見出し画像

CassiaなるすごいGatewayを試してみた

執筆者:Roger Sato, Customer Project Manager at MODE

電波

 電波。IoT事業者やIoT利用者なら必ず苦労したことがある、いや毎回悩まされるのが電波の通信距離。以前に書いた「電力センサーを試してみた」の記事でも触れましたが、各メーカーの仕様には見通し何メートルとかって書いてあって、「それなら楽勝じゃん」ていつも期待させられるんですよね~東京スカイツリーのような非常に高い場所から発する電波でもない限り、絶対そんなに飛びませんから~残念。(誰だっけ?かなり古いネタ笑)

 電波に悩まされるとはいうものの、有線ではなく無線でデータを収集できるというのは、配線いらずでとても重宝しますし、色んな条件を考慮しながらベストな構成を考えるのもIoTの醍醐味であったりもするんですね~。

センサーはBLEが多い

 そしてそんな中、世の中の無線対応センサーといえば、やはりBLE対応が一番多いように感じています。(調査とかまったくしていません、主観ですのであしからず。)皆さんも普段使っているヘッドフォンなんかで使っているあれですね、ペアリングとかした事ありますよね?

BLEの電波距離は短い

 え~、最近のBLEて100mくらい電波とぶらしいよ、知らないの?と思ったあなた、詳しいですね。でも本当に確認してみた事ありますか?確かに最近はBLE 5.xというバージョンが出てきていて見通し100mとかなんとか書かれてます。電波にとって何の障害もない状況なら、というあれ(見通し)ですね。気を付けてください。
 あとBLE 5.xに対応したセンサーというのはまだまだ少なくて、実際はBLE 4.x対応のセンサーを使うケースがほとんどです。こちらは見通し10mといったところで、現場ではさらに短く1~数m程度というのが実際のところです。

CassiaなるすごいGatewayがあるらしい

 そんなBLEですが、その受信距離を大幅に延ばしてくれるすごーーいGateway(受信機)があるらしいんです。受信アンテナを延ばす特許技術を持ったGatewayで、見通し400mとかなんとか(あくまで見通しですよ)書いてあったりします。センサーからの送信距離を延ばすというのはなんとなくイメージできるんですけど、受信距離を延ばすってどういう仕組みなんでしょうね?何回考えても良く分からないんですけど、まあ特許ですから凡人には分からなくて当然です。ちなみに私の理解はこんなイメージです。

Cassiaの受信距離イメージ

通信距離テストを実施してみた

 というわけで、疑り深い私たちはこれを実際にテストしてみる事にしました。(色々、痛い目みてきましたので、にわかには信じられません、はい。)細かい部分は無視するとして、こんな構成です。

通信距離テストのイメージ

 実際に使用した機器はこちらです。利用したGatewayは屋外用のCassiaで、複数センサーを用意してその違いがあるのかどうかも検証してみました。

 検証場所は、兵庫県の丹波篠山市です。周辺電波(外乱)の少ない環境でテストしたいので、弊社のテストフィールドとして活用させていただいている「株式会社やがて」の施設をお借りして実施しました。有機農業でこのようなことをされていて、そこからの景色はこんな感じです、のどかでいい景色でしょ。

MODE 農場テストフィールド

 通信テストは、下の写真の右下辺りにGatewayを設置して、赤矢印の道路を50mずつ遠ざかりながら、5分静止して計測を繰り返しました。

農場テストフィールドでの計測イメージ

 センサーは、写真の通り三脚に板を固定して、その上に固定・設置しました。移動しながら計測しますが常にGateway方向に同じ面を向けるようにして、計測条件がなるべく変化しないようにしました。

計測テストの様子

 センサーからGatewayを見た様子がこちらです。距離はGatewayの場所からゴルフで使う測距レーザーを用いて測定しました。傘を開いて測定の目標物にしたのですが、400mを超えたあたりからは測定自体が難しく、距離もちょっと曖昧になってしまっています。(後から気づいたんですが、移動しているセンサー側から、Gateway横の建屋を目標物にして距離を測るべきでしたね。)

計測テストの様子

そして結果は??

