつく顔をしてるのか、今後の参考にもしたいので、ぜひコチラもビデオ制度を導入してもらいたい。
「やる気があるのか…!?」
コレは本当に実証が難しい。そもそも定義が微妙である。
この問いをできる立場の側より大抵、コッチのが働いてるケースが多いので、驚いた表情のビデオ判定で相手方に何かを察してほしい。
余談だが、監督がリクエストを求め、指で四角いジェスチャーをしたとき、主審がエロ本を出したら少し場が和むと思う。
9月7日「食べなログ3」
<大沢食堂 評価4.0>
伝説の空手家&キックボクサー・大沢昇の有名な店。
元々は巣鴨だったがかなり晩年の店舗移転後、家のほぼ目の前だったが、空手家の誰それさんがあまりのカレーの辛さで気絶した…とか怖い話を聞いていたので、一度も行かぬまま閉店してしまった。
今、いろいろ大変なサイキック芸人のキックさんに「もったいなさ過ぎますよ!!」とチェストされそうなくらい、残念がられた。
9月8日「宗教三世の実力」
母親がかなりギンギンのカルト二世だったため、私も厳密にいうと三世だ。母の代で脱走してるので私はほぼノータッチなのだが、幼いころは洗礼を受けたり、うっすらと何かしらの活動はしてたらしい。記憶にはないが。
あるエキストラの仕事。カルト宗教がテーマの作品で私は、有象無象いる白装束を纏った信者の中のひとり。集合場所に着くと助監督から、「皆さん、お経は覚えてきましたか?」との呼びかけが。エキストラ一同が一斉に手を上げる中、何も聞いていない私は、両手ブラリ。
「ちょっと…君、どうして覚えてこなかったの!? 事務所ドコ!?」
「大川興業です」「ちょっとマネージャー来てないの!?」
こんなエキストラ現場にマネージャーが来るはずもなく、私は「(またやってくれたなkマネージャー…)」と苦々しい思いを抱きながら、ひとり本番まで架空のお経を猛特訓した。
本物なのかスタジオなのかわからない、寺のお堂を潜った私たち一同は、
「古賀プロダクションの人は前の列(なぜか優遇されている)、ほかの人は後ろのほうに座ってください」
と指示を受け、それぞれの持ち場で撮影スタート。
早速、お経を読み上げる段なのだが、完璧に覚えたとのたまっていたプロのエキストラ連中から一切の声が聞こえず、そもそも彼らは普段、通行人役ばかりなのでセリフを読み上げるのがかなり苦手らしかった。
その点、私は過去には謎の暗闇演劇で長い説明ゼリフパートを担当し、舞台では大声と勢いで局面を突破してきた。そして宗教三世実力…を発揮したかはわからないが、私の経読みは誰よりもハッキリとした声量で正確であったと思う。すると監督自らがわざわざ私の元を訪れ、
「君…本物の信者みたいだね」
とお墨付きをもらい、私はプロエキストラと思しき古賀プロダクションの方々よりも前のポジションを与えられたのであった。
そして当日には事務所の先輩、裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火もなぜか参加しており、
「君…キャラ濃いなぁ」
と常人離れした風貌を監督に見初められ、阿曽山さんはエキストラから信者たちにお祈りの仕方を教える、幹部の役に昇格していた。
9月9日「死のシェアサイクル2」
私が住んでる文京区は選挙の投票率が全国一、高いらしい。
ほかにも犯罪率が低いなど、ホワイトなイメージの強い土地柄なのだが、実態はそうでもない。
帰り道にシェアサイクルを走らせ、途中にあるテイクアウトの海鮮丼屋で、五百円のマグロ丼を購入した。さらにその先の薬局に用事があり、食い物持ったまま店に入るのもなぁと思い、シェア自転車のカゴに突っ込んだ状態で入店。頭痛薬と絆創膏を買い、モノのニ〜三分後に自転車へ戻ると、カゴの中が空になっていた。
人生でマグロ丼を盗まれる経験が何回あるだろうか?
