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「かわいい!」だけで伸びるほどTikTokは甘くない。2人のトップ美容クリエイターが辿り着いたコスメ動画の正解<やみちゃん・ありちゃん インタビュー>

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〈このリップがTikTokで取り上げられました!〉

最近、ドラッグストアの店頭でこんなPOPを見かけることはありませんか?

SNSや動画投稿サイトでおすすめの化粧品やメイクを紹介するコンテンツが増えた今、商品を購入する際にSNSをチェックするのは、消費者にとってすっかりスタンダードとなっています。

こうした動画を投稿する「コスメインフルエンサー」と呼ばれる人たちが、今TikTokでも絶大な影響を生んでいるのをご存知でしょうか。

@arichan_make

SNSでバズりすぎて入手困難の無印良品コスメ、皆はもう手に入れた🤔✨? #無印良品

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とはいえ、TikTokで投稿できる動画の長さは、最大3分。

商品の魅力を伝え尽くすには十分な時間とは言えないかもしれません。

が、それでも大きな人気を獲得できるのは、なぜなのでしょうか。

TikTokで人気のコスメインフルエンサー・やみちゃん(@ayami_yamichanありちゃん(@arichan_makeのお二人に、TikTokでコスメ動画で人気を獲得できた経緯と、そのコツをじっくり伺いました。

「めっちゃいい!」「さらさら〜!」は説明として足りない

まずはフォロワー数約55万人のやみちゃんに話を聞きました。

やみちゃん「私は芸能事務所でのタレント活動を経て、美容系メディアを運営する会社で働いていました。その2年間は、会社の業務のひとつとしてTikTokでコスメ動画をアップしていて。毎日更新していたので、動画の本数は600本を超えていると思います」

彼女の投稿は、商品解説は控えめのスタイル。

必要に応じて的確なコメントを交えつつ、基本的には映像でビフォーアフターを見せることで、コスメの魅力を伝えています。

@ayami_yamichan

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たとえば、アイシャドウを紹介したこちらの動画は、驚異の48万いいねを獲得。

色や質感もわかりやすく、見ているだけで使ってみたくなりますね。

やみちゃん「私はコスメの機能をプッシュするよりは、動画として楽しめることを重視しています。特にTikTokは自動的にコンテンツが流れてくるプラットフォームなので、見始めてから3秒で面白さが伝わるかどうかが大事です。冒頭で動きを出すことと、商品をしっかりと見せることは意識しています」

他の分野の人気クリエイターと同様、やはり冒頭の数秒には力を入れているそうです。

動画としての面白さにフォーカスしているやみちゃんですが、商品の魅力を伝えることを疎かにしているわけではありません。むしろ、並々ならないこだわりを持っています。

やみちゃん「大切なのは、視聴者さんが知りたいと思っている情報を提供すること。動画はいわば、プレゼントなんです。それが言葉でも映像でも、視聴者さんにプレゼントできるものは何かを考えないと、一度はバズったとしても長続きしないと思います」

やみちゃん「私の動画では、商品そのものの魅力はもちろんのこと、おすすめな人、ほかの商品との違い、美容の豆知識なども伝えるようにしています。それを怠って『めっちゃいい!』『さらさら〜!』のようにアバウトなことばかり言っていると、視聴者さんの役に立つ動画ではなくなってしまうんです」

伸びない動画には“愛情”が足りない

昨今ではコスメインフルエンサーが猛スピードで増えていますが、 “伸びる人”と“伸びない人”の差はどこにあるのでしょうか。

やみちゃん「伸びない動画の共通点として感じるのは、商品に対しても視聴者さんに対しても、愛情が足りないなと。コスメ紹介を通じて、自分の可愛さを売り出すような動画になっていることが珍しくありません」

やみちゃん「たとえば、『今回は“私の”使っているアイライナーを紹介します』とか、ファンにしかわからない話をしたりとか…。でも、それでは“私紹介”だけになってしまいます。自分ではなく商品を主語にして、初めて見る人でも楽しめるようにすることが大切です」

冒頭の0.5秒で何をするのか?

