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【MODE CHANGE 2024】映像が繋ぐ未来の建設現場

セーフィー株式会社 営業本部 事業戦略部 副部長 永目 竜聖氏からは、「映像が繋ぐ未来の建設現場」と題して、建設現場を中心とした映像ソリューションによる課題解決の事例と未来の展望が紹介されました。

永目:本日は「映像が繋ぐ未来の建設現場」というテーマで私、永目(ながめ)からお話をさせていただきます。
私は第二新卒でリース会社に入社し、その後、2社目として現在のセーフィーに転職しました。建設業向けのレンタル事業の立ち上げに関わり、そこからのご縁で主に建設現場向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、今はAIソリューションの開発に従事しております。

セーフィー株式会社のご紹介


セーフィーとサービスモデル

セーフィーは2014年に創業し、元々モーションポートレートからスピンアウトしたメンバーを中心に立ち上げた会社です。現在では約400名以上の従業員を抱え、2021年に上場も果たしました。事業会社と資本業務提携を行い、株主であると同時にパートナーとして相互にシナジーを発揮しながら事業を成長させている点が特徴として挙げられます。

2024年6月末で、当社のサービスに接続し、ご契約いただいているカメラは約26万台に達しています。クラウド録画サービスの分野では、業界シェアの54.1%を占めており、No.1の地位を確立しています。日々大量のデータがクラウドに接続されており、この膨大なデータを活用し、今後はAIの活用やさらなるDXの推進につなげていきたいと考えています。

また、当社のサービスは防犯カメラという側面ももっており、幅広い業種の方々にご利用いただいています。建設業を中心に製造業、プラント、インフラ、公共機関、飲食サービスなど、多岐にわたる分野で映像を活用していただいています。

セーフィーのサービスモデル

建設業における活用事例

その中でも特に建設業における活用について深掘りしていきたいと思います。現在、セーフィーのカメラを現場に設置することで、施工管理者をはじめとした現場の方々の「目の代わり」として現場把握のツールとして活用されています。

これにより、従来は現場に行かなければ確認できなかったことが遠隔地からでも確認可能になり、移動時間の削減や生産性の向上に寄与しています。具体的な用途としては、「進捗確認」「防犯対策」「安全管理」「品質管理」などが挙げられます。現地に行って目で見て確認する業務を遠隔で代替することで、さまざまな課題を解決しています。

建設現場におけるSafieカメラの主な用途

カメラとしては、主に建設業向けに「固定型カメラ」と「ウェアラブル型カメラ」の二機種を提供しています。

固定型カメラ「Safie GO(セーフィー ゴー)シリーズ」は、携帯回線にすぐに接続でき、電源も100ボルトのコンセントに差し込むだけでどこでも使えるプラグアンドプレイを実現しています。現場でどなたでもすぐに使えるサービスとなっていることから、高い評価をいただいています。特に固定カメラでは、広域を一度に撮影できる「Safie GO 360」という半天球型のカメラや、1センチレベルの精細な検知などAI機能を搭載した「Safie GO PTZ AI」というパン・チルト・ズームカメラを展開しています。これらのカメラはすべて携帯回線にすぐに接続できる様、SIMカードが内蔵されており、現場で個別に通信環境を用意することなく、スマートフォンやパソコンで映像をご覧いただけます。

固定カメラとウェアラブルカメラ

固定カメラ「Safie GO 360」の詳細

「Safie GO 360」は上下左右360度を撮影できるもので、壁に横向きに設置することで常に全方位をカバーします。画面内の視野角は自由に動かせるうえ、撮影自体は常に360度行われているため、映像記録の抜け漏れがありません。例えば、タワークレーンなどに設置していただくと、現場の全景を映し出すことが可能です。

「Safie GO 360」360°ビュー

また、ダッシュボード機能を使えば、一つのカメラから同時に複数の視野角の画像を取得でき、1台で4台分の価値を提供します。建設現場ではどこで何が起こるか予測が難しいため、私たちは映像の網羅性を非常に重視しています。どこで何が起こっても撮影が継続されている状況を作り出すことが、現場を適切に管理する上で重要だと考えています

「Safie GO 360」分割ビュー

ウェアラブル型カメラのご紹介

ウェアラブル型カメラは、発注者の立会い検査や遠隔臨場を支援するために開発されたものです。バッテリーと携帯通信機能(LTE)を内蔵しており、電源がない現場環境でも動作します

特に土木の現場は非常に広大であるため、このカメラを使用することで、どこでも迅速に現場の状況を確認できます。カメラが「目の代わり」となり、現場の作業支援を可能にします。