私は驚きと共になぜだか少し、嬉しくなってしまった。
その先、家に着くまでもう何も店がないため、私は引き返してもう一度、マグロ丼を購入。店員がかなり不思議な顔をしていた。
9月10日「立ったり座ったり」
プロ野球観戦の声出しが、アリにやるやらどうやらだそうだ。大きな声援を送りたいファンもいれば、座って黙々と眺めたいタイプもいるだろう。
コロナより全然、以前の話。
外野席の観客はいつからそうなったのか、攻撃側のときは皆、立ち上がる暗黙のシステムが出来上がっていた。まあ、それは定着してしまったモノだから仕方がないが、微妙なのは外野自由席の中でも一番安い、ポール際の内野と外野の中間くらいの客席。立ちたい派と座って見たい派が混在し、東京ドームで広島対巨人戦を観戦中、イデオロギーの違う者同士が喧嘩を始めてしまった。手首をつかみ合った際、喧嘩客の持ったビールが手から外れ、少し離れた席にいた私の顔面に中身がすべてぶっかかった。
小競り合いを演じた客は係員に連れていかれ、消化試合でのひとりビールかけを終えた私は、その場に放っておかれた。
その直後、応援していたカープは逆転ホームランを打たれて負けた。
9月11日「あおり券売機」
牛丼の松屋で券売機のメニューを選んでいると、店に入ってきたお客が私の真後ろ、スレスレ十センチ以内のところに立ってきた。私は運転免許がないのであおり運転をされた経験はないが、恐らくこういう感じなのだろう。
操作を気持ち急いだせいか食券の選択を間違え、牛丼一杯に豚汁が二杯、付いてきた。まだ夏の気候なのに豚汁二杯飲んでる自分は、変わり者だなー、などと思ってたら、店内にはさらなる強者が存在した。
前述のあおり松屋をしてきた彼は、牛丼と味噌汁に七味唐辛子を瓶が空になるまで、メチャクチャ大量に振りかけ、しかも食ってる途中にむせていた。
そして食器を下げる際にお盆から手を滑らせ、全部床にぶち撒けていた。
優勝。
9月12日「強い大川興業」
大川興業芸人の特徴は、勝っても誰も得しない、誰も望んでいない場面で無類の強さを発揮してしまうことである。
寺田体育の日さんは若手時代、日本テレビの深夜番組に出演し、罰ゲームで女子プロレスラーにボコられるという美味しい役どころを与えられながら、アイドル系だった府川由美(唯未)を逆にボコボコにしてしまい、司会の久本さんをドン引きさせ、局には苦情の電話が殺到。
大川興業は日本テレビを出入り禁止になったという。
松本キックさんがリン魂の企画で佐藤ルミナとスパーリングし、膝十字を決めてしまったり、昔は妙に肉体派が多かった。
現在は引退している柴田GOZOさんは、正月のフジテレビでフジ男決定戦という特番に出演し、階段を駆け上がるのが早いというだけの理由で、参加者千人以上の芸人を押し退けて優勝(多分、武井壮辺りが優勝する予定だった)。
作業服姿の無名芸人が元日、真っ昼間のフジテレビで大映しにされるという大事故が起こってしまい、気を使ったナイナイの岡村さんが「キミ、せっかくだからギャグとかやったら?」と振ったところ、
「ないです」
と断ってしまうミラクルまでを巻き起こしていた。
そして銀河と牛、ジョニーさんは『特捜警察ジャンポリス』という番組にVTR出演。遊戯王のスマホゲームで人気声優やアイドルと戦い、勝者がスタジオに行けるという企画趣旨だったが、ジョニーさんが優勝した途端、スタジオ行きの企画自体が消滅し、そのまま番組が終了してしまった。
年末の単独ライブに向け、現在、そのビデオを捜索中である。
9月13日「手で書いた原稿」
手で書いた原稿とは、全然、頭を動かしてないのになんとなく、適当~…なノリで言葉を羅列していくうち、完成してしまった書き物のこと。
「とにかく手を動かせ」と昔、編集者の先輩から言われ、ほかにもそうした持論の人も見てきたが、そういう芸当が可能なのは才能のあるひと握りの人間に限られ、私は内容をメモや頭の中で練り込んだ末、書き始めるのが当然だと思っていた…が、最近はコレが出来るようになってしまった。
というのも別に能力が開花したわけではなく、十一年連載を続けてる九州スポーツの熟女AVコラムの執筆に際し、もう本当に書くことがないのだ。
アイデアを何時間ひねっても成果はゼロ。ほとんど唯一の継続仕事を失うワケにもいかず、な~んとなく手を動かしてみたところ、アラ不思議。
