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浮体式太陽光発電の意外な落とし穴、小規模な池で温室効果ガス排出が増加 コーネル大学

近年、浮体式太陽光発電(フローティングソーラー)は、農地や自然保護区の土地利用を避けつつ効率的なエネルギー生産を可能にする手法として注目を集めています。しかし、コーネル大学の最新の研究により、小規模な池における浮体式太陽光発電の設置が、温室効果ガスの排出を増加させる可能性があることが明らかになりました。

この研究は、環境科学技術誌(Environmental Science and Technology)に2024年12月6日に掲載されたもので、浮体式太陽光発電の環境影響を実験的に検証した初のフィールドスタディです。研究チームは、コーネル大学の実験用池施設において、3つの池の水面の70%を太陽光パネルで覆い、その影響を調査しました。その結果、メタンと二酸化炭素の排出量が約26.8%増加し、池内の溶存酸素量が大幅に減少することが確認されました。

この現象は、太陽光パネルが水面を覆うことで、光の透過と風による水面の撹拌が制限され、酸素供給が減少するためと考えられます。酸素が不足すると、微生物の活動や有機物の分解プロセスが変化し、結果としてメタンなどの温室効果ガスの生成が促進されるのです。

特にアメリカでは、浮体式太陽光発電の多くが小規模な湖沼や池で展開されており、この研究結果は重要な示唆を与えています。ニューヨーク州でも、陸上の太陽光発電の代替として浮体式の導入が検討されており、今回の発見はその議論に一石を投じるものとなるでしょう。

しかし、浮体式太陽光発電には明るい側面もあります。サイトの開発からメンテナンス、廃棄までの総排出量を考慮すると、陸上の太陽光発電や化石燃料ベースのエネルギー生産と比較して、浮体式の方が温室効果ガスの排出量が少ない可能性があります。また、今回の研究で採用された70%の水面被覆率は極端な例であり、被覆率を下げたり、水中にエアレーターを設置して水を撹拌するなどの対策を講じることで、環境への影響を軽減できる可能性があります。

この研究を主導したスティーブン・グロドスキー助教授は、「すべてはトレードオフの問題です。しかし、何が起きているのかを理解し、適応することが重要です。設置場所の選定やパネルの設計を見直すことで、環境への影響を最小限に抑えることができるかもしれません」と述べています。

浮体式太陽光発電は、再生可能エネルギーの普及と土地利用の最適化に寄与する有望な技術ですが、その導入にあたっては環境への影響を十分に考慮する必要があります。特に小規模な水域での設置に際しては、適切な設計と管理が求められます。今後、さらなる研究と実証実験を通じて、環境への負荷を最小限に抑えつつ、持続可能なエネルギー生産を実現するための最適なアプローチが確立されることが期待されます。

日本でも、ため池を活用した浮体式太陽光発電の導入が進められています。例えば、兵庫県小野市の「亥ノ子池水上太陽光発電所」では、約4,600枚のパネルを浮かべ、発電出力1.24MWを実現しています。

このようなプロジェクトにおいても、環境影響の評価と適切な対策が重要となるでしょう。

さらに、ニュージーランドのローズデール廃水処理施設では、廃水池に浮体式太陽光パネルを設置し、再生可能エネルギーの生産と水質改善の両立を目指す試みが行われています。

このような事例からも、浮体式太陽光発電の導入に際しては、環境への多角的な影響を考慮したアプローチが求められることがわかります。

詳細内容は、コーネル大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7


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