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もう一度見直そう!『学校におけるいじめ対応』


✅いじめの現代的特徴

①気遣いの多い萎縮的人間関係、安心できない友人関係(クラスカースト)
②些細な友人関係トラブル、傷つけ・傷つけられる出来事が日常的
→国立教育政策研究所の調査結果によれば、多くの生徒が入れ替わり被害及び加害経験を有している
③一見すると親しい仲の良い友達関係、グループ内で深刻ないじめが生じる
④いじめ行為にスマホ・LINEが関係することが増加している
⑤女子に関しては「仲間はずれ」、男子に関しては学年が上がるにつれて暴力性が増す傾向
⑥「人をいじめてはいけない」等の素朴な正義感、人権感覚等が育っていない
「いじめられて当然」「悪いことをしたからいじめていい」等の動機の短絡性、責任転嫁傾向、他罰傾向の強まり
⑦自死リスクの高さ
⑧自死事案等の重大なケースは、教職員の抱え込みの中で起こることが多い


✅小中学生への6年間のいじめの追跡調査

「仲間はずれ、無視、陰口」
された経験がある ・・・・・ 9 割
した経験がある ・・・・・ 9 割


→いじめは「どこにでもある」という事実認識
→いじめは「見ようとしなければ見えない」現象
→人々の関心が低くなれば,見えなくなり、対応もされなくなる
国立教育政策研究所生徒指導・進路指導センター いじめ追跡調査2013-2015


✅スマホ・LINEによるいじめの特徴


①きわめて安易に、攻撃、無視・阻害等のいじめの関係が生まれる
②自宅でもいじめから解放されず、まさに24時間いじめられる状況になる
③不特定多数の者からの誹謗中傷が行われることがあり、短期間で被害が深刻なものとなりやすい。
④傍観者といわれる立場はいなくなり、自然に全員が加害者になってしまう
⑤いじめ行為に対して、他の子どもが簡単に応じてしまうので、ブレーキがかかりにくく、エスカレートしやすい
⑥写真や動画の送受信によって、性的な写真等が広く出回ってしまうなど、取り返しのつかない状況が生まれやすい
⑦保護者や教師等の大人により一層見えにくく、いじめの実態を把握しにくく、子どもも被害を訴えにくい


✅学校に求められるいじめ対応の基本的視点


教育的視点と法的・危機管理(手続遵守)の視点
○「いじめ防止対策推進法」 平成25年法律第71号
○「いじめの防止等のための基本的な方針」 
平成25年文部科学大臣決定(最終改定 平成29年3月14日)
○「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」 平成29年3月文部科学省


✅学校による主体的・積極的な対応


〇心理・福祉等専門的知識を有する者の視点に基づくアセスメント・プランニング
○チーム対応(組織的対応)による実行
→特定の教職員で問題を抱え込まず、複数の目による見立て
⇒より実効的ないじめの問題に資すること


✅いじめの定義


いじめ防止対策推進法の定義 平成25年(2013年)
児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
●「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的にすることなく、いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要である
●「心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めることが必要である。
●いじめの認知は、特定の教職員のみによることなく「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」を活用して行う
●けんかやふざけ合いであっても、見えない所で被害が発生している場合もあるため、背景にある事情の調査を行い、児童生徒の感じる被害性に着目し、いじめに該当するか否かを判断する

法律上の定義は極めて広範囲
→いじめの定義に関する正確な理解が不可欠


✅学校いじめ防止基本方針の策定


◆各学校には「いじめ防止基本方針」の策定義務がある

◆基本方針策定の意義
①対応の徹底による教職員の抱え込み防止と組織としての一貫した対応
②いじめ発生時の学校の具体的対応をあらかじめ児童生徒及び保護者に示すことにより安心感につながり、また、加害行為の抑止にもつながる
③加害者の成長支援の観点を基本方針に位置づけることにより、加害者の支援につながる

