パリの学生寮でトラブるもなんとかなった話
夕方、語学学校からパリ郊外の学生寮に帰るなり、突然ドアをノックされた。かなりびびりながらドアを開けると30代とおぼしき黒髪ロングの日本人女性が立っていた。
「ねえ,日本人?」
「あ、はい」
初めまして,の言葉もなく、いきなりそう聞かれて面くらう。ぱっちりおめめだけれどかわいげはなく、人を射抜くような目で頭から足までなめるようにみてきた。
初対面なのにやたら気の強い日本人が隣人に
「あたし、隣に住んでるAです。よろしく。
あのさあ、暖房ってつく?うち壊れてるみたいなんだけどそっちはどお?」
と矢継ぎ早に早口で話しかけてきた。
ちょっとびっくりしつつ、
「いや、使ってないからわかんないけど・・・」と自分の部屋の暖房がつくか試してみたらつかなかった。アパートの暖房はデロンギのようなオイルヒーターだった。
女性は「暖房つかないと寒くない?管理人のとこに直してもらうように一緒に行こうよ」
まだ4月だけれど朝晩は冷える。
というわけで、なかば強引に管理人のところへ連れてかれた。
Aさんははじめからケンカ腰で
「暖房代だって家賃に入ってるんだから今すぐなおせ」と命令口調。
アフリカ系フランス人の管理人はフットワークが軽くすぐに部屋まで直しにきてくれた。
**そこで事件勃発。 **
なんとAさんのオイルヒーターのネジがポンっとふっ飛び、中から黒いオイルがぴゅーっと吹き出した。床がビシャビシャとオイルだらけになってしまった。
「ぎゃー!!ちょっと服にもかかったじゃない!!どうしてくれんのよ!!」
私は内心ブッと吹き出しそうになったがAさんはブチキレていたため、顔をまじめにとりつくろうのに必死だった。
Aさんは管理人と一悶着したが、私もAさんの部屋もオイルヒーターは無事に直り、おかげで部屋が暖かくなった。 かなりクセが強そうな日本人だな、と警戒しつつ、彼女のおかげで暖房が直ったので感謝。外国では時に強引な強さも必要だなと学んだ。