【ATEEZ 世界観①】 ZERO : FEVER Part.1 DIARY ver. ストーリー和訳
ATEEZの5thミニアルバム『ZERO : FEVER Part.1(DIARY ver.)』に収録されているストーリーを日本語訳しました。
海賊を象徴とし、楽曲、動画、ステージ様々な手法で描かれるATEEZの世界観ですが、このZERO : FEVER Part.1からストーリー収録のDIARY ver.がリリースされ、彼らの冒険をより詳しく知ることが出来るようになりました。
また物語の時系列も、デビューとともに展開してきたTREASUREシリーズの前日譚であり、次元を超えて冒険する壮大なATEEZ世界観のはじまりの物語となっています。
ZERO : FEVER Part.1 ◀いまここ
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あらすじと概要
すべての始まりとなる今作『ZERO : FEVER Part.1』のストーリーでは、私たちのいる世界とよく似た次元に暮らすATEEZ(通称フィバティズ)のメンバーたちそれぞれが抱える葛藤を始め、ホンジュンと黒いフェドラを被った男(通称ハラティズ)、および次元を司る砂時計〝クロマー〟との邂逅が描かれています。
プロモーションとして、今作のストーリーを描いたショートフィルム『ZERO : FEVER Part.1 'Diary Film' 』が公開されました。また、タイトル曲のひとつである『INCEPTION』も、『Diary Film』と通じたMVとなっています。
本編
A INTRO
過ぎていく時間、
僕たちの夢
忙しなく行き交う人々。その行列を抜け出して、
人通りの少ない脇道に沿い
迷路のようなセメント塀の路地をくぐり抜けると、
立ち入り禁止の警告板が貼られた工場の入り口が目に入った。
工場の入り口に無造作に生えた雑草をかき分けて
いくつもの足跡が草を踏んで作ったような道が出てくると
いつものように遠くから聞き慣れたビートが聞こえてくる。
捨てられたみたいな倉庫。さびた鉄扉にビートが響いて震えている。
扉を開ければ、もうここは僕たちだけの空間。
なじみのビートに合わせて仲間たちがダンスを踊っていた。
彼らが一人二人と目に入ると
口元に広がる笑み。
毎日見ても飽きない顔たち。
ここは僕たちだけの空間。
笑って、泣いて、喧嘩して、踊って、歌って
それぞれの夢をお互いに結びつけてくれた
大人たちの世界と僕たちを分離させてくれた、僕たちのアジト。僕たちだけの世界。
今ここは、妥協と服従の約束をする前。
まだ僕たちが開けていない、扉の向こうの瞬間だ。
01 HONG JOONG
僕が
世界にいたかもわからない、
そんな風に
忘れられるのは嫌だ
僕が世界にいたかもわからない、そんな風に忘れられるのは嫌だ。
確かに同じ世界に生きているのに、あのテレビの中で、華やかな照明の中で踊っている彼らと僕は違う存在みたいだ。僕もいつか彼らのように世界のどこからでも見られる星になったら、その姿を家族たちが見つけてくれるよね? 偶然にでも、一度でも見てくれたら、僕たち家族はまた集まることができるのに……。暖かかったリビングの風景を取り戻したい。
家族がみんな散り散りになって、ひとりぼっちで暮らしていた僕にできたもうひとつの家族。音楽をしながら出会ったアジトのメンバーたち。彼らを思うと胸が熱くなる。みんな一緒に夢を叶えられますように。僕の家族たち、僕の愛する音楽、僕たちの夢。必ず守り抜くから。
02 SEONG HWA
彼女は
全身で
ビートと
ぶつかっていた
彼女は全身でビートとぶつかっていた。瞬間、すべての風景が止まった。
彼女のイヤホンから漏れ出る音楽。聞こえるような聞こえないような、ちらつくそのメロディー以外は何の音も聞こえない。常識、規則、くたびれた世間のことなんて興味なさそうなあのしぐさ。彼女の踊り。そしてただ一度、かすめた視線で壊れた僕の世界。僕の中で何かが変わった。だけど僕は何も言えなかった。
