ひとり情シスの退職と引き継ぎ(2/3)
本記事は全三回の内、第二回目(引継ぎ資料の作成)となります。
前回の記事はコチラからどうぞ。
では、第二回「引継ぎ資料の作成(スケジュールは作るもの。マニュアルは作ってもらうもの)」を始めていきます。
さて、スケジュールはMUSTとして、マニュアルは作らんの?と思うかもしれませんが、可能なものは作ります。ルーチンワークの作業とか。
スケジュールは
引き継ぎ日数 = [引き継ぐ作業数] × [作業時間]+[講習時間] ± [バッファ]
で立てていきますが、新メンバーの作業時間は分からんので、マニュアルを作成して、ゴールまでの時間をざっくりで予測します。
が、引き継ぎ資料を作り始めて数日。
一部作業のマニュアル化が無理ゲーな事に気づく。
城作りに例えます。
1人目の社内SEとして入社した3年前。
そこから、オフィス移転にサービスリプレース、
絶えずスクラップ&ビルドを繰り返し、増員・増床に耐え抜いた、我が城。
今日も難攻不落で豪華絢爛にそびえ立つ・・・
現実に帰って、冷静に第三者視点で見てみます。
・引き継ぎ先はアウトソーシング
何もかもが0からスタート。コミュニケーションも1から構築。
さっき声掛けて来た人、誰だっけ。このサービスについては、誰に聞けば良いんだ・・・。
・スタートアップ
風化する社内規定、優先されるオリジナルルール。
人の入れ替わり(担当者の変更)は、体感マッハ3。 ※当社比
・ひとり情シス
上長・同僚・部下 不在。頼れるモノは己の拳のみ。
襲い来る社内政治、繰り返すプランB。属人化は今日も順調です。
これはヤバい。イレギュラーが多すぎる。
トラップポイントや、困った時のセーフハウス。
目を瞑っていても、私は回避出来る(出来てない)。
が、
第三者から見れば忍者屋敷であり、ラビリンス。
The魔窟。
用意するはMAPとマスターキー
という事で、マニュアル化が無理そうなものは、
・出来る、出来ないの取捨選択
・プランBを発生させないための、仕組み化の徹底
・属人化している作業は、新メンバーに自分用のマニュアルを作ってもらう
形で進めていく事にします。
こちらは第三回の「いざOJT」にて書いていきます。
自分の言語で、自分が作ったマニュアルは忘れにくく、作業に対しての理解度が見える。
差違があれば、その都度こちらで訂正できるし。
とりま、私と相手、双方の認識を擦り合わせて、事故発生率を減らすのだ。
では、方向性は決まったので、ざくっとスケジュールを引いて
マニュアル作りに必要な資料を整えていきます。
用意するものは2つ。
1:全ての扉を開ける事が出来るマスターキー(Admin権限のあるID,PW)
2:MAP
マスターキーを作る
マスターキーとは、SaasやNW機器などのAdminID、PWを指します。
兎にも角にも、管理者としてログイン出来なければ作業になりません。
重箱の隅をつつく様に、一回だけ利用したサービスであっても残していきます。
今回引き継ぐ作業範囲は「インフラ/ファシリティ」、「各種SaaS」
インフラは固定なので問題なしですが、SaaSは情シスの一元管理ではなく、
「情シス」「情シス+他部署」「情シス外(部署管理)」と分かれるため、
1:全SaaS一覧リストを作成
2:引き継ぐサービスのリスト&アカウント表を作成
の順で進めていきます。
まずは全SaaS一覧リストの作成から。
ヒアリングとか無理ゲーなので、お金の流れ(ランニングコスト)と稟議から逆算して、サービスとID管理者(利用申請者)を割り出します。
会計データは間違いない。経理のSさん、ご協力ありがとうございました。
そこから情シスが持つデータと突合して、下図の様な形式でリスト化。
次にID管理者(稟議申請者)へ確認を取り、今後の管理と情シス対応範囲(上図のC列、D列)を相談して決めます。
最後に、上の様なフォーマットを作成、転記して担当範囲の管理者アカウント表を作成します。
MAPを作る
次にMAP。
これは作業における、ゴールまでの道筋が予測出来る資料を指します。
例えば探索型のロールプレイングゲーム。まずはMAPを開放しますよね。
ゼルダの伝説「ブレスオブザワイルド」とか、(分からない人にはすみません)多くの人はシーカータワーを起動してエリアMAPを開放してから、探索を始めると思います。
これを目指したい。
色々なルートがあるとしても、MAPを見ながらであれば、最終的にゴールにたどり着ける様に。
まず、OJTでAルートは教えます。
が、スキルやナレッジがある人は、APIとか私の知らない抜け道を使って、
Bルートを行くかもしれません。