これにより、従来現場立会いに必要だった移動時間を大幅に削減できます。例えば、往復で2.5時間かかる現場では、発注者側で月に90時間もの移動時間を削減できた事例もあります。施工者側でも、立会いに伴う調整業務や準備業務が軽減され、生産性の向上につながっています。

ウェラブルカメラ活用事例

これらの固定カメラとウェアラブルカメラの二つのラインナップは、多くのゼネコン様に標準カメラとして採用され、ゼネコン売上上位30社のうち29社で標準的に導入いただき、各現場で平均して3~5台が設置されています。

一部のモデル現場では、100台以上のカメラを導入しているケースもあり、映像による施工管理や進捗管理が現実のものとなってきていることを日々実感しています。

映像活用による現場の未来

ここからは、映像活用で実現する現場の新しいスタンダードについて、セーフィーが考える未来をご紹介いたします。

その前提として、2019年4月1日に施行された働き方改革関連法、いわゆる残業規制についてお話しします。法定労働時間は1日8時間、週40時間、少なくとも週1日の休日を取ることが義務付けられ、働き方に大きな変化が生じています。労働人口が減少する中、この残業規制に適合するためには現場の生産性をさらに向上させる必要があります。

1日あたりの稼働時間の例

この背景から、多くの企業で現場DXが進められており、その中で必ず出てくるキーワードが「業務の遠隔化」や「遠隔施工管理」です。これまで建設業の大前提とされていた「三現主義」(現場で現物を現実に見る)が見直され始め、デジタル庁も目視による点検というアナログ規制の撤廃を打ち出しています。法改正が進む中、私たちも遠隔での施工管理が進む世界が近づいていると考えており、その準備を進めています。

多くの現場でカメラは活用されていますが、一般的にはまだ防犯目的やインシデントの記録が主な用途です。しかし、先進的な現場では、遠隔での施工管理が積極的に導入され始めています。施工の遠隔化が進むことで、映像データの価値が真に発揮されると考えています。

今後取り組んでいきたいテーマの一つは、現場で遠隔管理できる項目を増やすことで、その実現において「映像の網羅性」が重要だと考えています。現在は特定の対象を管理する目的で1現場あたり3~5台程度のカメラ活用が一般的です。しかし、実際の現場では何がどこで起こるか分からないため、必要な情報が得られず、結果として現地に行かざるを得なくなることがあります。これでは遠隔施工管理の効果が十分に発揮されません。

だからこそ、抜け漏れのない監視環境を提供することが重要です。私たちは、現在は限定的に行われている遠隔施工管理をさらに進化させ、どこからでも網羅的に現場を確認できる環境を構築することが、次の大きなステップだと考えています

多台数のカメラによる現場の網羅的な管理事例

多数のカメラを用いて現場を網羅的に確認できる環境を構築している事例を土木現場と建築現場それぞれでご紹介いたします。これまでカメラは屋外での利用が中心でしたが、近年では屋内での活用事例も増えてきています。

特に建築分野では工事の後半になると屋内作業が主となります。しかし、現場で網羅的にカメラを配置するには、通信環境の整備やデバイスの設置、理解促進などの課題があり、一部の大規模現場でしか実現できていないのが現状です。私たちは、これらの課題を克服し、より多くの現場で実現していきたいと考えています。

まず、土木現場での事例をご紹介します。広大な二つの工区を、副所長が数十台のカメラで網羅的に管理しています。ポイントは、全ての範囲を死角なくカバーしているわけではなく、現場全体を俯瞰できる高い位置に1~2台のカメラを設置し、作業が発生するエリア付近に追加のカメラを設置している点です。さらに、詳細な確認が必要な場合は、目的に合わせて10数台のカメラを補完的に設置しています。

土木工事現場での映像活用事例

作業エリアが日々進捗するため、カメラを移設しながら運用しています。このような移動のしやすさが、当社サービスの特徴として活かされています。事務所から二つの工区までは車で約30分の距離ですが、副所長は自席のモニターで常にカメラ映像を確認し、不安全な状況や行動を逐一チェックできます。

問題を発見した際には、その部分の映像を切り取り、Slackやダイレクトなどのチャットツールを通じて共有します。映像を基に同じ情報を見ながらコミュニケーションを取ることで、遠隔地でも効果的な指示が可能となっています。リアルタイムの映像だけでなく、切り取った映像を使って具体的な作業状況について議論できるため、納得感の高いコミュニケーションが実現しています

次に、建築現場での事例です。神奈川と熊本の現場を兼務している現場所長は、毎週飛行機で移動しながら遠隔管理を行っています。この方は新築・改修・新規工事を含む5つの現場を担当しており、複数の現場を映像で効率的に管理しています。

