やけど如来
やけど如来 まるこやま63号
ある長者の家の召使いの娘は、毎日飯を炊いては西方寺の阿弥陀様に一口捧げていた。それを長者の妻に知られ、顔に焼け火箸を押し付けられた。不思議と娘の顔は火傷にならなかった。
長者は夢を見た。そこには阿弥陀様が現れ、妻のことや、娘の優しさについて話された。そして身代わりとして、火傷したと。
長者は西方寺に向かうと阿弥陀様の顔には優しく火箸をあてたように焦げていた。
ところで、そのころ松江に月照寺という寺が作られた。阿弥陀様の奇跡を聞いたお殿様は、この阿弥陀様を迎えたいと云うことになった。
運ぼうとすると重く、40人あまりで運ばなくてはならず、船に載せて運んだ先で動かせなくなった。
やむを得ずその地の寺に安置したが、毎晩夢枕に阿弥陀様が現れ、寺に戻りたいとうめいた。
お殿様の耳にそれは届いた。そこでうつしを作らせ、それは月照寺に。本物の方は西方寺に返されることになった。
このとき来るときは40人必要だった人手が五六人で済んだという。