それらしき形の何かが出来上がっていた。
そして、綿密にプラン立てをしていた過去の原稿と見比べても、まったく出来栄えに遜色がないというのが、逆に少しショックであった。
恐らく同じネタを何度も書いてるとも思うのだが、昨日の私と今日の私は別人なので、見方が変わればOk。
無名地下芸人のAVコラムが十二年目。締め切りは守るモノだな。
9月14日「馬場のゲーム」
109のイベントスペースでG・馬場の展示が行われてたそうだが、ボーッとしてたら期間が終了してしまった、惜しい。
久々に全身でG・馬場のスケールを堪能したかったのに。
中学生のころ、武道館で一度だけナマ馬場を見たことがある。
試合前、会場の後方でパイプ椅子に腰かけ、若手が練習するリングを見守っていた馬場に対し、二階席にいる小学生くらいの集団が紙テープを上から垂らし、馬場に当たるか当たらないかくらいの距離感をギリギリで競い合う、馬場チキンレース、または馬場危機一髪に興じていた。
立ち上がった馬場の頭にテープの先がフワリと触れ、違和感に上を見上げると、少年ファンたちは退散。確か百田に見つかって怒られてた。
あのゲーム、ちょっとやりたかった。
9月15日「鈴木ヒロミツさん」
夏の終わりくらいに思い出すことがある。
滅多なことでは家族旅行に行かない牛越家だったが、小五くらいのころに伊香保温泉へ泊りにいった。車での道中、どっかのPAで偶然いた鈴木ヒロミツさんを発見し、テンションの上がった親父は、
「おまえ、鈴木ヒロミツさん好きだろう? 握手してもらえよ!!」
と小学生に鈴木ヒロミツファンを強要。
小五でモップスとか知るワケないのだが、断れない空気だったのでお願いすると、快く応じてくださった。
「おまえ、鈴木ヒロミツさんのサイン欲しいだろ? ちょっと待ってろ!!」
親父は色紙の代用品を探しにいってしまい、母と姉も買い物中だったため、小五の私は全然、興味のないミュージシャン兼俳優とふたり切りにされてしまった。とりあえず何か言わないとと思い、「ファンです」とバレバレの大ウソをついた小学生に優しく微笑んでくれた鈴木ヒロミツさんは、多分、底抜けに善人だったと思う。
9月16日「サンマルク最強決定戦」
今日も作業をサボり、サンマルクカフェでダラダラと裏BUBKAとか読んでいたのだが、近くに陣取ったカップル、戸川純似のすれっからしを前面に打ち出した熟女が、戸川よりは若いラガーマン風の男性を延々と言葉責めしていた。
戸「何、黒マスクとかしてんだよ…おまえ悪党かよ?」
ラ「うるせえよ…」
戸「おまえバカだなぁ、いや…カバだ。おまえ、カーバ!」
ラ「うるせえよ…」
戸「おめぇ、横浜出身とかダセーなぁ。私は東村山なんだよ!! 横浜は東京都比べたら五テンポ遅ぇからな」
ラ「うるせえよ…」
戸「目潰しさせろよ」
ラ「うるせえよ…」
東村山の下りには若干の狙いも感じるが、結構ピリピリした空気でもあったので、辺りにいた客は続々と帰っていき、途中で来た客も不穏な空気にすぐ、別のフロアを選択していた。
しかし、戸川&渡辺徹風の真横に座ってる客は、顔を机に伏せ、ずーっと寝ていた。睡眠最強。
さらに途中で入ってきた小日向文世っぽい老人と若い男性のコンビは、小日向が、
「今年の巨人はまだ…優勝の可能性があるッ!!」
とケンカップルにまったく構わず、CSへの展望をずっと熱弁していた。
巨人最強。
9月17日「さすらいのあんこ職人」
久々にテレビを見たら、さすらいのあんこ職人という人が特集されていた。何でも和菓子屋を見つけてはその店の味に難癖をつけ、調理場に入って本物の餡を作り、店主に指導をして、何件もの店を立て直してきたそうだ。
そんなオッサンがいきなり来たら、私は問答無用で断りたい。
コッチの内情も知らず、不遜な態度でイチャモンをつけてくる人がどんな伝説の職人であろうが、調理場にも通さないだろう。
「アナタ、何なんですか? 本来の購買目的以外でやって来て、自分勝手な理屈を押し付けてくるの本当に迷惑なんで帰ってもらっていいですか? 警察呼びますよ」。
恐らく私は和菓子屋の主人に向いてない。
9月18日「ドラえもんのび太と小宇宙戦争」
独裁者…処刑…地下組織…政権転覆などの刺激的な文言。
戦車に乗って闘うしずかちゃん。
パルチザンの中に紛れ、突然、歌い出す武田鉄矢もどき。
ドラえもんのび太と小宇宙戦争、最高!!