◆基本方針に定めるべき内容
①いじめ防止の取組み
・いじめが起きにくい環境、いじめを許さない環境づくりのために包括的な取組みの方針を定め具体内容のプログラム化を図ることが必要
②早期発見といじめ事案への対処方法
・早期発見・事案対処のマニュアルを作成する等、具体的取組みが必要
③教育相談体制
④生徒指導体制・PDCAを設定し、評価結果を踏まえた、取組みの改善が必要サイクルを各学期に盛り込み、いじめ防止の取組みにかかる達成目標
⑤校内研修体制

◆基本方針の周知・説明
①保護者や地域住民がその内容を確認できるような措置(ホームページ掲載)
②内容を必ず入学時、各年度の開始時に児童生徒、保護者等に説明する

学校におけるいじめ防止等の対策のための組織

◆各学校には「いじめ防止等の対策のための組織」の設置義務がある

◆いじめ対策組織の趣旨・目的
①特定の教職員で問題を抱え込まず、複数の目による状況の見立てを可能とする
②必要に応じて、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーなど、外部専門家等が参加しながら対応することにより、より実効的ないじめ問題に資することを期待

◆いじめ対策組織のメンバー
①当該学校の「複数の教職員」→ 学校の実情に応じ、柔軟な組織体制が有効
②必要に応じて外部専門家を参画させ、実効性のある人選が必要

◆いじめ対策組織の具体的役割 : 中核的役割
①未然防止・・・いじめが起きにくい、いじめを許さない環境づくり
②早期発見・事案対処
③学校のいじめ防止基本方針に基づく各種取組に関する役割
(ⅰ)基本方針に基づく取組みや年間計画の作成・実行・検証・修正
(ⅱ)基本方針の年間計画に基づき、校内研修の企画・実施
(ⅲ)基本方針が適切に機能しているかの点検・見直しの実施(PDCAサイクルの実行)
◆いじめ対策組織の存在及び活動の周知・説明

◆いじめ対策組織の具体的役割 : 中核的役割
②早期発見・事案対処について
(ⅰ)いじめの相談・通報を受け付ける窓口としての役割
(ⅱ)いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などにかかる情報の収集と記録、共有を行う役割
(ⅲ)いじめに係る情報があった際に、緊急会議を開催するなどしての情報の迅速な共有、関係児童生徒に対するアンケート調査、聴き取り調査等による事実関係の把握、「いじめ」であるか否かの判断を行う役割
(ⅳ)被害児童生徒に対する支援の体制・対応方針を決定する役割
(ⅴ)加害児童生徒に対する指導の体制・対応方針を決定する役割
(ⅵ)保護者との連携等の対応を組織的に実施する役割

【 注意 】
形式的な組織的対応をしてしまうと、実質的に特定の教職員ありきの対応となり、結果、その教職員が問題を抱え込むケースも見受けられる

◆情報共有による早期の組織的対応に向けて
①的確にいじめの疑いに関する情報を共有し、共有情報をもとに、組織的対応ができる体制とすることが重要。
②事実関係の把握、いじめであるか否かの判断は、組織的に行う必要がある 
③教職員は些細な兆候や懸念、児童生徒からの訴えを抱え込まずに、また、対応不要と個人で判断せずに、直ちに全てを組織に報告・相談する。
④組織に集められた情報は、個別の児童生徒ごと等に記録し、複数の教職員が個別に認知した情報の集約と共有化を図る。
⑤学校として、学校基本方針やマニュアル等において、いじめの情報共有の手順及び情報共有すべき内容(いつ、どこで、誰が、何を、どのように等)を明確に定めておく必要がある。
⑥これらのいじめに関する情報共有は、気づきを共有して早期対応につなげることが目的であることを教職員が理解し、情報共有を行いやすい環境の醸成に取組む必要がある。


✅学校におけるいじめ防止等の対策のための組織

◆未然防止
①児童生徒が自主的にいじめ問題について考え、議論する等の活動に取組む。
②児童生徒がコミュニケーション能力を育み、規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加・活躍できるような授業作りや集団作りを行う。
③児童生徒に対して、傍観者とならず、いじめ対策組織への報告をはじめと
するいじめを止めさせるための行動をとる重要性を理解させるように努める。

