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細胞内ナノキャリアの可視化技術「SCP-Nano」の革新、精密医療への新たな道 ヘルムホルツ・ミュンヘン他
近年、ナノキャリアは薬剤や遺伝子治療の標的細胞への送達において重要な役割を果たしています。しかし、これらのナノキャリアが体内でどのように分布し、特定の細胞に到達しているのかを詳細に把握することは困難でした。
この課題に対し、ドイツのヘルムホルツ・ミュンヘン、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)、およびミュンヘン工科大学(TUM)の研究者たちは、新技術「SCP-Nano(Single-Cell Profiling of Nanocarriers)」を開発しました。
SCP-Nanoは、光学的組織透明化技術、ライトシート顕微鏡イメージング、そして人工知能(AI)を組み合わせることで、マウス全身におけるナノキャリアの単一細胞レベルでの分布を高精度に可視化します。
まず、マウスの全身を透明化し、ライトシート顕微鏡で三次元的に撮影します。次に、AIを用いて各細胞内のナノキャリアを検出し、その分布を解析します。
この技術により、研究者たちは極めて低用量(0.0005 mg/kg)のナノキャリアの全身分布を詳細に観察できるようになりました。
SCP-Nanoを用いた研究では、リポソームナノ粒子(LNP)、DNAオリガミ構造、アデノ随伴ウイルス(AAV)などのナノキャリアが解析されました。
例えば、DNAオリガミ構造は免疫細胞への優先的なターゲティングが可能であり、AAVは特定の脳領域や脂肪組織に効果的に送達できることが示されました。
さらに、mRNA治療薬を運ぶリポソームナノ粒子が心臓組織に蓄積することも明らかになり、臨床試験前にオフターゲット効果や潜在的な毒性を検出する重要性が示されました。
研究の第一著者であるJie Luo博士は、「SCP-Nanoにより、ナノキャリアが体内でどのように分布し、各臓器や細胞とどのように相互作用しているのかを新たな視点で捉えることができます」と述べています。
また、研究チームのリーダーであるAli Ertürk教授は、「各ナノキャリアは重要な荷物を運ぶパッケージのようなもので、正確な目的地に届けられる必要があります。SCP-Nanoは、これらのパッケージが正確に目的の場所に届いているか、あるいは誤って他の場所に配達されていないかを追跡することを可能にします」と説明しています。
SCP-Nanoは、ナノキャリアの安全性評価や新規ターゲティング技術の開発においても有用であり、mRNA治療の成功モニタリングや副作用の早期検出にも寄与します。
さらに、この技術はヒト組織や臓器への応用も可能であり、精密医療やターゲットデリバリーの分野での課題解決に貢献すると期待されています。
この革新的な技術により、副作用の最小化や治療の精度向上が期待され、がん治療、遺伝子治療、ワクチン開発などの分野での新たな展開が予想されます。
SCP-Nanoは、ナノキャリア技術の発展における主要な課題に取り組むとともに、精密医療の未来を切り拓く重要なステップとなるでしょう。
詳細内容は、ヘルムホルツ・ミュンヘンが提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7