富士山カヌレ
カヌレブラザーズの大橋 直誉です。
2009年。
日本では手に入らないけどフランスでは手に入る日本酒があった。
日本酒なのに、それは日本では並んでも買えない。
そんなニュースをボルドーでソムリエをしてる時に見て、メモを取りました。
カヌレというフランス菓子の正式名はカヌレ・ド・ボルドー
ボルドーではワインの澱を取り除くため、鶏卵の卵白を使用していた。そのため大量の卵黄が余り、その利用法として考え出されたものという。現在、伝統的なカヌレを保存するための同業組合も作られ、ボルドーには、600以上の製造業者がいる@wikipedia
ボクは、カヌレが大好きです。
簡単に手に入るところでは、ナショナルローソンのカヌレがレベル高いです。
さて、ボルドーで働いていた二つ星レストラン「コルディアン・バージュ」では、レストラン・ホテルのお客様全員分のカヌレを焼いていました。
カヌレが好きだ。いつも発信し続けたボクには、毎朝お届けものが届くようになる。
お客様が手をつけずに余ったカヌレは、サービス人やパティシエの手によって、翌朝ワインセラーに行くとお皿に置いてあった。
写真にあるように、フランス時代は口いっぱいにカヌレを詰め込んだ。
お金もなくてボルドーまでのバス(10€くらい)にも乗れないのに毎朝一番にカヌレとエスプレッソという、リア充な生活を27歳の時していました。
カヌレを売ることは、面白半分でボクが「菓子製造業」の免許を取ったところから始まる。
ぼくは料理が一切できません(一応、1年間ひらまつ本店で料理人でしたが。)
もちろんカヌレなんて焼いたことがなかったけれど、ボルドーで働いてる時のメモに
「フランスでは手に入らないけど、日本で手に入るフランス菓子をつくろう。富士山カヌレ」
と書いてあった。
2016年11月。クリスマス・年末を前にレストランはなんとなく暇な時期を迎えていた。
TIRPSEにはスーパーパティシエのナカムラキリコがいた。
おーはし「酒粕とラム酒の代わりに焼酎入れて、カヌレ焼きたいんだよね。」
きりこ「あ〜、じゃあ、このレシピでいけると思うよ」
おーはし「まじ、作りかた教えて。」
きりこ「全部、自分でやりぃや。」
くらいしかやりとりしていない。
今思えば、お店の中にキリコがいたのが凄いことだ。ここで運がある。
酒粕は京都の松本酒造、焼酎は宮崎の黒木本店。仲良しだったのは、運がある。
「焦がしバターってどのくらい焦がすの?」
「沸かした牛乳ってすぐに混ぜたらダメなの?」
「酒粕の塊が溶けないんだけど、どうすればいいの?」
など、キリコさんに質問(キリコに聞くレベルの話ではない)しながら作っていった。
そして、初めて焼いたのが3日後。
試食で美味しくて焦った。
「自分で作ったものは美味しく感じる」やつが全開で発動したんだと思ったけど、チームにも美味しいと言ってもらえた。
お菓子作らなければいけないとか、新しい企画を出さないといけないとか追い込まれたわけではない。
よし。免許もあるし1週間限定で売ろう。って軽い気持ちで始まった。
翌週、朝5時に行って20個焼いてランチが始まる前の午前10時〜11時で手売りすることを告知した。
SNSを見て、買いに来てくれたひとたち。
なんかTIRPSEやってると買ってくれた白金台の人たち。
3日連続で、どうにかこうにか。やっとのことで売り切れた。
毎日ギリギリ。心が痛い。
お菓子を作って売るということでは、素人でおこがましいが
本当にパティシエの皆さんをリスペクトする気持ちをはっきりと感じた
「TIRPSE」や「キリコナカムラ」の名前が提供する信用に、完全に乗っかっただけの料理もデザートも作れない、大橋 直誉が焼いてるカヌレ。
面白がって応援してくれた人もたくさんいる。
たぶん、みんなの想像より1ミリだけ美味しかったんだと思う。
SNSは凄い。
ギリギリでの販売を続けての6日目。
予約の段階で150個を超える希望の連絡が来ていた。
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