発達中の人間の脳の遺伝子配列解析により、数十万の新たな遺伝子転写を発見、遺伝子診断と治療の可能性向上に期待 UCLAとペンシルベニア大学
カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLAとペンシルベニア大学の研究チームが、発達中の人間の脳で数十万の新しい遺伝子転写産物を発見しました。この画期的な研究により、脳の発達や神経発達障害に対する遺伝子診断と治療の可能性が大幅に向上することが期待されています。
【主な発見】
新しいアイソフォームの発見: 発達中の新皮質で214,516のユニークなアイソフォームを特定しました。そのうち70%以上はこれまで研究されていませんでした。
アイソフォームの役割: 遺伝子の異なるバージョンであるアイソフォームの調整が、脳の発達や精神障害の遺伝的リスクを理解するために重要であることを確認しました。
細胞型別の転写表現: 細胞の種類や成熟度に応じた転写表現の変化を解析し、脳の成熟過程をより深く理解する手がかりを得ました。
この研究では、第三世代の長鎖読み取りシーケンシング技術を用いて、発達中の新皮質の二つの主要領域、すなわち幹細胞を含む胚層と新たに生成されたニューロンを含む皮質板の完全なRNA分子を解析しました。これにより、従来の技術では捉えきれなかった詳細なアイソフォームのプロファイルを得ることができました。
この研究成果は、神経発達障害や精神障害の遺伝的リスクメカニズムの解明に寄与し、将来的には遺伝子治療やターゲット治療の新しいアプローチを開発する基盤となります。例えば、自閉症や神経発達障害のリスク遺伝子は、多くのアイソフォームを持ち、それらが神経発生過程で異なる表現を示すことが明らかになりました。これにより、特定のアイソフォームの調整がこれらの障害のメカニズムに関連する可能性が示唆されています。
このデータセットは、神経遺伝学的な診断の改善にも直接寄与しています。フィラデルフィア小児病院では、既にこのリソースを用いて、まれな神経発達障害や未診断の障害を持つ子供たちの診断に役立てています。研究チームの一員であるマイケル・ガンダル博士は、「この知識を活用することで、患者の治療に一歩近づけることができる」と述べています。
この研究は、シモンズ財団自閉症研究イニシアチブ、国立精神衛生研究所、国立科学財団、UCLA医科学者訓練プログラムの支援を受けて行われました。今後、この新しいデータセットを活用して、より具体的な遺伝的メカニズムの解明と治療法の開発が進むことが期待されます。
この研究は、人間の脳発達の分子基盤に対する理解を飛躍的に進めるものであり、神経発達障害の遺伝子診断と治療に新たな可能性をもたらすでしょう。
詳細内容は、UCLAが提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7