蛇の三文
蛇の三文 伊予の宇和島
妙高山照護寺は慶長三年建立で、ある上人が草創に係わった寺としてしられる。
上人は高徳で知られており、行脚されていた。宇和島に来られた際も、善男善女に仏の道を説かれ、帰依するものも多かった。中でも、ひとりの女人が目をひいた。
ある夜のこと、上人の前に女人が跪いて話し始めた。
「かおかたちこそ人を装うていますが、佐古山の楠木に住む、大蛇です。上人の説かれる話しに、この修羅の身を情けなく思っております。一時も早く極楽往生を遂げとう存じます。
上人には、この地に一寺を建立し、仏の道を説いていただきたい。そして、私も仏の道に仕えさせていただきます。
わらわの姿が消え、三文が手水鉢の下におかれていたら、お陰で極楽往生を遂げたとお思いください」
上人が頷くと、女人の姿は消えた。
手水鉢を調べると確かに三文残っていた。
明治頃までは楠木はあったが自然に枯れてしまったという。