彼女が去った場所には、〝Be Free〟と刻まれたブレスレットが落ちていた。
そのときから、いつもその時間に僕はそこにいた。
しかし、彼女は二度と戻ってこなかった。住んでいる場所も、名前も知らない彼女。彼女は〝Be Free〟というフレーズのように飛んで行ってしまって、僕はもう以前のように音楽を聴くことができなくなった。もう曲の構造、コード、ジャンルも聞こえない。あの日の感覚が残っているだけ。
03 YUN HO
天気
晴れ
今日は兄さん気分がよさそうだね? 天気もすごくいい。兄さんに会いたくて走ってきたんだけど、風が涼しくて全然暑くなかった。こんな日には兄さんと漢江に行って、バスキングでもしないといけないのに。昔を思い出したんだ。兄さん。今日、兄さんが事故に遭ったとき壊れたギターを久しぶりに出したよ。兄さんの傷ついた姿が目に浮かぶようで捨てたかったけど、兄さんがあんなに大事にしていたギターだし、兄さんの夢を捨ててしまうみたいに思えて、ただ見えないところに置いておいたんだ。
兄さん。俺、最近一緒にチームを組んでいる人がいるんだ。ホンジュン兄さんっていうんだよ。兄さんがこうなって、俺が苦しかったときに出会った人なんだ。音楽的にも人間的にもすごくいい人でさ。兄さんにそっくりなんだよ? たぶんホンジュン兄さんと兄さんが出会っても、お互いとても喜んだだろうね。ホンジュン兄さんやうちのチームのみんなのおかげで、俺、また笑えるようになったよ。だからもう、つらい記憶からも逃げないようにする。兄さんが果たせなかった夢、俺が受け継いで、チームのみんなで一緒に叶えてみせるよ。
そのときは、兄さんもこの長い眠りから覚めてくれよ。兄さんの夢を、俺たちの夢を、叶えた姿を見せてあげたいんだ。明日また来るよ。おやすみ、兄さん。
04 YEO SANG
真夏の夜の
夢のように
はじめから機械を上手く扱えたわけじゃなかった。はじまりはスピーカーを解体したときだった。息が詰まりそうなときは、家にある機械や楽器を分解してはまた組み立てた。両親が僕の未来を決め、僕はいつも同じ時間に同じ日常を送らなければならなかった。分解と組み立てをする時間だけが、この息苦しい日常を少しだけ忘れさせてくれた。
おかげで彼らに出会えた。古びた倉庫、僕とは違って見える子たち。
「ドローン触れるの?」という質問がなかったら、僕は逃げ出していただろう。
見慣れない光景だった。道に迷って、聞こえてきた音楽に導かれてそこまで行ったけれど。
そのときから、僕は毎日その場所に行った。
一番楽しかったのは、音楽に合わせて踊ることだった。ダンスだなんて想像もしていなかったことだ。心配そうな両親の顔が頭をよぎった。だけど、止めることはできなかった。はじめて生きていると感じた。心臓が張り裂けそうな胸の高鳴りと、指先の感覚が僕を満たした。僕が何かをこんなにも求めた瞬間があっただろうか。いつの間にか、僕の名前を呼ぶ子たちが一人二人と増えていった。
一人で歩いていた道を、一緒に歩いていた。僕がいつの間にか僕たちになっていた。
だけど、もう僕は〝僕たち〟から抜けないといけない。僕さえ抜ければ、全部元通りになるから。散らばったメンバーたちも、奪われたアジトも。ごめん、みんな。
05 SAN
もう
どうにでもなれ
いつも笑っていた。でも、いつも寂しかった。本音を打ち明けられないからだ。
いや、そんな時間がないせいだ。親しくなったかと思えば引っ越しをした。
今日も同じだ。でも、今回は少し違う。今は本音で話す友達ができた。はじめて見るなりわかったんだ。僕と同じ仲間だってこと。
あ、ソンファ兄さんはちょっと違った。あの人は何かとすぐ計画通りにしようとするし……。
感じるままにやるもんでしょ。
父さんがまた引っ越しをしなければならないとおっしゃった。聞き慣れた言葉だけど、今回は変な気分だ。このまま行ってもいいのかな? 今はもう、僕にも居場所ができたのに……。
ウヨンに何て言えばいいんだろう? ウヨンのおかげで、みんなのおかげで、僕もダンスを踊れるようになったのにな……。
ボボ、僕はどうしたらいい? 何? 感じるままにやれって?