続いてありちゃん。

ありちゃん「私は新卒でコスメ・美容の総合サイト『@cosme』を運営する会社に入り、丸4年勤めていました。入社2年目くらいから趣味で美容の発信を始めて、入社3年目には会社公認の『社員インフルエンサー』に。2021年に独立し、現在はSNS発信1本で生計を立てています」

偶然にも美容系サービス会社を経由して独立していたお二人ですが、ありちゃんの動画の特徴はやみちゃんとはガラリと違います。

ありちゃんの動画で目を引くのは、冒頭で必ず「毎月の支出の半分をコスメに充てる女」というテロップが表示されること。その上で、コスメの紹介に入っていきます。

@arichan_make

コスメオタクが選ぶ買ってよかったデパコスリップ3選📣 #美容 #リップ

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ここにはどのような意図があるのでしょうか。

ありちゃん「TikTok内で美容の発信をされている方はたくさんいらっしゃる中で、自分の差別化ポイントは【とにかくたくさんのコスメを試している】ことだと定義したんです。なので、冒頭ではその事実を表す「毎月の支出の半分をコスメに充てる女」というコピーとともに、そのエビデンスとして大量のコスメを写すようにしています」

確かに、冒頭で大量のコスメが目に入ると、「この人の商品紹介なら聞いてみたい!」と期待感は高まりますね。その後の解説の説得力も増しそうです。

冒頭に隠された仕掛けは、それだけではありません。TikTokの特性を踏まえた工夫も施されていました。

ありちゃん「私はYouTube、Instagram、Twitterでも美容の発信をしているのですが、それらのプラットフォームとTikTokとの大きな違いは、受動的にコンテンツの中身が再生されること。ほかのプラットフォームでは、能動的にタップしてもらわないとそもそもコンテンツの中身に辿り着いてもらえませんが、TikTokは最初から一定の人にはコンテンツの中身を見てもらえるじゃないですか」

なるほど!TikTokはたしかにさっと上にスワイプするだけで動画が見れますよね!

ありちゃん「その分、最初の冒頭で感情を動かすことがすごく大事なので、動画の前半では視聴者さんが『おっ』となるようなコスメを優先的に紹介しています。たとえば、みんなが気になっている新作や、SNSで話題になっていた商品など。あとは、「〜って知っていましたか?」とか「皆さん、大ニュースです!」など、つい続きを聞きたくなるような言葉を冒頭に入れたりもします。どのタイミングでどんな言葉を使うかには、結構こだわっているつもりです」

こうして視聴者の興味を惹きつけたら、そこからはありちゃんの真骨頂。商品の魅力や使用感を、圧倒的な情報量で伝えていきます。

ありちゃん「TikTokでは、コスメ動画でも見ていて飽きないエンタメ要素がある動画が人気だなという印象があります。ですが、私の動画はエンタメ要素はほとんどいれず、『参考になる』『勉強になる』という領域で支持をしていただいているように感じています。とにかくたくさんのコスメを試して、本当に良かったコスメのみを紹介するというスタンスで発信をしていると、見てくださった視聴者さんがコメント欄で『それ本当に良いよね!』と共感してくださるんです。その結果、そのコスメが良いという裏付けが更に高まるので、コンテンツへの信憑性がさらに高まります。私のコンテンツは、コメント欄も含めて1つの価値になっていると思うので、そのためには皆が『良いよね!』と共感できるような質の良いコスメを見つけ続ける事が重要だと感じています」

実際、特にヒットしているのは、月終わりにアップする「今月買って良かったコスメ」の紹介動画。

視聴者にとってありちゃんが、信頼できる“審査員”になっていることが伺えます。

@arichan_make

コスメオタクの今月買って本当に良かったコスメまとめ📣 #コスメ

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動画にあえて「不完全さ」を残すワケ

コスメ動画を評価する上で、視聴者の購買意欲をどれだけ掻き立てられるかは、重要な指標のひとつです。

紹介したコスメを「自分も欲しい!」と思ってもらうために、お二人が工夫しているポイントなどはありますか?

ありちゃん「動画に“不完全さ”を残すことですね。『自分たちと同じ、消費者側のクリエイターが作っている動画なんだな』『コスメを使って思ったことをリアルに表現しているんだな』と感じられる動画づくりを意識しています。TikTokでは、企業のCMのように作り込まれた動画より、生っぽさのある動画のほうが相性は良いと思います」

ありちゃん「たとえば、単に『めっちゃいい!』とだけ伝えても参考にはなりませんが、最初に『めっちゃいい!』と友達っぽく話して、それから商品の解説に移る。タメ口を使ってみたり、商品を開封するところから動画に収めることもありますね。画質に関しても綺麗で見やすいのは大前提ですが、あえて一眼レフのカメラなどは使わないようにしています」

