和食とは結局何なのか:「和食ランゲージ」発表に添えて
この度、和食文化をクリエイティブに理解・実践できるツール『和食ランゲージ』がコークッキングから発売されました!
冊子版とカード版がセットになった本作品では、季節や地域、時代によって移りゆく多様な和食の特徴を47の言葉とイラストで紹介しています。
本Noteでは、和食の奥ゆかしい世界観についてお伝えしていきます。
日頃食べている和食について、新しい視点で捉えたり、隠された魅力を発見したりするきっかけをお届けします!
「和食」って結局何だ?
「和食」ほど曖昧で自由な食文化は珍しいものです。
和食と聞いて、何をイメージするでしょう。寿司、蕎麦、天ぷら…様々な料理が思い浮かぶと思います。あるいはお箸や日本茶、おもてなしの心など、料理を取り巻く道具や心遣いが心当たるかもしれません。
では問題です。
Q. 「カリフォルニアロール」は和食でしょうか。
こたえは後ほど発表しますが、答えるのが難しい問題だと思います。
少し続けてみましょう。
Q. 以下の料理は「和食」でしょうか。
・醤油ラーメン
・カレーライス
・テリヤキバーガー
・和牛のステーキ
・豆腐ハンバーグ
・菜の花のピザ
・ほうじ茶プリン ...
難しいですね。これらの料理はどれも日本で独自の発展を遂げていたり、日本の影響を受けて海外で広く親しまれたりしています。和食とそれ以外の料理の境目は、一体どこにあるのでしょう。
またこうしてみると「和風」という言葉もまた、あやしい気がしてきます。
Q. 以下の料理の「和風」とはどういうことを指しているのでしょうか。
・和風パスタ
・和風サラダ
・和風パフェ
・和風ハンバーグ…
これらの料理を見たときに、私たちは何かしらの日本の要素を感知して「和風」と呼んでいるはずです。それは時にお味噌やお醤油といった発酵調味料による味付けだったり、しらすや菜の花、大根おろしといった日本にゆかりのある食材の使用だったり。しかしなおも、「和食」と「それ以外」の境界線は見えてきません。
和食とその多様性
「和食」の特徴って、結局何なのでしょうか。
それはおそらく「多様性」という言葉に尽きるでしょう。
季節の移ろいとともに変わる旬の食材、地域ごとに異なる食材や食習慣、時代の流れが生んだ新たな料理、海外の文化の取り入れと独自の発展性…。
和食は本来的に変わりゆく食文化であり、その概念は場所や時代によって多様な顔を見せます。だからこそ、とある料理が「和食であるか・そうでないか」の判断は、難しいだけでなく、あまり意味がありません。
和食ランゲージ:二分する世界観を超えて
『和食ランゲージ』は、そんな曖昧で膨大な和食の世界を理解するための「ガイドマップ」として機能します。
和食ランゲージは、多様で変わりゆく和食の特徴を捉えた、47個の「言葉」(「パターン」といいます)のコレクションです。47個のパターンの存在によって、和食の見方がぐんと豊かになります。
47個のパターンを切り口としながら、一つの料理を多面的に検討することが可能になります。単に「和食である/ではない」と二分するのではなく、日本の伝統を継承している要素は何か、伝統的な和食からは逸脱する要素は何か、要素ごとに検討することで、一歩深い理解を促します。
「カリフォルニアロールは和食か」問題への回答
最初の質問に戻ってみましょう。
Q. 「カリフォルニアロール」は和食でしょうか。
もちろん正解がある問題ではありませんが、和食ランゲージのパターンを使うことで、例えばこんな回答の仕方ができます。(スミツキカッコ【】に囲われているのが、それぞれ和食ランゲージのパターンの名前です。)
カルフォルニアロールは伝統的な和食の寿司からは逸脱しているな。具材の蟹は生じゃなくて加工品だから寿司の醍醐味である【生食の美味】はないし、年中手に入る食材ばかりだから【移りゆく旬】もあまり感じられない。
一方で、とびっ子のプチプチやきゅうりのコリコリとした食感が【音の味わい】を演出しているし、醤油につけて食べるから【巧みな発酵力】も働いている。それにお寿司自体、江戸時代から続く【早くてうまい飯】の文化であるから、こうした側面から見ると、和食らしいところも残っているな。
このように、とある食事を要素に分解することで、具体的にどういった部分が和食であるか、またどういった部分が伝統的な和食から逸脱しているかが鮮明に見えてきます。和食ランゲージは、こうした目を養うためのツールだと言えます。
次回以降、『和食ランゲージ』のパターンを使って、和食の世界観を詳しく紹介していきます。「Noteでは待ちきれない!」という方は、ぜひカード・冊子を手にとってみてくださいね!
商品情報
■ 和食ランゲージカードについて
和食の特徴を47枚のカードにまとめたクリエイティブツール。各カードでは、イラストと簡単な説明によって、和食の特徴を一つずつ紹介しています。献立のアイデア出しや、和食の理解を深めるワークショップに最適です。ワークショップの手順を紹介する「遊び方カード」もついているので、誰でも簡単に使えます。
■ 冊子『和食ランゲージー和食を織りなす47の言葉』について
『和食ランゲージ』を織りなす47個の各アイデアを、その歴史的背景とともにじっくり紹介した書籍です。読み物としても十分に楽しめる冊子版は、奥深い和食文化についてしっかりと知りたい・身につけたい方に最適です。カード版よりも、一歩踏み込んで和食の世界観に触れることができます。
■冊子・カードのご購入はこちらから
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