伝えたいことを伝えるために 〜 エネルギーバトルのお話
もし、みんなが自分にも人にも正直になって自分も人も尊重できたら、何の争いもなく生きられるのでしょう。
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でも、自分と違う考えを強要してくる相手が現実の生活の中にいたとしたら、きれいごとは通用しません。それだけで毎日どんなに消耗することか。何も状況が変わらないまま大切な時間や心を消耗していると、先が見えなくてどんどん不安やネガティヴな考えが膨らみ、現実を変えようと行動する余力も残らなくなってしまいます。今そんな疲れきった子ども達、大人達がどんなにたくさんいるんだろうと思っています。
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以前、恐怖でコントロールしようとしてくる相手やマイルールを押し付けてくる著しくコミュニケーションが難しい相手と生活をして、もがきあがいていた時期がありました。こちらの気持ちを無視し、閉め出し続ける人がいる家の中にいるのは本当に息が詰まるものです。以前の結婚相手はいつも部屋に閉じこもっているか何かしている最中で、時には数週間も話し合う隙をくれず、私はいつも自分とばかり対話して、行き場のない破裂しそうな気持ちを飲み込み続けていました。いくら短いメールで伝えようとしても、感情が苦手な外国人の彼には日本語が情緒的に感じるのか読んでくれず、タイミングや場所、体の向き、あらゆることに気をつけて少しずつ心の扉をノックしてようやく積み上げてきたものが第三者の何気ない一言で崩れ落ちたり、私が爆発してしまったり、コミュニケーションは失敗の連続でした。その数年間の経験を通して学んだのは、伝えたいことは伝わらないと意味がない、ということでした。
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その当時バイブルのようにしていた本の中に書かれていた「エネルギーバトル」のお話は、八方塞がりだった私を救ってくれた一筋の光でした。それからは自分が誰かのエネルギーを奪ってはいないか、自分はエネルギーを奪われていないかを意識するようになり、スパイラルに陥る前にエネルギーバトルを回避しようと心がけられるようになりました。
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今、世界が偏った方向に向かっているように見えるのは、片側の情報が届いていないからだけではなく、違う考えを伝える側の心理にも原因があって、すんなりと受け入れられない感情的な理由があるのかもしれないという気がしています。今までの自分の行動を否定するような正反対の考えを受け入れるのは大変なエネルギーが必要で、心に十分なエネルギーのゆとりがなければ、自己批判に耐えられず無意識に自分を正当化するか、相手を攻撃して本能的に防衛するか、大多数と一体化して安心を得ようとするのは生存本能のようにも思えるからです。そして、この騒ぎを終わらせることが共通の願いのはずなのに、お互いに熱くなると自分の正当性を相手に認めさせようとエネルギーを奪い合い首をしめ合っていると気づくことがあります。ですから、誰にとってもこの哲学的な心の理論を知ることは大切なことだと思っています。
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その本の中には、
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「人は身体的エネルギーと感情的エネルギーを必要としていて、栄養をとり毎日運動することで身体エネルギーは得られるが、感情的エネルギーは自分で満たすことは簡単ではなく、エネルギータンクが空っぽになると、知らず知らず相手からエネルギーを盗んでしまう」
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さらに、
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「相手のエネルギーを奪ってしまえば、相手は仕返しとして私たちをエネルギーバトルに引き込む。このバトルが世界中で起こっているほとんどすべての言い争いの本質」
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ということが書かれています。それは確かに身に覚えがあって、今現実に起きていることのように思われます。大抵は失ったエネルギーを取り戻すどころか、もっと失ってしまうというスパイラルに陥ってしまいます。
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そして、他の人からエネルギーを盗む方法としては、次の4つの方法があると本の中に書かれています。
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①怒り : 言葉や暴力で相手を痛めつける。
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そもそもの原因が相手にあっても、それに反応して怒りをぶつけたら逆ギレされるのはよく経験することです。また、ストレスを抱えた子どもがかんしゃくを起こして、自分のエネルギータンクを満タンにすることはよくあります。いじめも同じ目的のために、ほかの人を苦しめるものです。
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②よそよそしさ:不可解でよそよそしい態度をとると、相手がどういうつもりなのか訳が分からずあれこれ考えて消耗する。
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多様性を受け入れるとは、違いをありのまま認め合ってお互い歩み寄ることで、そのために必要なのは、自分のことを伝えるだけではなく相手のことも知ろうとすることなのだと思います。相手がどんなことを不安に感じ、何を望み何に傷つくのかに寄り添ってコミュニケーションができたなら、両方とも生きるためにもっとエネルギーを使えます。
