「妹ブーム」研究・その7(1997年ごろのエロゲ妹)
こちらの続きです。
1997年ごろの状況
1996年のエロゲの「兄妹」題材では、
など、まだダークなものが多かったです。
しかし、依然として人気の高い『同級生2』や家庭用ギャルゲーブームの影響から、エロゲ界全体が「最近の流行はダーク系ゲームから恋愛系ゲームに移行しつつある」(『イーログイン』1997年3月号)という流れになっていました。
そんなわけで、1997年ごろからは兄妹の関係も、『ときメモ』や『トゥルラブ』のような世界観の恋愛が中心になります。
『STARS』(97年3月)
『同級生』と似たシステム(マップから移動先を選んで女の子と会っていくタイプ)の恋愛ゲームで、攻略対象が16人もいるのが特徴。
そのうちの1人が実妹のひとみで、風邪で寝込んだ主人公に、口移しで水を飲ませてくれたりします。
妹の攻略には、食べたいものを聞かれたときに「ひとみが食べたい」と答えるのが正解で……。
この選択肢を選ぶと、数日後に、妹が自分を食べさせにやって来ます。
そうして、兄の寝るベッドに全裸で夜這ってきた実妹と本番H。
しかし、目覚めると妹の姿はなく、「痕跡もない?」「……夢? 夢だよな…? だけど…」「夢だっ! あれはきっと夢なんだっ!!」
と、夢オチの体裁になります。
夢オチのあと、妹を「攻略」してもクリスマスを過ごすだけのラストで、恋人関係には発展しませんでした。
(このゲーム自体がそういうノリで、妹以外にも、エンディングを迎えても恋人にならないキャラは複数いました)
『メロディ』(97年3月)
『メロディ』は、システムやシナリオに凝っている恋愛ゲーム。
攻略対象の中に、小5から同居している異母妹の檸檬がいます。
しかし、この妹は序盤から「実は他人」という可能性が示唆されています。
彼女が血縁なのか非血縁なのかは、ゲーム進行によって変化するという仕様でした。
このゲームの主人公(と制作スタッフ)には、
という前提があるようです。
なので、条件をクリアして、「血縁関係はなかった」と判明して恋人どうしになるのが成功ルートというゲームでした。
どちらのルートでも、妹本人は自分の素性を知っているという設定。
物語終盤では、事実を教えるから、その前に抱いてほしいとお願いされます。
という言葉を信じて、妹に挿入すると……。
知力48以上なら、非血縁が判明して結婚・妊娠エンド。
知力47以下なら、最高の笑顔でやっぱり実妹だと告げられて、近親相姦してしまったバッドエンドとなります。
ともあれ、妹が血縁かどうかの分岐があるゲームとしては、これが最初期のものだと思います。
『グラフィティ』(97年7月)
マップから移動先を選ぶタイプの恋愛ゲームで、11人いる攻略対象のうち、1人が妹。
実妹だと思っていたら、物語終盤、輸血をきっかけに非血縁が判明。
それまで「血縁だから」と抑えていた気持ちを止められなくなって、できちゃった婚エンドという感じでした。
「○○と思っていたら実は××」シリーズ
と、『STARS』『メロディ』『グラフティ』あたりを代表例に、1997年以降、「妹を攻略できる恋愛ゲーム」が激増しました。
それに伴って、いわゆる「義理オチ」のゲームも大量に発生します。
『脳力者』(1997年5月)では、妹とセックスした後で、「やっぱり知らなかったのね」と、妹が戸籍謄本を取り出して非血縁が判明。
『週刊フロムH』(1997年5月)でも、妹とのエッチ中に突然、「血が繋がってないもん」と明かされます。
『さんしょくコロッケ』(1997年12月)は、主人公だけが非血縁だと知っているという逆パターンでした。
あと、特殊な例を挙げてみると……。
『RK』(1997年11月)
『RK(リバーシブルカルテ)』の主人公は、精神科医。
担当する患者のなかに、主人公を兄と誤認して、「お兄ちゃん」と慕ってくる対人認知障害の少女がいます。
この子のルートに入ると、終盤で、実は本当に実妹だったと判明します。
『久遠』(1998年1月)
『久遠』には、主人公を「お兄ちゃん」と慕ってくる年下の女の子が登場。
それを攻略すると、終盤で突然「私ね、お兄ちゃんの妹なの…… 血は繋がってないけれど……」と告げられます。
つまり、「妹みたいな存在」だと思っていたら、実は本物の義妹だったというパターンでした。
どういう趣旨のサプライズなのかよく分からないのですが、「妹みたいな存在」から「義妹」にランクアップしたらしいです。
当時のエロゲの広告
と、色々なネタが出てくるくらい、1997年ごろのエロゲには、兄妹のエッチが増えました。
当時の広告を見ても、「兄」を強調するものが多くなっています。
「初めまして、親愛なるお従兄さま(オニイサマ)」
「兄が私をおもちゃにするの」
「みんな お兄ちゃんの事が大好きなんだよ…」
こういった広告は、鳴沢唯の流れから「お兄ちゃん」の需要が高くなったということで、90年代後半に増えたものと思われます。