9月19日「怒りの獣神」
急に獣神サンダー・ライガーのテーマ曲が弾きたくなり、姉が小学校時代に買ってもらって以来、まったく使ってないミニピアノで練習している。
楽譜がないので一音ずつ、記憶と音感を頼りに音符を探っていくのだが、どうしても無い音に行き当たる。ドレミの中に存在しない作られた音なのか、低年齢層向けのピアノだからキーボードが足りないのか定かではない。
「廃墟の中から立ち上がれ、ライガー」のパートをもっと正確に表現したいのに。
「ドとレとミとファとソとラとシのおとがでない~♪」
みたいなクラリネットの曲があるが、そんなに出ない音があったらもう地獄行きだろう。とっても大事にしてたとか言い訳はもういいから、さっさと何かしら対処したほうがいい。
9月20日「旅の恥は吐き捨て」
相方のジョニーさんは民泊清掃のバイトをしている。
清掃中に嘔吐物を発見した場合、二千円だかのゲロ手当てがつくらしい。
「おっしゃーッ…今日は大漁じゃーい!!」とばかり、かき入れ時に大喜びする者もいれば、キレイ好きな人間は一日にゲロ現場(GG)が数件も入ると心が折れるのだとか。
清掃中、稀にチェックアウトした宿泊客が忘れ物を取りに戻ってくる場合があるそうで、その場合にジョニー清掃員は、「お客さん、布団に吐きましたよね? あとで請求が行きますよ」と必ずきちんと詰める。
それでも信じがたいことに大抵のお客は、覚えがないとすっとぼける。
すると…
「コレを見ても、まだそんなことが言えるのかーッ…!?」
と動かぬ証拠を突きつけるらしい。真実はひとつ。
ゲロ探偵コナンに検挙されないためにも、節度のある部屋の使用が求められるだろう。
9月21日「切実」
9月22日「戦力の保有」
人間社会に馴染めていない。このままでは帰りしな、トボトボと歩いていた街角で偶然、宇宙怪物ウホウホの第一発見者になってしまい、ひょんなことから友情を育んでしまいそうだ。
「ニンゲンキライ チキュウコワス デモオマエイイヤツ トモダチ イッショニ ニンゲンコロス」
こんな場合には、私は躊躇なくウホウホを裏切り、地球防衛軍に居場所と弱点をリークし、ウホウホ打倒に協力を惜しまぬであろう。
ウホウホ、すまない。私は社会からドロップアウトできない人間なのだ。
ウホウホを兵器として保持し、現在の支配階級を転覆させたとて、私が新たなビジョンを打ち出せるかといえば、微妙であろう。
<新政権の仮機軸>
1.学校の校庭を芝生に
2.銭湯の男湯女湯の壁を撤廃
3.地下鉄無料
悲しいがやはりウホウホは、核か何かで滅ぼしたほうが良さそうだ。
9月23日「ビーンの人」
ネットフリックスに加入した。私はミスター・ビーンをほぼ見たことがないのだが、ビーンの人がやってる『ヒトVSハチ』という作品がなかなかヒドかった。
ハウスシッティングという旅行中の主に代わり、家を守る仕事に就いたビーン。冒頭から飛んでるハチを振り払った拍子、高価な置き物を破壊。接着剤で直してる最中に飼い犬が逃走。暗証ロック付きの部屋に紛れ込んでしまうが、解錠するためのマニュアルがガスコンロの上で炎上。
ズボンの裾からハチの侵入を許してしまい、ポケットに手を入れて内側を弄ってる途中で来客。手を上下に激しくピストンさせ、ポケオナ疑惑をかけられてしまう、ミスター・ビーン。
こんなにアグレッシブな喜劇役者だったとは知らなかった。
9月24日「食べなログ4」
<世界飯店 評価4.2>
入口のドアマットの上で飼い猫がガン寝していた。
