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猫を撫でると静電気が起こる理由―摩擦のメカニズムとその科学的裏付け ノースウェスタン大学

猫を撫でているとき、パチッと静電気が走る経験をしたことがある人も多いでしょう。この日常的な現象には、どのような科学的な仕組みが隠されているのでしょうか?2024年、ノースウェスタン大学の研究者たちは、この疑問に対して新たな知見を発表しました。猫を撫でるときに発生する静電気の背後には、「摩擦」と「表面の微小な変形」という2つの要素が深く関わっていることが明らかになりました。

静電気は、物体同士が接触した後に離れる際、電子が片方の物体に移動し、一方がプラス、もう一方がマイナスに帯電する現象です。これにより、互いに異なる電荷を持つ物体が引き合い、時にはスパークが生じることもあります。例えば、冬場にセーターを脱ぐと静電気で髪が逆立つことがありますが、猫の毛を撫でた時にも同様のことが起こります。

ノースウェスタン大学の研究によると、この現象は単純に「摩擦」によるものだけではなく、摩擦が生じる物体の「表面構造」が非常に重要な役割を果たしていることが示されました。猫の毛のように柔らかく、複雑な表面を持つ物体同士が接触した場合、微小なスケールで物体が変形し、それによって局所的に電荷が蓄積されるのです。

研究チームは、この静電気の発生メカニズムを「弾性せん断」と呼ばれる現象で説明しました。弾性せん断とは、物体の接触面が互いに滑る際に、表面の一部が歪むことで電荷が移動することを指します。この歪みが前後で異なる速度で起こるため、物体の表面には異なる電荷が蓄積されます。つまり、猫を撫でる際には、猫の毛や人間の手の皮膚がわずかに歪むことで、電荷が移動しやすくなるのです。

この理論は、従来の静電気に関する説明とは異なり、より物理的なプロセスを明確に示しています。以前の研究では、摩擦によって単に電子が移動することで静電気が発生するとされていましたが、今回の研究では、接触面の変形とその結果生じる電荷の移動がより重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

静電気は、私たちの日常生活において時には迷惑な存在となります。ドアノブに触れた瞬間にパチッと感じる痛みや、乾燥した環境での髪の毛の広がりなど、静電気の影響は身近なものです。しかし、産業分野においては静電気がもっと深刻な問題を引き起こすこともあります。例えば、化学工場や製薬工場では、粉末の正確な投与や混合の際に静電気が重大な事故を引き起こす可能性があります。また、爆発性ガスや可燃性物質が静電気で引火するリスクもあります。

今回の研究成果は、このようなリスクを軽減するための新たな技術開発に繋がる可能性があります。物体の表面がどのように変形し、電荷が蓄積されるかを理解することで、静電気の発生をコントロールしたり、より安全な作業環境を実現するための技術が開発されるかもしれません。

詳細内容は、ノースウェスタン大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7


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