物理的に現場を訪れる機会が少ないため、各現場に10数台以上のカメラを設置し、見える化を進めています。現場と現場を臨場感を持って繋ぐ映像デバイス「窓」を使用することで、対面と遜色ないコミュニケーションが可能となり、その場にいるかのような感覚で現場工事を進めています

未来への展望と他社との連携

これらの事例から、多数のカメラが一般的になれば、将来的には自宅から施工管理ができる未来も見えてきます。もちろん、カメラだけですべてが解決するわけではありませんが、重要な要素であることは間違いありません。そのため、私たちはBONX社やMODE社などパートナー企業との連携を重視しています。

カメラや「窓」を通じて現場間を映像で繋ぎ、現場の方々が、音声デバイスとの連携によりハンズフリーでコミュニケーションが取れれば、さらに効率的な現場管理が実現できます。

音声デバイス(BONX社)連携イメージ

特に音声デバイスソリューションを提供するBONX社との連携には2つの点で大きな期待をしています。ひとつは通知先としての連携になります。当社のAIが危険な行動や重要な車両(重機やミキサー車など)を映像として検知した際に、BONX社のデバイスを通じてリアルタイムに音声で通知する用途です。もう一つは映像と音声の文字起こしによる帳票の自動作成になります。今後、映像と音声のデータを組み合わせて文字起こしを行い、帳票などの自動作成を進めるソリューションなどを展開していきたいと考えています。

また「マルチモーダル」というキーワードが注目されている中、MODE社との連携では、センサー、映像、音声を組み合わせて現場の状況を総合的に把握することにも期待が集まっています。音声データのサマリーやセンサーによるデータを映像と重ね合わせることで、現場の状況をきれいにまとめたアウトプットを生成します。これが仕様に適合していれば、帳票の代わりとして機能し、将来は業務そのものを効率化・代替できると考えています。

以上のように、映像と音声、センサーを組み合わせた新しい現場管理の形を提案し、未来に向けて取り組んでおります

映像データによる遠隔施工管理の深化

私たちは、現場にカメラをどんどん普及させ、網羅的に映像を確認できる世界を目指していますが、一方で映像データの巨大な情報量とアクセス性が大きな課題になっています。

映像データ活用の課題

カメラによる映像データは非常に情報量が多く、例えば1時間の映像をそのまま見返すと1時間かかります。仮に60倍速で再生しても1分は必要で、映像を確認すること自体が大きなハードルとなっています。さらに、多数の映像が存在すると、どこで何が起こっているのか把握しにくくなります。安全管理を行おうとしても、偶然危険な行動が映るとは限りません。必要な情報にたどり着くためには、映像を見る行為をより効率的にする必要があります。つまり、必要な映像や情報にどうやってアクセスすべきかが課題となっています

課題解決のひとつとして、業務の遠隔化実現によるアウトソーシングが挙げられます。現場で行わなくてもよい業務は、積極的に外部に委託して効率化を図ります。もう一つはIoTセンサーやAIの活用になります。必要なデータに迅速にアクセスするために、IoTセンサーやAIを組み合わせて、映像を確認するタイミングや目的を明確化します

まず、業務の遠隔化について進んでいる事例をご紹介します。複数の現場を1つの支店で管理し、現場経験のあるスタッフが遠隔で安全確認を行っている事例です。重要なポイントだけをチェックすることで、効率的な確認を実現しています。

遠隔現場管理の事例

建設会社のOBが若手スタッフを遠隔からサポートし、安全パトロールを行っている事例もご紹介します。現場に赴くと体力的にも時間的にも大変ですが、豊富な知見を活かしてノウハウを伝授することで、業務負担の軽減と技能伝承に大きく貢献しています。

品質・技術分野の遠隔化も進み始めています。デバイスの進化により、高精細なLiDARや360度カメラを活用して、検査業務そのものを遠隔化する動きも見られます。

このように、業務を細分化し「三現主義」(現場で現物を現実に見る)に固執しない業務については、発想を転換して遠隔化を推進するプレイヤーが増えていると感じています

映像視聴体験の向上と協業の推進

映像による遠隔施工管理の現状と事例をご紹介しましたが、この流れを加速させるため、技術開発を進めていきたいと考えています。その一環として、映像の視聴体験の向上を目指し、MODE社との協業やAIの活用を進めています。

さらに、BizStack Assistant及びBONX社のツールと連携することで、センサーをトリガーにハンズフリーで現場の状況を音声でも詳細に共有し、迅速に対応できるようになります。このように、弊社はアライアンスを強化し、現場の課題解決に積極的に取り組んでいきます

私たちは、センサー技術やAI、そして他社との連携を通じて、現場DXをさらに推進していきたいと考えています。本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。今後とも、セーフィー、MODE社、BONX社の3社による現場DXの加速にご期待ください