視聴者に親近感を与えることで、動画の内容を自分ごととして捉えやすくなるんですね。

これについては、やみちゃんも同意見。

やみちゃん「すべてがカチッと作り込まれた動画も魅力的ですし、私も商品の撮影にはこだわります。ただ、綺麗すぎても広告みたいになっちゃうので、構成や話し方で“崩す”ようにしています。画質は綺麗だけど、喋りはカッコつけない。そのバランス感が大事ですね」

さらにやみちゃんは、映像の切り替えからちょっとした言い回しまで、気を配るべきポイントは多岐にわたると話します。

やみちゃん「動画の動き、切り替えのタイミング、セリフ、アフレコ、すべてを意識しています。視聴者の心をつかむようなフレーズや、商品のどこをメインに伝えたら買いたくなるかも、常に考えていますね。また、最近は世の中にコスメが溢れすぎているので、どれを買うべきか混乱してしまう視聴者さんも多いはず。商品をたくさん使って、私なりに良かったものを紹介すれば、視聴者さんの背中を押すことにもつながると思っています」

美容インフルエンサーは“案件”といかに向き合うべきか?

また、人気のコスメインフルエンサーは、企業からPR動画の制作を依頼されることも多いです。

このような“企業案件”を受ける際に、お二人が気をつけていることはありますか?

ありちゃん「私のアカウントは信頼性が価値なので、案件は断る回数のほうが圧倒的に多いです。引き受けるとしても、過去に使用したことのあるブランドで、質が良いと既に分かっているものや、動画越しでも魅力を表現しやすいメイクアップ系が大半ですね」

ありちゃん「やはり『PR』のタグがつくだけで、視聴維持率は下がる傾向にあって。動画の見せ方は最大限、広告感をなくすように心がけています。企業からいただくオリエンシートなども参考にはしますが、一番は自分が使って感じたことを伝えていますね。また、メリットだけでなくデメリットも紹介するのは、案件であっても変わりません」

企業に忖度せず、普段と同じスタイルで投稿する。それが説得力につながり、結果的に商品の売上に寄与することは想像に難くありません。

一方でやみちゃんは、企業と視聴者がWIN-WINになることを目指しているとか。

やみちゃん「案件動画で紹介するのは、企業の作った大事な商品です。だからこそ、商品のことは徹底的に調べますね。成分や効果はもちろんのこと、会社の成り立ちや創業者まで見ていきます。すると、『あのコスメを広めた会社です』のように、視聴者さんに有益な豆知識を提供できることもあるんです」

やみちゃん「動画を作っているときに“購入してもらうこと”は考えません。ですが、商品を入念に調べてわかりやすく説明すれば、自分に合っていると感じて買ってくれる人も自然と増えていきます。結果的に、企業にも視聴者さんにも喜ばれる動画に仕上がっていたら嬉しいです」

次の美容インフルエンサーの活躍の舞台は…

最後にお二人は、今後の展望についても教えてくれました。

ありちゃん「私は今後、映像で魅せるタイプのショート動画も作れるようになりたくて。今の活動に注力しつつ、新しい魅せ方も積極的に取り入れられたらと思います。あとは、今まで以上にコスメを試す量を増やして、まだ埋もれている隠れた名品コスメをもっと発掘できるようなクリエイターになりたいです」

やみちゃん「私は人気商売ではなく、商品メインの発信に対して支持していただいていると思っています。だから、今後も“インフルエンサー”というよりは“クリエイター”として、コンテンツを通じて信用を集められる状態を守っていきたい。そして、視聴者さんにも企業にも喜ばれるような、思いやりと愛情のある動画を作り続けるのが目標です」

【クリエイタープロフィール】

やみちゃん (@ayami_yamichan

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TikTokで“美容動画がバズる”TikTokクリエイターとして話題のやみちゃんこと一色 あやみ。彼女がSNS内で紹介した美容アイテムは、ユーザーたちの即購入行動に繋がり、売り上げに直結すると、企業内では「SNS界のジャパネット」と言われるほど。 『TikTok AUDITION 2021 #おすすめ紹介部門』に美容系でただ一人入賞も果たした。業務提携:ミルクカートン

ありちゃん (@arichan_make

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日本大学在学中、ミス日本大学コンテストでグランプリを受賞。大学卒業後、@cosme社員の傍らインフルエンサーとしても情報発信。「毎月の支出の半分をコスメに充てる女」のキャッチフレーズで発信したコスメレビューシリーズの人気に火が付き、TikTokクリエイターにて2ヶ月で20万フォロワー獲得。2021年6月に@cosmeを退社し、TikTokクリエイターとして本格的に活動をスタート。業務提携:ミルクカートン

禁無断転載

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