見出し画像

CMから盗め! 数々のCMを手がける電通の奥野圭亮さんが、TikTokに活かせる映像手法を伝授

画像1

TikTokでは、クリエイターの育成やコミュニティ強化のために、日頃からさまざまな支援をしています。その一環として10月4日からスタートしたのが、日本独自のクリエイター支援プログラム「TikTok Japan Creator Academy」。クリエイター100組を対象に、3ヶ月間で総額約3000万円の動画制作支援金を提供。さらに、本プログラムの参加者同士やトップクリエイターとの交流を通じて、動画制作に関するアドバイスやノウハウを共有していきます。

今回は、プログラムの一環として11月29日に開催した参加クリエイター限定のオンラインセミナー「『CMから盗め』短い時間で想いを伝える技術」の模様をレポートします。今回の講師は、株式会社電通のクリエーティブディレクター・CMプランナーである奥野圭亮さん。短時間で人の心をグッと惹きつけるCMがどのように生まれているのかを紐解きながら、TikTokの動画制作へ活かせる12のポイントをアドバイスしてくれました。

画像2

株式会社電通 クリエーティブディレクター・CMプランナー 奥野圭亮さん

視聴者の心を掴む12の映像手法

日々ご自身が取り組んでいるCMプランニングについて「短い時間で想いを伝える技術」と表現した奥野さん。「CMは、パッと見てパッと覚えることができ、ちょっとでも宣伝対象を好きになってもらう必要があります。そのためには、演出ももちろん大切ですが、動画を作る前の段階にある企画の部分にもこだわらなければいけません」と話す奥野さんに、ご自身がCMを作る際に意識していることを12個ピックアップしていただきました。

画像3

奥野さんが紹介したCMをつくる際に意識している12項目

1.歌をつくる
「歌をつくる技術が身につけば表現の幅が広がります」と奥野さん。「歌をつくる」と聞くと、難しい印象がありますが、歌詞は簡単な言葉の方が届きやすく記憶にも残りやすい。「簡単な歌詞をメロディーに載せる技術があるだけで表現の幅が広がります。メロディーをどうするかは違う技術がいりますが、難しく考える必要はありません」と話します。カルビーのポテトチップス「うま辛ポテト」のCMでは、「ヒーハー」というフレーズが繰り返されますが、リズムは奥野さんが考えたそうです。「ヒットするとみんなが真似してくれるのもいいポイント」と奥野さんは話します。

画像4

歌は簡単な言葉の方が届きやすく人の記憶に残りやすいと奥野さんは話す

2.ツッコミどころをつくる
ツッコミ待ちの映像があると、人は言いたくなったり突っ込んだりしたりして、コミュニケーションが生まれやすくなるそう。「ツッコミ待ちは、これからすごく大事になる表現です」と奥野さんは話します。「当たり前のことを当たり前に表現しても『そりゃそうだろ』と突っ込んでくれるし、Twitterなどでつぶやいてくれるので、SNSが盛り上がったり視聴者とのコミュニケーションも生まれやすくなります」と、奥野さんはツッコミどころをつくるメリットについて話しました。

3.キャラクターをつくる
CMはキャラクターをつくることが多く、中でもおバカな主人公は視聴者に愛されやすいそうです。「愛されるキャラクターさえ生まれれば、映像はいくらでも作れて、シリーズ化もしやすくなります。キャラクターがあるとそういう目で見ているからコミュニケーションもしやすいです。『こうだろうな』という目で見てくれるし、時にはイメージを裏切ることが驚きにもつながります。キャラクター戦略はTikTokでも活かせるかもしれません」と話しました。

4.違和感をつくる
「『普通はそんなことしないよね』、という不思議な画をつくると、笑いが生まれて記憶に残りやすくなります」と話す奥野さん。オリンピックイヤーに、仕事のあらゆるシーンでラグビーをやるCMを作ったそうですが、「街でもしラグビーをやるとしたら、どんなことをすれば面白いかを話し合いました。どんなCMかを他人にひと言で説明しやすいことも重要ですね。先ほど説明したキャラクターと違和感で組み合わせられると強いと思います」と違和感をつくる上でのポイントをアドバイスしました。

