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見捨てられたくない

2024/10/23

薬の管理権限を取り戻すべく、主治医に電話で直談判。命を絶ちたくてODした薬以外は自己管理したいと伝えた。多量摂取したとて、しぬこともできない薬ではODするつもりはない。訴えは無事に通った。主治医との関係はもうすぐ7年。多少なりとも信頼関係があるからだろうか。

しぬことこそできないが、それでも自己管理できるようになるということは苦痛からの解放だった。薬の飲みかたも含め、ようやく手に入れた医療の決定権を失うことはわたしにとって手痛いことだ。方法はひとつでも多いほうがいい。

主治医の「休むことを頑張れないのは甘え」には未だ納得はできないままでいる。それはわたしがこれまで受けてきた教育とは180度違う。「休むことは甘え」だと厳しく言われて過ごした看護学校での日々がわたしのこころを縛りつづける。

休むことはだれかからの敵意を買う行為であって、それがいついじめに変わってもおかしくない。仲間だとおもっていた30人のクラスメイトから手のひらを返されターゲットになった恐怖はそう簡単に消えてくれない。「いまの墨染さんを見捨てるひとはいない」なんて言葉に絆されるほど、ひとを簡単に信じられはしない。

「わたしたちは墨染さんを見捨てることはありませんよ」と訪看さんがいう。舌打ちしなかっただけえらい。なにもわかっちゃいない。わたしが恐れているのは治療者や支援者に見捨てられることじゃない。そもそも治療者とわたしは契約という器に守られているのだから、見捨てるとか見捨てないとかそういう次元の問題にはならない。それは二者関係をもちこむことになり治療に影響をもたらす。そうなったら次のサービスを契約したほうがいい。

わたしが恐れているのは知人や友人に見捨てられること。大好きなボスがかけてくれた期待に応えられないこと。「あいつはなにもできない・やらない」「一緒にいると損をする」と離れていかれること。どれも事実おこったこと。わたしが勉強できなかったがために。ひととうまくコミュニケーションをとれなかったがために。発達特性のミスが多かったがために。すべて実際におこったこと。

人間社会において、それは間違ったことじゃない。じぶんの身を守るためにだれかを見捨てるなんて、大なり小なりみんなしている。わたしもしてきた。それが裏切りというていをなさないよう、アサーティブなかたちを保っていただけで、自己保身や利己主義のためにひとはいつだって卑怯になれる。

わたしは大切なだれかにとっての足枷になりたくはない。わたしのせいで困るくらいなら置いていってもらいたい。だけどそれは悲しく淋しいことだから置いていかれないよう必死でがんばるのだ。

できることをひとつでも増やし、役にたつように立ち振る舞う。努力でカバーできることならなんだってする。スケジュールがいっぱいだってかまわない。それだけがんばってやっとみんなと渡りあえるようになるのだから、その努力を捨てることこそ、社会から逃げることになるんじゃないかとおもう。

同時に数年間コミュニケーション力を鍛えてきた。バウンダリーを保てるようにできるだけ努めているし、ファシリテーターの資格をとり、集団のつなぎめになれるよう血の滲む練習もした。そうやって、いまのわたしがなんとかできあがった。ある程度の集団になじみながら、好意的にひとに接し、だれかの手助けをしながらグループでじぶんの能力を発揮することができる環境を手にいれた。

もしかしたらいまのわたしだったら、もう一度看護学校にはいってもやっていけるのではないかと思えるくらいに達したのだ。あれだけの傷がある場所に再挑戦できる可能性をみいだせるようになるのは相当のこと。それなのに、このがんばりを捨てろというのか。やめろというのか。それはあんまりにも、酷なんじゃないのか。

主治医の意図とはどこかズレているかもしれない。しかし15分では対話の時間がたりない。どのみちあと1か月はこの悩みを抱えることになる。主治医にいわれたことすべてに従うことはないだろうが、わたしを想ってのアドバイスであることは理解している。主治医のことも信頼している。

だからこそ恐ろしいのだ。これまでしてきた努力をすてることが。休む努力をすることが。大切なひとに「わたしが休んでいても見捨てないかどうか」訊いてまわりたいのをぐっとこらえている。見捨てられ不安があるのはしかたないが、それをコミュニケーション上にあらわしてしまえば、ややこしいことになってしまう。長年わたしを見守ってきてくれたひとたちだからこそ「またか」と思われたくはない。がっかりされたくない。

それに堂々と「見捨てる」なんて答えはしないだろう。みんな優しいひとだから。それゆえ、ほんとうになにもできないわたしをみたとき、彼らなりのやさしさでそっと離れていかれることが怖い。せっかくここまで築いてきたものを壊したくない。手にいれた人間関係を失いたくない。看護学校時代におきた凄惨な日々を繰りかえしたくない。

どうしたら見捨てられずに休めるのかな

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