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射られた大黒

射られた大黒 島根県口碑伝説集
 ある村に長者があった。
 彼は使用人に冷たい人間で、死なぬ程度に酷使した。
 ある時から、収穫した野菜を入れてある籠が頻繁に倒されることがあった。最初は使用人を疑ったが、探してみたところ犯人はいないようだった。

 そこで籠が見える物陰に隠れ、弓を持って待ち構えていた。
 どこからともなく大男が入ってきて、籠を倒し始めた。長者は迷わず矢を放った。大男はどこへともなく消え失せた。
 不思議なことと思いながら家に戻ると、神棚の大黒に矢が刺さっていた。

 それから長者は病に倒れた。それから一年が過ぎ、屋敷から火が出だ。それから、不幸が続き、屋敷や田畑は人手に渡った。
 大黒はこうぼうさまの手によるものだったという。

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