20240403

生まれてはじめてのヘアカット
かねてよりわたしがお願いしている美容師さんにお任せした

誕生当時からそれなりに髪は生えていたけれど、伸びるのがゆっくりだった坊や
生まれたてのやわらかさ、茶色っぽい色やほのかなくせ毛もあいまって、とてもいい髪質
ずっとこのままでいてほしい気持ちもあるけれど、前髪は目に入ることもあれば襟足はずいぶんと長くなっている
汗っかきの季節を前に、思い切って切ることにしたのだった

駅を出て、おおきな公園を突っ切るように経由し、踏切を渡る
いつも行き慣れた道をいっしょに行くのは新鮮な心地だ

公園の桜は随所にあらわれ、ほぼ満開を迎えようとしている
しだれではなくとも、いくつかの老木は地面に届きそうなほど低いところまで進んでいるものもあった
ベビーカーの座席からも手を伸ばせば届きそうで、ちょっと手向けてやるとうれしそうに触っていた

はじめての場所は誰でも、多少なりとも緊張するもの
静謐な空間に入ると、いつもの怪獣っぷりはなりをひそめ、借りてきた猫のようにおとなしくなった

「はじめまして」
おだやかなようすで、笑顔とともにあいさつをしてくれた美容師さん
さぁ、ここからはじまるよ

子ども椅子に座ってもらおうとすると、泣きべそをかきそうなほどの表情を浮かべた子
敢えなく母の膝のうえに座ることにした
親子ともども首を出せるようなケープを用意してくれて、ふたりそろって白い布をまとう
鏡にうつる姿は、てるてる坊主がくっついたかのような風情だった

ちょっとずつ束にして、すきばさみでちょきちょき
切った髪を白いホーローのバットのうえに乗せていく
ほら、あれがきみの髪の毛だよ
なんだか感慨深く思えてきた

美容師さんのはさみさばきを間近でみるという、奇しくも稀な初体験をしたわたし
丁寧に、手際よく、しゃきしゃきと切っていく

襟足を切るときには、180°回転してもらい、鏡から親子対面へ
下を向いてもらいたいところ、天を仰ぐように上を向いてしまったり
それでも叫んだり暴れたりせず、しずかに、なすがままに委ねていた
ちょっと眠かったからかな
「おとなしいですね　もっと動き回ったり切れないこともあるんだけれど」
と言われるほどで、いつものわんぱくをよく知るものとしては（いい意味で）拍子抜けだった
彼なりにも、大切な儀式のような、ちょっとした厳かさを察したのかしらね

ものの30分ほどで完了
全体的にすっきりとして、より少年然としたたたずまいになった
短い髪も似合うね、よかったよかった！

途中、だいすきな緊急車両のサイレンがきこえて、ひかえめに声をあげたり
最後には美容師さんにも抱っこしてもらい、おててタッチとバイバイをしてお別れした

切ってもらった髪は髪に包んで、ショップカードとともに丁寧にちいさなビニール袋に包んで渡してくれた
いい記念になったな、大切にしよう
どうもありがとうございます

きょうは祖父の命日
数年ぶりに桜の咲いた、春雨降る日

そういえば、お腹にいることがわかるであろうはじめての健診は、祖母の命日に予約したんだった
坊やの節目を迎えるとき、おのずとほかの家族誰かの節目を選んでしまうところがある
見守っていてくれるだろうと、心強く思えるからなんだな