七面大明神
七面大明神 草山集
日蓮聖人が身延山で説法されていたとき、その中に一人の婦人がいた。
立派な衣服や上品な物腰で、このあたりの人と思えなかった。
説法を聴いていた波木井氏(日蓮を庇い、帰依した地元の武士)は、その婦人が近隣では見かけない人だったので、素性を怪しみました。
日蓮聖人は女性に向かって本形に戻れるかと問います。
女性は一滴の水があれば可能でございます、と答えました。そこで、弟子に花瓶をとらせて女性に与えました。すると、花瓶の水を得た女性はたちまち一丈ほどの赤龍に姿を変えました。
赤龍は元の女性の姿に戻り、自分の師匠は霊山の塔中において釈尊より別命を受けた者であり、自分も仏勅を蒙って護法の神になる者であると告げました。
「これよりは身延山に水火兵革の難がないようにし、一乗の法華経を信受する者には、その願うことを意のごとく叶える」
そうして竜は七面大明神と呼ばれるようになり、いまでも信仰されています。