はたまた、未開のCルートを開拓していく人もいるでしょう。(クオリティが下がらなければ良し)
いずれにせよ、自分に取って最善のルートを見つけ、必要なら自分のマニュアルとして作ってもらいます。
では、「インフラ、ファシリティ」「SaaSサービス」のMAP作成に取り掛かります。
インフラ、ファシリティのMAP
ざっくり
・全体図
・パラメータシート、最新のconfig
・基本設定手順書
の3つを用意します。
パラメータシート(※)は漏れが無い様に、緻密さ、正確さを重視して。
基本設定手順書はメーカーが作成した最新のものを。
※パラメータシートは自分が作るより、ナレッジやノウハウが詰まったベンダー謹製のフォーマットを利用した方が良いです。餅は餅屋。
最後に全体図。そもそも、これら資料は日常的には見ない資料です。
引き継いでも3日で頭から消えていることでしょう(自分比)。
が、必要になった時は大抵、障害が起きている時。
ピリピリする現場、襲い来るクレーム。平常心ではいられません。
ですので、パニック状態でも
・パッと見で全体図が分かる(=障害報告の説明にも利用できる)
・各レイヤー資料へ即座にアクセス可能
を重視した全体図を目指しました。なので一般的な物理図や論理図とはちょっとズレます。tiripiri式はこんな感じ。
この図の下に、それぞれのアルファベットに合致したパス(各セクションの関連資料が格納されたフォルダパス)が記載してあり、クリックすると飛んでいく感じ。
SaaSのMAP
続いてSaaSサービスのMAP作成をやっていきます。
SaaSは
・他SaaSとのデータ連携可能
・アップデートに伴い、UIの変更が発生する
・標準機能に加え、APIを利用した操作がある
という特徴があります。
また、全機能を使っている訳ではなく、ビュッフェの様に使いたい機能のみ利用している事が殆ど。
ですので、更新、変更作業を行う時に、
・抜け、漏れが無い
・設計の土台を理解してもらう
事を目的として、フロー図と運用ルールの2つを用意します。
マニュアルについては、UIがコロコロ変わるし、サービス提供側が用意している+いざとなれば、サポートサイトで聞ける ので作成しません。
フロー図
複数サービスを横断する、データ連携やフローに限定して作ります。
サービスの繋がりと、流れが分かるイメージ図であれば、ヨシ!
その上で、サービス毎の専用フォルダを作成し、各種資料(※)を格納していきます。(困ったらサービス毎のフォルダ内を探してね、の精神)
※「サービス説明資料」「契約資料(基本契約書、利用規約)」「API関連資料」等々・・・
運用ルール
どの機能を利用していて、どんな構成になっているか
が分かる様にします。
既存のルールを外れて齟齬が発生、統制が取れなくなる事態を防ぐ目的です。
例:弊社ではAttalacianの、”JIRA”と”Confluence”を利用しているので、運用ルールは以下の構成でConfluenceに載せてます。
・ライセンス、オプションの一覧
→ライセンスを貸与する社内・社外メンバーの条件や追加済みオプションの内訳
・コスト
→社外へのライセンス貸与時の見積作成用
・管理権限の一覧、付与ルール
→情シス以外のメンバーに貸与する、管理権限の一覧と付与ルール
・アクセス権限とセキュリティグループ一覧
→全社共通や役割毎に区切って作る。特に社外メンバーは隔離する形で。
・スペース、プロジェクトの管理ルール
→上記のアクセス権限を標準化させるための仕組み(スペース作成は情シスが行う、申請者には付与するセキュリティグループのみ指定してもらい、閲覧制限を徹底する、など。)
スケジュールを作る
という感じで、引き継ぎ資料としてマスターキーとMAP、それから定型化された作業のマニュアルを作りました。
最後に第一回で作成したマインドマップをベースに、引き継ぎチェックシートの作成+引き継ぎ計画を立てます。
今回、引き継ぎ先としてお願いしたユナイトアンドグロウ様は、対応していただける範囲が広いけれども、一応優先度を
高(必達)・中(出来ればやって欲しい)・小(情報共有レベル)
として付け、OJT時間を入力。
それぞれの作業タイミング(入社作業=月末、退社作業=退職者の最終出社日)を加味して、Googleカレンダーへ登録し準備完了としました。
このOJT時間が甘すぎて、ちょっと大変だったのですが・・・
それはまた次回で。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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