大型類人猿のX染色体とY染色体の全貌を解明、進化と病気の新たな手がかり ペンシルベニア州立大学
ペンシルベニア州立大学の研究チームが率いる国際共同研究により、五つの大型類人猿と一つの小型類人猿の性染色体の完全な「エンド・ツー・エンド」参照ゲノムが初めて作成されました。この研究は性染色体の進化を解明し、人間と類人猿に関連する疾患の理解を深めるとともに、絶滅危惧種の保存遺伝学にも貢献します。
性染色体は生殖や認知、免疫に関わる重要な遺伝子を持ちます。特にY染色体は人間の生殖能力に重要であり、X染色体は生殖、認知、免疫に関わる遺伝子を含んでいます。今回の研究では、これらの染色体の完全な配列が明らかになり、今後の研究に向けた新たな道が開かれました。
研究チームは、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータン、シアマンの6種の類人猿の性染色体の完全な配列を生成しました。その結果、Y染色体が種間で大きく異なることが明らかになりました。Y染色体はX染色体に比べて非常に高い変異を示し、特定の種に固有の配列が多く含まれています。
従来の短読技術では困難だったY染色体の繰り返し領域を解明するために、長読技術と高度な計算解析が用いられました。これにより、以前は不完全だった領域を完全に解読することができました。
Y染色体は他の染色体と遺伝情報を交換しないため、削除や突然変異、繰り返し要素を多く蓄積します。その結果、X染色体に比べてサイズや配列の共有割合が大きく異なります。例えば、チンパンジーと人間のX染色体の98%が一致するのに対し、Y染色体は約3分の1しか一致しません。
Y染色体には、生存のための二つの戦略があります。一つは遺伝子の冗長性を利用する方法で、複数のコピーが存在することで突然変異に対する補償が可能です。もう一つはパリンドローム(回文)構造を利用する方法で、回文内の遺伝子が突然変異を修復する能力を持ちます。
本研究により、性染色体の進化に関する新たな知見が得られ、将来的な霊長類の進化研究や人間の病気研究に大いに役立つことが期待されます。今回生成された参照ゲノムは、今後の研究において重要な地図となり、遺伝的多様性の理解や自然選択の証拠を提供します。
ペンシルベニア州立大学の研究チームは、他の大学や研究機関と協力し、この重要な研究を進めています。この研究により、類人猿の保存と進化理解に向けた新たな一歩が踏み出されました。
詳細内容は、ペンシルベニア州立大学が提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7
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