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小説『傲慢と善良』 見えない部分

人の価値って誰がどう決めるの?
就活時代に一番考えたことだった。

私の価値って?
市場価値を高める生き方をしてこなかった自分の数々の選択を憎んだり。

小説の印象に残った言葉は数々あったが、
そのうちの一つが真実の職場の友達、ジャネットの言葉である。

「あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、人生はあなたの好きなことだけでいいの。興味が持てないことは恥ではないから」

(朝日文庫、『傲慢と善良』、341頁)

あなたの人生の選択は、あなたの責任のもと、あなたの自由にしていい、というメッセージだと思う。
ほんとうにそう、当たり前。
当たり前なのに、真実のように私もこの言葉にハッとする。

私が選んだもの、とはなんだろうか。
洋服一つ買うにも、SNSを見たり、雑誌を見たり、レビューをみたり、時には友達に相談したりする。そこには世間の選択を気にする自分がいるからだ。

私の選択に、私の意思は何%だろうか。

結婚相手の選択。そもそも結婚という選択。

この情報飽和な社会に、情報を避けて自分の心だけに耳を澄ませるのは不可能だと思う。でも、その情報を選択しているのは自分だし、それらをどう受け止めるかも自分次第だ。
そうして、やっと選んだ意思には、見えない思考の経路がある。

武田砂鉄さんの『わかりやすさの罪』を読んだ時の、言葉にならない言葉の存在を思い出した。
真実が架に言えなかった言葉、語らなかった背景、思考に、真実がある。

そんな奥深く、複雑な存在をどう数値化するのだろうか。
どこを切り取って価値とするのか。

マチアプの軽度はマチマチだが、私はとことん相性が悪かった。
写真だけでいいね!紹介文でピンとこなきゃスルー、メッセージをやり取りする程に湧き出る倦怠感、私の傲慢を膨張させる魔のツール。
マチアプをすると、何かが吸い取られていく気がしていた。


それにしても、架の女友達と真美のシーン、めっちゃ残酷だったな。
電車で読みながら、思わずうぅぅって唸りそうだった。
朝井リョウさんのあとがきにもあったけど、
そこも書くの(´;ω;`)
ってとこまで踏み込んでて苦しかったな、、
でも、そこが魅力だしパワーになっているってと思うので、ほんとに好き好きですよね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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