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何もないことの素晴らしさ 【地方空き家サバイバル,後日談】

島根への移住は4週間で断念した。神奈川の実家に戻り,疲れ切った脳が元に戻って3日たった。実家の環境は申し分ない。冷蔵庫も,洗濯機も,車もある。トイレも水洗式だ。家の中には虫もいない。窓やドアの鍵も閉まる。便利,快適,安全。なんてつまらないんだろう。何もする必要がない。

何もないことの素晴らしさを痛感している。なければないで,なんとかする面白さがあった。何もないところに,プラスしていくことは簡単に感じた。どんなにしょぼいものでもプラスになるから。

いろいろあればあるほど,「やっていいこと」の範囲は狭くなっていく。なぜなら,すでにあるものを,わざわざ壊して,しょぼいものをつくるわけにはいかないから。「やれること」だけど,「やっていいこと」ではない。

自分の責任で行動し,痛い目に会いながら徐々に改善していく。何もない島根の空き家ではわりと簡単にできた。これを,いろいろある神奈川の実家でもする。それだけだと思っていた。しかし,「やっていいこと」の範囲がぐっと狭くなっていることに気づいた。この狭い範囲のなかで,何をやれるのか。このいろいろある快適な環境は,窮屈に感じる。

森が欲しいな。なにをしようが誰からも文句を言われない森が。その中で,自然としのぎを削りながら生活を構築していきたいな。そのための資金を貯めよう。いまは,そんなことを夢想している。

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