
皿洗い婆
皿洗い婆 冨里の民話・伝説
婚礼の帰り男がひとり歩いていた。酒を飲んでおり、千鳥足で楽しげだった。
そんな中、音が聞こえてきて男は正気に帰った。
そこは屋敷の跡だった。屋敷跡といっても、大きな荒れ地で、建物が残っているわけではなく、ただ古井戸があるだけだった。
音はその井戸の方からしているようだった。
酒の勢いもあり、男は井戸の方に近づいて行った。
うっすらと不思議な明かりがともり、白髪を振り乱した老婆が
「一枚、二枚」と皿を数えていた。
男は声を潜めたが、婆は気づき男をにらみつけた。
男は屋敷跡を逃げ出した。
古老の話によると、これはずっと以前、その屋敷が盛んであったころ、下働きの婆さんが、主人の大切にしている家宝の皿を洗っているうちに割ってしまい手討ちになったことがあるという。
これが初めてでなく、最後でもなく、会ったことがあるものが何人もおり、皿洗い婆と呼び、屋敷に近づくものはなくなったという。