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【MODE CHANGE 2024】基調講演「AI-driven IoT - 社会実装を加速する」

MODE, Inc. CEO/Co-founder の上田 学による基調講演「AI-driven IoT - 社会実装を加速する -」では、生成AIが実社会へ与えるインパクトについて解説が行われました。自身のシリコンバレーでの体験をもとにした生成AI活用の解説の他、西松建設株式会社 執行役員DX戦略室長 坪井 広美氏による生成AI活用の事例が紹介されました。

こちらの記事では、上田による基調講演の様子をお伝えします。


産業革命と生産性の関係

MODE, Inc. CEO/Co-founder 上田 学

上田:本日はお集まりいただきありがとうございます。
最初に「AI-driven IoT」をテーマにお話させていただきますが、1枚目のスライドは「AI」とは全然違うところからスタートします。

産業革命の進展に寄与したジェームズ・ワットと当時の蒸気機関

こちらの絵はの人物は、約250年前の人物ですが、誰だと思いますか?横に蒸気機関の絵もあります。
この人物は実用的な蒸気機関を発明したジェームズ・ワットです。

実用的な蒸気機関の発明によって起こったのが、産業革命です。なぜ産業革命の話をしようと思ったかと言いますと、産業革命によって起こった生産性の向上が、今日のお話に関係があるからです。

では、産業革命で生産性はどれぐらい上がったと思いますか?産業革命による生産性の向上は、約50年で2~3倍です
2~3倍ってそんなに大きくないように思うかもしれませんが、例えば今まで1人の人が働いて作っていたものが、2倍、3倍生産できるようになるのは、すごいことだと思いませんか?スーパーパワーですよね。

蒸気機関というスーパーパワーが発明されたことによって、まず製造業の生産性が上がります。工場がたくさんできて、蒸気機関を活用した蒸気機関車で、交通やロジスティクスの進化が起こりました。

その後、蒸気船の黒船が日本にやって来ました。4隻のうち2隻が蒸気船で、産業革命によって近代化した力が日本にやって来たわけです。「これは大変だ」ということで日本は開国し、文明開化が起こり、近代化が進みました。

生成AIの登場による「新産業革命」と事例

ChatGPTを中心とした新産業革命

では、昨今話題のChatGPTについて考えたいと思います。私はこれが「新」産業革命だと考えています。産業革命はイギリスで起こりましたが、新産業革命の震源地はシリコンバレーだと言っても過言ではないでしょう。OpenAIのオフィスも以前はサンフランシスコの南にあり、そこでChatGPTが生み出されたわけです。

シリコンバレーに、私たちMODEのサンフランシスコオフィスのメンバーが住んでいます。そこで最近見られる出来事をいくつか紹介します。

生成AIがもたらす具体的な変化の事例

この動画は私が無人タクシーに乗ったときに撮影したものです。サンフランシスコで「WAYMO(ウェイモ)」という会社が自動運転車を使い、無人タクシーサービスを実用化しています。こんな形でボタンを押したら、行き先に向かって車が勝手に走ってくれます。

WAYMOの無人タクシーサービス

運転手はいないのですが、運転席もハンドルも残っています。初めて乗ったとき確かにびっくりして「これはすごい!」と思ったんですけども、2回目に乗ると、後部座席に乗っている人と普通に会話をして、運転手がいなくてもタクシーとして普通に走っていくというのが、当たり前に感じてしまいました。それくらいすごいことです。
これはタクシー運転手という仕事が大きく影響を受けるであろう出来事です。

次はGoogle検索の事例です。Google検索は、皆さん使っていらっしゃると思うのですが、最近の若い人たちは、Google検索を使わなくなってきているという傾向が見られます。

Perplexityによる検索

旅行の計画を立てていると仮定してみましょう。Google検索の場合、探したい内容を入力すると、該当するページがパッと出てきます。
同じように「Perplexity(パープレキシティ)」というサービスを使い「見どころは何ですか?」と聞けば、いろんなページを探しに行って、ChatGPTのようにその結果を要約して回答してくれます。