06 MIN GI
あいつの
笑い声
俺にとって音楽は逃避先だった。脱出口だった。唯一の安息だった。死にたいときも音楽を聴いた。死ぬのは怖くない。貧乏ならまだしも。
周囲の人たちは、俺がまるで他の惑星から来た宇宙人であるかのように目をそらした。まだ尻の青い高校生が死がうんぬんと語ってと、世間の人たちは鼻で笑うかもしれない。そうだろうとも。俺の年頃で死にたいやつはそういないだろうし。
小、中、高を経て名前を覚えた友達は、指折り数えるほどしかいない。それも大部分が小学生のときだ。俺に話しかける人もあまりいないが、話しかけても俺が返事をしないせいだった。なのにウヨンは違った。俺と小、中、高全部同じだったというけれど、俺は覚えていなかった。ウヨンは俺が返事をしようがしまいが、休み時間の度に俺のそばに来て、休む暇もなく騒いだ。自分のクラスの友達の話、好きな歌、尊敬するアメリカのダンサーの話、
学校の外で一緒に音楽をするチームの話。そして最後にはいつもあの笑い声。変わったウヨンの笑い声に、俺もあきれて思わず噴き出した。
それからなんだか恥ずかしくなって、わざとウオンと呼んだ。気にも留めないようにまたあの変わった笑い。はじめて心を開いた友達だった。
いつからかウヨンとご飯を食べ、日常をともにするようになった。ウヨンについてアジトにはじめて行ったのもその頃だ。そのときからだった。夢を見るようになったのは。俺がどこに住んでいるのか、両親がいるのか関係なく、音楽で泣いて、笑って。ただありのままの俺を見てくれる仲間たち。生まれてはじめて幸せだと感じた。でも、だんだん怖くなる。俺が本当に夢を持ってもいいのだろうか? いつか奪われてしまうんじゃないだろうか……。
07 WOO YOUNG
今度は
違う
頭の中が真っ白になる。俺は誰でここはどこだ。逃げてしまいたい。
また失敗するのかな。一人で踊っているときには自信があった。SNSにアップした練習動画の再生数が10万を超え、あちこちから連絡が来た。大手事務所もオーディションの提案をしてきた。だけどいざ自分を見る視線を感じると、体が反応しなかった。逃げ出したくなって目を閉じたその瞬間、ソンファ兄さんの声が聞こえた。
「ウヨン、舞台でパフォーマンスをはじめる前にこの三つの言葉を思い出して!
『全部大丈夫!』、『自分を信じろ!』、『できる!』」
「緊張で死にそうなのに三つも思い出せって~。ソンファ兄さん、それまた何かの心理学の本で見たんでしょ?」
「ユノ、お前またソンファをからかって。でも、自分を信じるのが定石ではあるね!」
まとめてくれるホンジュン兄さん。ひそかに口角が上がった。
そばにいなくても一緒にいる感覚。足に力が入っていく。
舞台恐怖症を克服するため、休む暇もなく騒ぐ癖ができ、恥ずかしさを隠すために笑い声も練習した。他人に笑い声がどうしただのとからかわれても、俺を安心させてくれる俺だけの防衛機制だった。しかし、それも束の間。視線を意識すると体がこわばるのは相変わらずだった。
ホンジュン兄さん、ソンファ兄さん、ユノをはじめて見たのは、通りのバスキングだった。
ダンスのテクニックを超えた表現力と、観客を虜にするショーマンシップ。俺が持っていない何かを彼らに見た。彼らと一緒に踊るときは、視線を意識せずに最高のダンスを踊ることができた。
足に力が入る。最初のステップ。ただの一度も成功しなかったそのステップ。
俺の体を縛っていた鎖が、魔法のように解けていった。
08 JONG HO
僕には 計画が
あった
僕には計画があった。全国大会優勝、得点王、最年少国家代表バスケットボール選手……。僕の人生に他の計画はなかった。けがを負った初日、早くリハビリをしてまた復帰することばかり考えていた。それなのに、もうバスケができないだなんて。
「じゃあ僕は何をしたらいいんですか? 僕にバスケ以外できることなんてないんです!
