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宇宙で活躍する有機太陽電池、軽量・柔軟・放射線耐性の新技術 ミシガン大学

宇宙空間でのエネルギー供給は、これまでシリコンやガリウム砒素(GaAs)などの無機半導体に依存してきました。しかし、これらの材料は重量があり、製造コストも高いため、宇宙ミッションにおける効率的なエネルギー供給の課題となっていました。近年、軽量で柔軟性があり、製造コストも低い有機太陽電池(OSC)が注目を集めています。特に、宇宙空間での放射線耐性に関する研究が進展し、OSCの実用化に向けた期待が高まっています。

有機太陽電池は、炭素を主成分とする有機材料を用いた太陽電池であり、以下の特性を持っています。

軽量性:従来の無機材料に比べて質量が小さく、打ち上げコストの削減に寄与します。

柔軟性:曲げやすく、さまざまな形状の表面に適用可能で、宇宙船や衛星の設計自由度を高めます。

製造コストの低さ:有機材料は大量生産が容易で、コスト削減が期待できます。

これらの特性に加え、宇宙空間での放射線耐性が確認されれば、OSCは宇宙ミッションにおける新たなエネルギー供給源として有望視されます。

ミシガン大学の研究チームは、宇宙空間での主要な放射線源である陽子がOSCに与える影響を調査しました。特に、陽子照射後のOSCの性能劣化と、その分子レベルでの原因を解明することを目的としています。

研究の結果、小分子を用いたOSCは、3年間相当の放射線照射後も性能の低下が見られなかったのに対し、ポリマー(高分子)を用いたOSCは効率が半減することが明らかになりました。これは、陽子がポリマーの側鎖を切断し、電子トラップを形成するためであり、これが電流生成を妨げる原因となっています。

研究チームは、ポリマーOSCの放射線耐性を向上させるため、側鎖の設計を見直し、陽子による切断を防ぐ方法を検討しています。これにより、ポリマーOSCの宇宙空間での実用化が進むと期待されます。

さらに、OSCの柔軟性と軽量性を活かし、宇宙船の外壁や展開型ソーラーパネルへの応用が考えられます。これにより、エネルギー供給の効率化と宇宙ミッションのコスト削減が実現する可能性があります。

有機太陽電池は、その軽量性、柔軟性、低コスト製造の特性から、宇宙空間でのエネルギー供給において大きな可能性を秘めています。特に、放射線耐性に関する研究が進展することで、OSCの宇宙での実用化が現実味を帯びてきました。今後の技術開発と研究の進展により、OSCは宇宙ミッションのエネルギー供給の主力として活躍することが期待されます。

詳細内容は、ミシガン大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

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