 各測定点では約5分静止し、センサーからのデータを収集しました。50mずつ距離を延ばしながら測定(350mは省略)した結果がこちらです。レ点は、1点以上データがとれた事を示しています。

測定結果

 どうですか?実際に苦労した経験のある方には分かると思うのですが、すごくないですか?どのセンサーも300m付近まで問題なくデータを取得できてます。繰り返しますがBLE 4.xですから~

 次に、こちらは各センサーのRSSI値をグラフ化したものです。距離が遠ざかるにつれて、少しずつRSSI値が小さくなっている(電波が弱くなっている)様子が分かりますね。

各センサーのRSSI値グラフ

 グラフではちょっと分かりづらいので、測定時間(約5分)内のRSSIの平均値を表にしてみたのがこちらです。RSSI値は電波強度を表す数値で、数値が大きい(マイナスなので分かりにくいですが)ほど電波が強い事を表しています。

測定時間(約5分)内のRSSIの平均値

 次の表は、測定時間(約5分)内に取得できたデータの取得率を表にしたものです。つまりデータが10個とれるべきところで、8個とれた場合、80%という事です。実運用を想定した場合、50%以上くらいはデータ取得できてほしいと思ったので、青色と白色にしています。赤色ゾーンは50%を下回っており、実運用は難しいとの結果です。

測定時間(約5分)内に取得できたデータの取得率

結果の考察

 いづれのセンサーもBLE4.xの送信機能を利用しており、通常なら見通し10m程度、実運用上は3-5mくらいでないとデータを収集できないセンサーであるにも関わらず、どのセンサーも見通し100mくらいまでは取得%は良好、RSSI値も非常に高く安定しており、Cassiaの受信アンテナ性能が非常に高い事が確認できたと思います。

 今回の検証では400mを超えたあたりから測定距離を測る事自体が難しかったため、450mあたりまでで測定を終了してしまいましたが、センサーや条件によっては、それ以上でも受信できるのではないかと推測できます。
 100mを超えたあたりからセンサー毎のばらつきが見られ始めましたが、②のマクニカ社環境センサー試作機は非常に安定していて、1件のとりこぼしもなかったです。詳細は分からないのですが、センサー側の送信機能にも何か秘密がありそうですね~(でも、センサーによっては、電源供給が必要だったり、エナジーハーベストだったりしますし、それによって運用条件が変わってきますので、どのセンサーが良い・悪いという話ではありません。)

 個人的に面白かったのは⑤の藤倉コンポジット社の漏水センサーです。センサー部が水で濡れる(漏水検知)ことにより発電し、データを送信するセンサーです。本番運用時と条件を合わせる為、センサー部に水(2~3滴くらいです)を滴下する事により測定しました。想像していたよりRSSI値も高く、送信頻度も高かった(結果から推測するに、おそらく電力が溜まったら送信されるようです)です。他センサーと比べると安定性が高いとは言えませんが、完全にバッテリーレス(電池交換も不要なのは、非常に重宝します)で運用ができそうです。

所感

 いかがでしたでしょうか?CassiaなるすごいGatewayを試してみました。受信アンテナを延ばすことで、BLE4.xの電波を遠距離でも取得できるという噂が本当である事が確認できたかと思います。BLE限定という制約条件はありますが、その条件下ではとても有用なのではないでしょうか。皆さまの電波問題解決の一助になれば幸いです。

謝辞

 株式会社やがて社にはテストフィールドを、また各社センサーにはお借りしているものもあり、改めてお礼を申し上げます。今回の通信テストに際し、マクニカ社からはGatewayおよびセンサーをお借りしました。また担当者さまにはご同行いただき、一緒にテストを手伝っていただきました。最後になりましたが、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。