5.たとえ話をする
「違和感やギャップと似ているかもしれませんが、たとえ話しも例示が面白ければ見られる映像になります」と、奥野さんは話します。「一千万円のスカートを買う人をどう思うか」など、驚きのポイントを作ることが重要です。

6.思いっきり壮大にする
「視点の寄り引きができると、映像クリエイターとしてレベルが上がっていきます」と話す奥野さんは、全然人と違うことをやるときは、極端に引いた視点や寄った視点で作るといいとアドバイスします。「宇宙視点や神視点、人類史視点で考えると映像として面白くなります。今そういった視点で作っている人はなかなかいないと思いますが、こういうことを先にやった人が、TikTokで今後はリーダーになっていくかもしれません」と話しました。

7.擬人化してみる
「人の役に立っているけど日々小さくなっていく消しゴムの気持ち」といった、擬人化をして感情移入させる手法が、CMでは昔からよく使われているそうです。「擬人化は映像が得意な分野で、モノや企業に感情移入しやすくなります」と擬人化の効用について奥野さんは話しました。

8.「説」をつくる
水曜日のダウンタウンのように、ある事象や現象を独自に再解釈する手法です。マリオがデカビタを飲むCMを奥野さんが作ったときは、「一番疲れている人って誰かなと考えたときに、それはゲームの主人公なんじゃないか、という話になりました」(奥野さん)。すると、「もしも」の世界ができて映像が作れるそう。自分だけの視点で再解釈できるとユニークな映像になると奥野さんは話しました。

画像5

「プレイヤーの操作に合わせてさまざまなスポーツをするマリオが一番疲れている人なのでは?」というもしもの仮説から、デカビタをマリオが飲んでエネルギーチャージするCMが生まれたという

9.連続ストーリーにしてみる
「これはTikTokではあまりないかもしれませんが、連続ストーリーの作品を作ってみてほしいと思っています」と奥野さん。複数回に分けて次の展開が気になる終わり方を発明できると、続きが気になって広がっていくだろうと話します。
 
10.ギャップを作る
「元々可愛いキャラが怖くなった」とか、反対に「怖いと思っていたキャラが実は可愛い」など、マトリックスの対極にある存在を映像化するとわかりやすいと奥野さんはアドバイスします。「この人、こんなこと言いそうだな」と予想やイメージをさせて、裏切ったり違うことを言わせたりするのがコツだそうです。
 
11.流行に乗っかる
流行を見つけて乗っかるのは大事なことですが、「知ったかで作ると、いろんな方面から刺される可能性があるので注意しましょう」と、奥野さんは話します。流行りを取り入れる際は、「その道に詳しい人に聞く」「一緒に作る」「流行を全部調べる」のいずれかを意識するのがポイントだそうです。

12.パロディーをしてみる
奥野さんは、地方で流れているCMのパロディーを制作したこともあるそうです。パロディーをつくるときは「ディテールが命。最後まで手を抜かず、演出や書体などを含めて細部までこだわることで、視聴者が乗ってくれて笑いが生まれやすくなります」と奥野さんは言います。「2.ツッコミどころをつくる」と似ている部分もあるそうですが、パロディーはパロディーでやりがいがあると言います。
 
今回は、TikTokでも応用できる映像手法を、奥野さんが普段手がけるCMからピックアップして紹介していただきました。15秒や30秒の短い時間で勝負するCMで用いられているテクニックは、TikTokで動画を投稿するクリエイターの方にも大いに参考になると思うので、できるところからぜひ取り入れてみてください。

TikTokでは今後も「TikTok Japan Creator Academy」を通じて、未来のトップクリエイターを育成していきます。これからも開催したイベントの模様は随時noteで共有していきますので、どうぞお楽しみに!

禁無断転載

▼その他のインタビューはこちら


Twitterでも、TikTokに関する様々な情報を毎日発信しています。ぜひフォローしてください!