どかせるのを躊躇うくらい、風景に溶け込み、一番手前のテーブルでは、家の子と思しき少年が一生懸命、宿題に取り組んでいる。
コレは閉店の看板と同義だと受け取り、私は立ち去ったが、別の日に来たらまったく同じ状況で、「どうぞ」と案内されたので、別に入っても良かったらしい。
アド街で取り上げられたとき、隣のピンサロが思い切り映り込んでて、いろいろ清々しかった。
9月25日「知恵袋のグッドアンサーで子供を育てる母」
それは…やめとこう
9月26日「都市伝説・康芳夫」
芝居に出演させていただくことになった。
こんな暗闇芝居(文字通り電気がつかない芝居)にしか出たことがない人間にオファーをくださり、ありがたい話だ。康さんといえばモハメド・アリを日本に招聘し、ネッシー捕獲隊、珍獣オリバーくん等を仕掛けた、国際暗黒プロデューサー。
そして今回の劇を演出する佐藤賢治さんもなかなかのアタオカ…(良い解釈で)な人物だ。
「牛越さん、出ていただきたいんですけど、役が決まってなくて…今のところ、オリバーくんが空いてるんですけど…」
オリバーくんとは昭和の時代に騒がれた、人間と極めて近い染色体を持つとされるチンパンジーのオス。
オリバーは猿か人間か?の論争を巻き起こし、当時の康さんが「ならば人間の女性とSEXさせてみよう」。なんでだよッ…!?
要するに私は人間の女性と交尾をするチンパンジーの役にされそうなのだ。
「あっ…あともうひとつ、石原慎太郎の役が空いてます」
チンパンジーと石原慎太郎の二択を迫られた役者が地球上に何人いるだろう。もし両方を演じ分けられたら、ハリウッドでも大河の主演でも怖いものはなさそうだ。
9月27日「蒙古タンメン中本」
辛い物が苦手なので避けてきたのだが、入ってみたら一番緩い辛さ3でむせた。横に座った人を見たら、最強の辛さを注文し、小さい扇風機と上着を引っかけるマイハンガーまで持参。首に氷枕みたいのを巻き、額には冷えピタ。手提げカバンの中には経口補水液と替えのシャツっぽいのも見えた。
多分、プロのナカモティーだ。
9月28日「100円すっとこ」
月に一度の大川興業主催ライブ『100円すっとこ』の司会を務めた。
もう十五年くらい出ていて「若手お笑いライブ」と銘打たれているのだが、出演者の中に五十歳以上が三人いた。
ガラパゴスといえば聞こえは悪いが、過度な成長戦略を掲げ、捕まりまくってる五輪組織委員会の人たちやベンチャーと詐欺のスレスレみたいな集団等を見ると、ある種の閉鎖されたテリトリーに清涼感を感じてしまうのも事実である。舞台の後ろには首領様を描いた横断幕が張られ、本当に北朝鮮を連想させ、どうせなら国歌が欲しいと思った。
『紛争でしたら八田まで』という地政学漫画で、社会主義国家のリモートツアーを機密保持に配慮しつつ、提案するという展開があり、大川興業のような謎のアイランドは実に配信向きではないかと思ったが、そもそも会場に通信設備がなかった。
9月29日「ウシコシ検定」
ファミレスに何度もノートを忘れてしまい、注意が必要だ。
店の方に保護してもらった忘れ物を受け取り(二回くらい失くなってる)、中身を見たら内容のほとんどが、ラジオで相方のジョニーさんに出題する『ウシコシ検定』。要するに私、牛越にまつわるクイズだった。
牛越の好きな色は…? 牛越の家の最寄り駅は…?
牛越は犬派…猫派…? 牛越の中学のときのあだ名は?
牛越の母の出身地は…? 牛越の父の高校時代の部活は…?
答えは私の頭の中だけなので、トップシークレットが漏洩せずに済んだ。
9月30日「ドラえもん15巻」
のるか反るか!!