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傷つきやすい人に秘められた力

 おれ自身、かなり「気にしやすい」性格なので、あまり気持ちの強い人間ではありません。いわゆるこういった「センシティブ」「傷つきやすい」「感受性が高い」といった性格の人間は、現在の社会では生きにくさを感じることが多いのでは無いかと思います。仕事でも恋愛でもあまり強気になれず、穏やかで、競争を好まない。
 感覚の鈍い人からすると、感受性の高い人間の考えや行動を理解することは難しいと思います。
 全ての感覚が過敏になった状態で生活していると想像してください。尋常じゃないほど周囲に気をかけ、他者の気持ちが理解できてしまう。身の回りにあるものを全て吸収してしまう。

このような人は、「気にしすぎだよ」とよく言われます。
「もっと強くなれ」
これは周囲に言われる言葉の中で、おれが一番好きな言葉です。なぜなら、根底にあるメッセージは明らかで、「センシティブなのには欠陥がある」ということだからです。
 つまり、現代社会では、感受性が高いというのはイメージが悪いのです。
 しかし、感受性が高いからこそ、今の社会に必要で、感受性が高い人のことを、そうではない人はもっとよく理解すべきだと思います。

感受性が高い人

 感受性が高い人は、頭の中が超活発的です。頭をオフにすることは不可能に近い。
「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術」の著者で、高敏感性の研究者であるアーロン博士は、感受性の高い人々のことを、HSP(Highly Sensitive Person)と名づけました。人口の15-20%はHSPであると言われています。このHSPにはDOESという次の4つの特徴があります。

D Depth 処理の深さ
 感受性が高い人には、深く分析する脅威的な能力があります。

O Overstimulate 過剰な刺激
 感受性が高い人は、自分を取り囲む世界に圧倒されてしまう傾向があります。周囲の情報量の多さに、感覚がいっぱいいっぱいになってしまうのです。

E Empathy 共感
 他者の気持ちを理解する能力が非常に高いです。

S Subtleties 些細なことへの気づき
 感受性の高い人は、研ぎ澄まされたセンサーみたいなもの。周囲の些細なことにも気がつく能力が高く、HSPは感情的反応の域をはるかに超えています。

 HSPは内向型と勘違いされるが、その30%は外向型であり、HSPの50%は男性とされます。

 HSPは遺伝であり、基本的に生まれつき温和です。
 そのため、傷つきやすい人に対して「気にしすぎだよ」と言うのは、背が高い人に対して「背が高い」と言うようなものです。しかし、社会全体が「センシティブ」であることを欠点のように扱うようになりました。
 前世紀までは、慈善家や哲学者、詩人、芸術家はみんなその感受性を活かした社会貢献によって尊敬されてきました。もし、ダヴィチやモーツァルト、ガンディー、マザーテレサなどがいなかったらどうなっていたでしょう。社会はもっと暗いものになっていたに違いません。
 想像力や直感、創造の無い世界なんてつまらないでしょう。感受性というのは、なにかと熱くなりがちな世界の温度を調整する効果があるのです。

 センシティブな人にたくましさを求め、厳しい世間を渡り歩けるようにするのはやめるべきだと思います。

 教育レベルでは、まず指導者が感受性の高い子供たちを理解する必要があります。
 企業レベルでは、他人を肘で押し退ける人に有利に働くシステムがありますが、センシティブな人は、概して穏やかで協調性があり、競争を好まないので、出世に関しては遅れを取りやすいわけです。どんな性格の人でも活躍できる環境を作る必要があるでしょう。

 我々は身近にいる敏感な人たちが持つ繊細な個性に意見をするのをやめるべきです。意見をする代わりに、感受性の高い人々を理解をするようにしてください。

 一方で感受性の高い人々は、自分を攻めたり、強く適応しようと思わなくて良いと思います。傷つきやすい性格というもの、ありのままで素晴らしいもの。それを変だと思ってはいけません。おかしいことがあるとすれば、それはあなたではなく、腐敗、暴力、強欲が普通という世界の方です。

 最後にクリシュナムルティの言葉を記したいと思います。

 ひどく病んだ社会に適合したところで、それは健康とは言えない。



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