人がウェブページを一つ一つ読み込んで情報を集めるのではなくて、本当に欲しい情報に、一気に辿り着いてしまう。「検索」という行為が大きく変わって、Google検索の量が減ってきているんですね。これがもう一つ見られている出来事です。
ChatGPTの出現から2年で、このような大きな変化がどんどん起きています。

三つ目の事例も紹介しましょう。我々は日本でビジネスをしているので、日本向けのマーケティングコンテンツは日本語で作っています。アメリカ向けのコンテンツは英語で作ります。

Raskによる、喋っている人の声のまま自動翻訳するデモンストレーション

生成AIの活用により、コンテンツの多言語化が非常に簡単にできようになりました。例えば、元々英語で作られたコンテンツを、スペイン語や日本語など他の言語に、AIによって吹き替えることができます。しかも、喋ってる人の声で吹き替えができるのです。こうした吹き替え作業を、誰も雇わずに簡単にできてしまうのです

先日、サンフランシスコにあるベンチャーキャピタルのトニーと会話をしました。彼はこれまで、PCの時代、インターネットの到来、クラウドの出現といった大きな波をいくつも見てきて、それらに投資してきました。しかし、今回の生成AIの波は、これまでのものとは桁違いの規模で、その影響範囲は現在ある仕事のほぼ全てに及ぶと言っていました。「影響がない仕事はないと思った方がいいよ」と彼は断言しています。

True Ventures Tony Conrad

生成AIが生産性に与える影響

私たちのサンフランシスコのメンバー、ブライアンの話もご紹介します。
ブライアンはその日、午前中にお客様のところへ伺い、今まで知らなかった情報をたくさんヒアリングして帰ってきました。そして、ヒアリング内容を基に生成AIを活用して、マーケットや自社ソリューションとの関連性などについて、昼食前にリサーチを終え、訪問したその日の昼食中に内容を共有してくれました。

今までだったら3〜4日かかってリサーチしていた内容が、生成AIの活用によって昼食を取る前に終わっているということです。それくらいインパクトがあります。

ブライアンは「生成AIはスーパーヒーローの強化スーツを手に入れたようなものだ。その生産性向上の程度は4倍ぐらいあるんじゃないか」と言っていました。

生成AIを活用したリサーチを行うブライアン

日本が直面する課題とAIの可能性

労働人口減少という社会課題

さて、産業革命では生産性が2〜3倍になりました。新産業革命では、生成AIを使うことで、生産性も同じように何倍かになるでしょう。

日本では今、解決すべき問題があります。労働人口の減少です。労働人口は2005年のピーク時に8442万人でした。これが今後50年の間に約3500万人減少すると言われています。現在と同じ仕事量をこなす場合、計算上、1人あたり1.7倍の仕事をしないとなりません。現実問題として、1人で1.7倍も仕事はできません。労働時間が1日8時間ではなく、13~14時間になってしまいます。

労働人口の減少と必要な生産性

しかし、新産業革命をもたらす生成AIを使えば、1.7倍もの時間を働かなくても、労働人口減少の問題を解決できると我々は考えています。働き手不足解決の切り札は、この講演のテーマとなっている「AI-driven IoT」です。実際のリアルな現場に対してAI技術を適用することが、働き手不足解決の切り札になると考えています。

生成AIとAI-driven IoTがもたらす生産性向上

今までのIoTというのは、視覚の代わりとなるカメラや、聴覚の代わりとなるインカムなどに代表される色々なセンサーを活用して現場を理解しようというテクノロジーでした。もちろん、これだけでもできることはたくさんあるのですが、生成AIという頭脳が組み合わさることで、大きなブレークスルーがあると言えます。

生成AIによるブレークスルー

それは何でしょうか?
これまで、カメラやセンサー、インカムなどの機器は、単独では人間と直接コミュニケーションを取ることができませんでした。

しかし、生成AIという頭脳が仲介することで、これらの機械と人間が、複雑なプログラムや設定なしで、一緒に働くことが可能になります。つまり、生成AIを介して、センサーやプログラムがチームの一員として、人間と共に働けるようになることが、大きなブレークスルーなのです

これから、そのセンサーIoTの技術と生成AIの技術を使って、実際に社会実装で先頭を走られている西松建設様の事例をご紹介します。


西松建設様の事例紹介に続きます。