『お兄ちゃんへ』(97年7月)
『お兄ちゃんへ』の登場
そんな雰囲気の中、1997年7月に『お兄ちゃんへ』が発売されました。
これまでは、メインヒロインが妹のゲームでも、タイトルは『淫従の堕天使』とかでした。
タイトルからひと目で「兄妹もの」と認知されたエロゲは、『お兄ちゃんへ』が最初だと言えると思います。
この『お兄ちゃんへ』が、発売時の月間売上ランキングで3位。
年間売上でも11位に入りました。
(『PC Angel』1997年10月号、『イーログイン』1999年2月号など)
元々は、1・2作目がイマイチだった新規ブランドの3作目。
ジャンル的にもそろそろ下火の「館もの」で、内容的にも特に優れていたわけではない作品……。
それがまあまあ売れたのは、「妹」の需要が高まっている時期に、タイトルが良かったのだと思われます。
『お兄ちゃんへ』の詳細
『お兄ちゃんへ』には、義妹が3人も登場します。
と、兄妹3組で両思い・片思いのパターンをコンプしていました。
「マルチシナリオ」で展開が変化するのですが、基本的に、義妹3人は全員各自の義兄を相手に処女喪失します。
※たとえば、「主人公の父親の義妹」はお兄ちゃんが大好きな36歳で、既婚の兄に迫ってセックスしたという猛者でした。
『お兄ちゃんへ』の妹
そして、「主人公の義妹」は、ゲーム冒頭で3年ぶりに兄と再会。
と、ロリボイスで「お兄ちゃん」を連呼しながら抱きついてきて、プレイヤーをKOします。
ただ、「館もの」なので、この子も少しおかしいところがありました。
と、実はこのゲーム、ジャンルとしては「サスペンス」なのでした。
タイトルが『お兄ちゃんへ』で義妹が何人も出てくるのに、「妹ゲー」という主旨ではないのです。
これが「妹」の歴史を語る上で特筆する価値のある作品なのかは、すっごい微妙なところになります。
『お兄ちゃんへ』の良いところ
前述した『アラベスク』というエロゲ(1994年)では、次の会話がありました。
このような「妹」か「恋人」かの二者択一というのは、わりと一般的な発想ではあるようです。
それで、『お兄ちゃんへ』のトゥルールートのラストシーンでも、兄が妹にこう聞くのですが……。
それに対する、妹の答えは……。
この言葉を聞いた主人公は、「俺…、たぶん真実を見つけたよ…」と感動して、妹に愛を告げるのでした。
そう、『お兄ちゃんへ』をタイトル買いするような「妹属性」のユーザーの多くは、妹をやめて恋人になってほしいのではなく、妹と恋愛をしたいのでした。
にも関わらず、エロゲで妹を攻略したら、
といったケースが、非常に多いです。
そんな中、『お兄ちゃんへ』というゲームは、「妹のままお嫁さんになりたい」と言い切った点で、特筆に値すると思っております。
(このエンディングだけで、私の中の『お兄ちゃんへ』の評価は意外と高くなっております)
『ナチュラル』の千歳
そんなこんなで……。
1997年には、完全に「妹に特化したエロゲ」はまだないのですが、ある程度「お兄ちゃん属性」を狙ったゲームは珍しくなかったです。
それをジャケ買い・メーカー買いでプレイしたユーザーが、新しく「お兄ちゃん」属性に目覚める、という循環も起こります。
特に、1998年2月に人気メーカーから発売された『ナチュラル』は、多くの人間を「お兄ちゃん属性」に転ばせた作品となりました。
これについては、いちおう以前のnoteに書いたので……。
今回は詳しく触れませんが、個人的には『ナチュラル』のポイントはボイスだと思っております。
というのも、『同級生2』の時代のエロゲは、まだボイスがないのが普通でした。
しかし、Windows95の発売後、CD-ROMで提供されるエロゲが徐々に増えていき、ボイスが付くのも普通になっていった……という時代背景があります。
その過渡期に発売されたのが『ナチュラル』でした。
だいぶボイスが当たり前になってきたけど、まだ音声なしの新作も出ていて……。なんというか、まだ現在ほど「エロゲボイス」が成熟していませんでした。
で、当時の感覚としては、『ナチュラル』のヒロイン・千歳を演じる声優さんは、独特の艶っぽさに抜きん出たものがありました。
そして、その声で「お兄ちゃん、大好きです」と告ってくるのが、異常に破壊力の高いエロ萌えボイスとなりました。
てことで、『ナチュラル』の千歳は、「お兄ちゃん」ボイスの威力で妹好きを増やしたと思っております。
以下に続きます。(※上記の「乃絵美」については次項で触れます)
ここから先は
ちゆ12歳のオタク日記
芸歴20年、ネットアイドルちゆ12歳のエッセイです。サイトやツイッターに書けないこと、読んだ漫画のレビュー、アニメの感想、最近思ったこと、…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?