今の日本の絶望はあと20年は続くと、最近のエンタメを見て思った話
経済の停滞、物価高や低賃金など、日本がいよいよヤバイという風潮が本格的になっている。
しかし、僕が本当にヤバいと思っているのが、日本人が”今ここにある現実”を生きていないということだ。それが昨今のエンタメに急速に現れている。
まずテレビの中でやたらと増えている企画がある。それが”昭和”である。
昭和何年の日本はこんな感じでした!みたいな映像が度々流れ、それに若い世代が”昭和ってこんな感じだったんだ〜!へ〜〜!”なリアクションをとる。某元天才子役と某人気お笑いコンビがやっている、ある特定ジャンルに詳しいガキンチョを呼ぶ番組でも、やたら”昭和レトロ家電”とか、文房具の話題であっても、なぜか”昭和レトロ文具”が出てくる始末。
TBSの日曜劇場も、80年の輝かしき日本の呪縛に囚われている。ここのメインコンテンツである池井戸潤原作のドラマには、やたらと、スポーツ、サラリーマンが出てくるが、これはまさしく、男性優位、モノづくり、努力、など、元気だったあの頃の八十年代日本の姿そのものだ。
NHKの朝ドラも、やたら戦争やらその後の復興の話が出てくるし、フジテレビは未だに、楽しくなければテレビじゃない!という、俺たちひょうきん族やいいともの影響から抜け出せない。
テレビが昭和の話をするのは、テレビが昭和の世代にコミットするコンテンツだからだろう!と言いたいのはわかる。しかし、若者に受けているコンテンツはどうか?
昨今のサブカルチャーに目立つのが、”転生モノ”だ。
転生モノとは、事故などの何らかの理由で現実世界とは別の異世界に精を受けるジャンルだが、これぞまさしく、現実を生きるのが辛いからそれを全て一回キャンセルしたいという願望だろう。
そして22年に一世を風靡した推しの子も、医者とその病人である少女が、憧れのアイドルの子供として転生し、美男美女の芸能人となるという、一種の転生モノだ。
心中モノの台頭も目立つ。藤井風の”死ぬのがいいわ”やYOASOBIの”夜に駆ける”の歌詞も、共通するテーマは、”貴方と一緒に生きる”ではなくて、”貴方と一緒に死にたい”である。
日本で、(アメリカのように)ヒップホップが流行らない根本問題も、ここにある。HIPHOPは、自明性のない荒野のような世界を生きるための音楽である。今ここをサバイブするという感覚が決定的に欠けている日本人には、少なくともHIPHOPは今の形では受け入れられない。
日本の若い世代を覆う現状は中々に悲惨であり、経済が停滞し、年金は帰ってくるかわからないし、賃金も低く、未来が暗い、にも関わらず、幸福度が高いという現象は、社会学者の古市氏が10年代にすでに言っていたことだ。
日本の若者の自尊心は低い。2018年のデータ(13歳から29歳まで)では、自分に価値があると思う割合は、なんとアメリカの5分の1以下という結果になっている。
また下のグラフでは、(ちょっとわかりにくいデータだが)20代の幸福度は赤色の10年がピークに達している。
これが意味することは何か、それは、自分の将来はよくわからないけど非常に暗い気がしてならが、それについては考えたくない。という心理である。
ここでの20代の幸福度の高さは決していいものではない。90年までは、”自分のステータスはこんなものではない”という意味で不満に思えた20代が、10年には、”これで納得するしかない”という意味で無理矢理幸福だと思おうとするしかなくなったことの裏返しでしかないからだ。
”失われた20年”という言葉がある。ここには、”今はだめだけどその内なんとかなるでしょ”的な意味合いが透けて見える。やがてこれは、”失われた30年”という言葉に変わった。
僕は、この絶望があと”最低20年”は続くと確信している。なぜなら、これからの時代を背負う若い世代が、”今ここを生き抜くこと”からひたすらに逃げているからである。
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