僕にバスケをさせてください! 何でもします!」
医者にすがって懇願してみても、無駄なことだった。
水に溺れたようだった。手足をかき回してみても、前に進めずずっと元の場所に。水面に上がったり下がったりする体を引きずって、ただ耐える無意味な時間が流れていった。こうして生きていてもいいのか。
駄目なことはわかっていた。でもバスケを諦めたとき、僕の中のすべての細胞が、死んでしまったように生気を失ったのだ。
生気のない寂しげなその表情。ユノ兄さんの手をつかむ前の、あのときの僕みたいだった。手がずきずきと痛む。飛んでくる拳をはっきりと目でとらえていながらも、避けなかったミンギ兄さん。
兄さんの寂しいまなざしが胸につかえていた。
もうやめるという言葉。僕たちの夢が贅沢だという言葉。ともに過ごした時間がミンギ兄さんにとってはなんの意味もなかったという言葉に、我慢できずに拳を振り上げた。
僕にとっては心躍る時間だったし、ふたたび見つけた夢だったから。
道を見失った兄さんに、どうやって手を差し出せばよかったのか、
あのときの僕にはわからなかった。
僕たちはどこにいるのだろうか、どこへ行けばいいのだろうか。
Z OUTRO
Into the
New World
夢と家族をまた失うことになったのに。
相変わらず、僕にできることは何もなかった。
みんながばらばらになって、また一人になった。
雨の便りもなく蒸し暑い天気が続いていたある夏の日、僕たちは別れることにした。かつては一緒だったけれど、ある瞬間から、一緒に見る夢がお互いの足を引っ張る足枷になってしまったからだ。灼熱の太陽はこうして青春の夢まで溶かしてしまった。夢は消え、それぞれの爪先には、解決しなければならない問題が手つかずの洗濯物のように積まれていた。「頻繁じゃなくてもときどき会おう」という約束は先延ばしにされ、慌ただしい現実に僕たちはお互いを忘れた。
その頃だった。僕たちが夢の中でその男に会いはじめたのは。
黒いフェドラを被った男は、マスクで顔を覆って目だけを見せていた。
どことなく見覚えのある目つき。しかし、少し疲れて見えた。
「夢を失ったのは現実のせいじゃない。お前たちがそう決めたからだ」
「お前たちが見ている世界がすべてだという考えを捨てろ。世界には数多の次元と数多の現実が存在しているんだ。僕がいる世界も、お前がいる世界も全部現実なのだから」
「すべての話を聞かせてやりたいが、今の僕にはあまり時間がない」
「これ、何ですか?」
「クロマー。世界をつなぐ鍵」
彼の手には輝く砂時計が置かれていた。この小さな砂時計が世界をつなぐ鍵だって? おそるおそるクロマーを受け取った。すると男は数歩後ろに下がり、最後の言葉を吐いた。
「心に従え、地図はそこにある」
クロマーにとらわれていた視線をふたたび上げたとき、男はすでに消えていなくなっていた。
目が覚めた。夢だった。もう誰も訪ねてこないアジトで、一人眠りについたのだ。
寂しい気持ちを押し殺して歩き出そうとすると、
横になっていたソファの前の卓上、その上にきらりと光る何がか……。
夢で見たクロマーだった。
夢じゃなかったのか……。クロマーをまじまじと見ながら、なんの気なしに回してみると……。
砂時計の中の砂が、下から上へ逆流しはじめた。
鉄扉の開く音。一人二人と歩く音。メンバーたちが僕と同じ顔をして、僕の周りに集まっていた。
意訳部分+コメント
ARカード
アルバム同梱のARカードに、ストーリーでは詳しく描かれていないサンの話し相手〝ボボ〟についての話があるため、抜粋して掲載します。
関連動画
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今作のストーリーを描いたショートフィルム。
今作のタイトル曲のひとつ。『Diary Film』と通じるMV。
世界観をなぞらえたリアリティ番組。冒頭と終わりにドラマパートがあります。また、番組の終わりにはクロマーの持つ機能についての事実が明かされました。
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