◆早期発見
①定期的なアンケート調査や教育相談の実施等により、いじめを訴えやすい体制の整備。
②学校基本方針において、アンケート調査や個人面談の実施、それらの結果の検証及び組織的な対処方法について定めておくことが必要。
③児童生徒が自らSOSを発信すること及びいじめ情報を教職員に報告することは多大な勇気を要するものであることを教職員は理解し、それらの相談に対して教職員は迅速に対応することの徹底が必要。

◆いじめに対する措置
①いじめ対策組織への速やかな報告と組織的対応
・教職員がいじめを発見または相談を受けた場合、速やかにいじめ対策組織へいじめに関する情報を報告し、組織的対応につなげればならない。
→ いじめに係る情報を抱え込み、学校いじめ対策組織に報告を行わないことはいじめ防止対策推進法第23条第1項の規定に違反し得る。
②いじめに係る情報の記録
・各教職員は、学校の定めた方針等に沿って、いじめに係る情報を適切に記録しておくことが必要。 → 学校としての対応記録も必要‼
③事実関係の調査・確認と対応方針の決定
・いじめ対策組織において情報共有を行った後は、事実関係の確認の上で、組織的に対応方針を決定し、被害児童生徒を徹底して守り通す。
④加害児童生徒への対応
・加害児童生徒に対しては、当該児童生徒の人格の成長を旨として、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導する。これらの対応について、教職員全員の共通理解、保護者の協力、関係機関・専門機関との連携の下で取組む。 → 懲罰感情が優先する傾向に注意‼

◆いじめの「解消」について
【解消の2要件】
① いじめに係る行為が止んでいること
被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは,少なくとも3か月を目安とする。ただし,いじめの被害の重大性からさら に長期の期間が必要であると判断される場合は,この目安にかかわらず,学校の設置 者又は学校の判断により,より長期の期間を設定するものとする。
② 被害者が心身の苦痛を感じていないこと
いじめが解消しているかどうかを判断する時点において,被害者がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。被害者本人及びその保護者に対し,心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認※する。学校は,いじめが解消に至っていない段階では,被害者を徹底的に守り通し,その安全・安心を確保する責任を有する。「解消している状態」に至った場合でも,いじめが再発する可能性が十分にあり得ることを踏まえ,学校の教職員は,当該いじめの被害児童生徒及び加害児童生徒 については,日常的に注意深く観察する必要がある。
⇒つまり、いじめを認知した時点での保護者への連絡が必要不可欠

✅学校における「いじめの防止」「早期発見」「いじめに対する措置」のポイント

◆いじめの防止等のための基本的な方針 
【学校における「いじめ防止」「早期発見」「いじめに対する措置」のポイント】
「いじめの防止」学校として特に配慮が必要な児童生徒についての対応を明記
発達障害を含む,障害のある児童生徒がかかわるいじめについては,教職員が個々の児童生徒の障害の特性への理解を深めるとともに,個別の教育支援計画や個別の指導計画を活用した情報共有を行いつつ,当該児童生徒のニーズや特性を踏まえた適切な指導及び必要な支援を行うことが必要である。
海外から帰国した児童生徒や外国人の児童生徒,国際結婚の保護者を持つなどの外国につながる児童生徒は,言語や文化の差から,学校での学びにおいて困難を抱える場合も多いことに留意し,それらの差からいじめが行われることがないよう,教職員,児童生徒,保護者等の外国人児童生徒等に対する理解を促進するとともに,学校全体で注意深く見守り,必要な支援を行う。
性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するいじめを防止するため,性同一性障害や性的指向・性自認について,教職員への正しい理解の促進や,学校として必要な対応について周知する。
東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒については,被災児童生徒が受けた心身への多大な影響や慣れない環境への不安感等を教職員が十分に理解し,当該児童生徒に対する心のケアを適切に行い,細心の注意を払いながら,当該児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組む。
上記の児童生徒を含め,学校として特に配慮が必要な児童生徒については,日常的に,当該児童生徒の特性を踏まえた適切な支援を行うとともに,保護者との連携,周囲の児童生徒に対する必要な指導を組織的に行う。

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