それは痕跡というのかわからないけれど。
家を出てからというもの、生活の中で頭の中で聞こえる声がある。
それは母の声である。
食事の後のテーブルを散らかしたままにしてれば、
“立ち上がる時に一緒に食器を片付ければいいのに”
夜までお風呂に入らずにダラダラしていれば、
“早くお風呂に入ってスッキリしておいで“
他にも、これはああやったのか、こうしたのか。
ちゃんとやらないと後が大変だ、とか。
何かを中途半端にしようものなら“それでいいのか?”と問いかけてくる。
妹に聞くと、自分も全く同じだといって笑っていた。
そして、どうもそれは母の作戦だったらしいことも。
きちんと生活ができるようにと伝え続けたということらしい。
そして母の目論見通り、私たち姉妹の中にしっかりと刻まれているようだ。
きっと死ぬまで聞こえるのだろうな、母の声。
お母さん、ありがと。
あなたの目論見は成功です。