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武士の気合

武士の気合 北窓瑣談
安永のある年の10月の晦日の頃という。
大阪の武士である山寺という人が真田山のそばをとおったところ、耳元でけたたましく人のは話し声が聞こえるので振り返ったが、誰の姿もない。

気のせいかと歩き出すと、また声が聞こえる。
そうしたことが何度となく続いた。
何度目かのことか、虚無僧が町人と話している姿が見えた。その二人連れが近づくと声が大きくなるようだった。
この二人も妖怪なのだろうと決めて真後ろに来たときに切りつける事にした。

真後ろに来たときにさっと振り返った。
刹那、わっと叫んだものがある。
「何者だ」
押さえつけると町人であった。
「甚だ恐ろしい事です。今まで同道してきた虚無僧が、お侍様がこちらを向いた途端に消えてしまったのです」

これは山寺の気合を察し、妖怪が姿を消したものとおもわれた。

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