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③質問:「なんであなたは〜するの?」「〜しないの?」とあら探しする。
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他人の生活を詮索し、その行動を批判することもエネルギーを盗む効果的な方法だと書かれています。相手を見下して優越感を得ることが質問の動機であれば、質問される方はエネルギーを吸い取られ、質問する方はエネルギーを補給します。
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④自己憐憫:自分たちの不幸を人のせいにし、暗に責める。
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自己憐憫は4つの中でもっとも受け身の方法ですが、やはりそれも相手からエネルギーを取ろうとする行動だと書かれています。見返りを求めて相手を動かそうとしても人が変わるかどうかはわからないし、誰にも人を変える力はありません。ありのままの現実を受け止め、相手がどうあれ自分がどうしたいのか自問自答し、自分が動くしかありません。
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このようにエネルギーを奪うと奪い返され、エネルギーバトルが始まります。でも、どんな感情であれ、感情そのものには罪はありません。喜怒哀楽はセットだから、ネガティヴな感情だけ抑えようとすると、感情の起伏が全体的に下がり、好奇心や意欲も薄れた情動剥奪という無気力な状態になってしまうそうです。ネガティヴな感情に支配されず、「あなた」ではなく「私」を主語にして真摯に相手に伝えることを積み重ねていく、そうすれば相手から奪うエネルギーを最小限にできるのではないかと思います。
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右脳と左脳のつながり方の差で女性は考えながら感じるのと違って男性は考える時と感じる時が独立している傾向が強いそうですから、男性には事実や理屈が、女性には感情に訴えかけるのがよいかもしれませんし、楽しいことが好きな人にはユーモアを交えた伝え方がよいかもしれません。
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エネルギーバトルを回避する方法としては、次の3つの方法があると本の中には書かれています。
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①エネルギーを補充できる活動を見つける
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人によって違いますが、散歩や興味のあることに熱中したり、元気のでる友達と過ごすなど、いい気分になれることならなんでもです。私の場合、鉢の中の草や枯れた葉をとったり植物をお世話していると気が付けば無心になっていて、エネルギーをチャージできます。自分もこの草木や石ころと同じ無機物と有機物の塊、永遠の流転の中のかりそめの命、何があろうと誰に否定されようとありのままに生きることを自然に許されているんだという風になんだか感じられます。
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②エネルギーを保持する
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エネルギー泥棒がだれか認識し、できるだけその人たちから距離を置くことです。距離を置くのが難しい場合にはそれを止めさせ、仕返ししたい気持ちを抑えなくてはなりません。冷静にその場面から抜け、エネルギーの湧く活動に移るのがベストだと書かれています。
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③相手のエネルギーをとらない
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相手が自分に何をしているかだけでなく、自分が相手に何をしているかをしっかり見ることがとても大事だと書かれています。相手が十分なエネルギーをもっていてこそ、伝えたいことを伝えることができます。個々のエネルギーを保持できれば、エネルギーバトルという傷つけあうサイクルに入っていく必要はありません。
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どんなに相手からエネルギーを奪わないよう気をつけても、伝えたいことは伝わらないかもしれません。どんなに説得力のある事実でも相手が自分の意思で見ない聞かないと決意していたなら、もはや事実の中身は関係なく、相手の感情の問題だからです。それはその人にしかわからない(もしくはその人自身も気づいていない)何か背景があるのだとやわらかく受け止め、1人の人の中にも色んな側面があって状況も変わって行くととらえれば、少なくとも自分がエネルギーを枯渇させてしまうことは避けられます。
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そして、このエネルギーバトルのお話にも通じるような「危機の中のチャンスーあなたの家族を強くして不安を手放す9つの方法」というドイツのシンポジウム「子供とコロナ」発行の電子書籍をChihiro Sato-Schuhさんが翻訳してご紹介されています。それは心が洗われるようなやさしさに満ちた文章で、中でも子どもへの向き合い方に触れた5章と9章は愛とあたたかさにあふれ、折れそうになる心に勇気を取り戻させてくれます。
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子どもにとってお手本となること、それは自分にとっての幸せがどんなものかを生きてみせること。自分に嘘をつかず、自分を大事にして生きること。そうやって自分の気持ちに誠実に向き合えたら、誰かの言いなりになって依存することから抜け出せて、人の気持ちにも誠実に向き合えるようになれるのだと思います。
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