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「魂がフルえる本」 その5 《すべては一つ — 『投影された宇宙』 マイケル・タルボット》

『投影された宇宙』は、1994年に発行された『ホログラフィック・ユニバース—時空を超える意識』を改題したもので、およそ30年前に出版されました。 私が手に取ったのは、10年、ひょっとすると15年くらい前かもしれません。 この本を読んだときの衝撃は相当なもので、自宅用のほか、お出かけ用に、すぐにもう一冊を買ったのを覚えています。 本文だけで400ページ以上ある分厚く重い本ですが、当時はいつもカバンに入れて持ち歩いていました。

今回、久しぶりに読み返しましたが、やっぱりフルえます!

「ホログラフィック・ユニバース」の「ホログラフィック」とは、紙幣などにも印刷され、玩具にもなっている、立体画像(技術)の「ホログラム」からきています。 ホログラムの特徴は、平面にある画像なのに、奥行きまで記録されていて立体的に見えることですが、実はもう一つ大きな特徴があります。 それは、ホログラムのフィルムを例えば半分に切り取ると、半分ずつの画像にはならずに、2つの完全な画像になることです。 (※残念ながら、自然光の中で立体的に見える一般商品では、この現象は起こらないそうです)これはつまり、「部分の中に全体の情報が含まれている」ということです。

アインシュタインの弟子で、量子物理学者のデイヴィッド・ボームと、スタンフォード大学の神経生理学者、カール・プリブラムという二人の科学者は、このようなホログラムの性質が、「この世界にある様々な現象を読み解く鍵になるやも・・」と考えました。 この本は、この二人の説を紹介しながら、著者であるマイケル・タルボット自身の超常的な実体験や、奇跡現象なども踏まえ、「この世界はひとつである」ということを、静かに、しかし熱く語りかけてくる本です。

古典的な科学は、あるシステム全体の状態を、ただ単にその各部分の相互作用の結果として考えるのがつねであった。しかし、量子ポテンシャルの考え方はこの観点を根底から覆し、各部分の動きとは、実は全体が決めているものであることを示している。これは、素粒子が別々の「もの」ではなく、分割不可能なシステムの一部であるというボーアの主張を更に一歩進めただけでなく、ある意味では全体性こそが部分よりも優先する一時的な現実である、と示唆しているのである。

「第2章 ホログラムとしての宇宙」より

カラダの動きや反応は、まさに「全体」と「部分」の相互作用であり、分けることはできないものなので、私はこの一文に大きく頷きました。

量子という「微少な世界のふるまい」と、身体など「堅く形ある世界のふるまい」では、一見、直接の繋がりはなさそうに感じますが、著者のタルボットさんは、超常現象を例に「そうでもなさそうだ」と続けます。

ホログラフィックモデルの有効性を示す証拠で最後にあげたいのは、超常現象そのものだ。これは見過ごしてはならないポイントである。というのも、いま私たちが持っている現実に関する理解、高校の科学の授業で習ったような、世界は堅固な物質で成り立っているという、あの一種の安心感をもたらしてくれる世界観はどうもまちがっているらしいことを示す証拠が、ここ数十年の間にかなり現れてきているのである。

「はじめに」より

時は18世紀のフランス。
カトリックの高徳な助祭、フランソワ・ド・パリが亡くなったとき、その信者でジャンセニストと呼ばれる人々は深く嘆き、やがて、自分でもコントロールできない異様な痙攣やひきつけを起こすようになりました。「痙攣行者」呼ばれるようになったこの信者たちが、驚異的な能力を発揮します。

実のところ、痙攣行者たちを傷つけることができるものなど何もないようであった。金属製の棒、鎖、あるいは材木などで叩こうが彼らは傷つかなかった。 最も屈強な男でさえ彼らを絞殺することは不可能だった。十字架に磔になりながら何の傷跡も残さないものもいた。最も想像を絶するのは、ナイフや剣、それに何と手斧でさえも彼らの体を刺したり、切ったりすることすらできなかったという事実だ!
   〜中略〜
先端を研いだ金属製のドリルがある痙攣行者の腹部に当てられ、ハンマーで「あたかも背骨を貫通し内臓を破裂させんばかりの」力で叩かれた例もあるという。しかしドリルは背骨も貫通せず内臓も破裂させることもなく、その痙攣行者は「完璧なる歓喜の表情」をたたえながらこう叫ぶのだった—「ああ、これは体にいい。勇気を持て、兄妹よ。できれば倍の力で打ってくれ!」

「第5章 奇跡がいっぱい」より

「超常現象」というのは、つまり、常なるを超えた現象ということです。
常とは、この場合、「私たちが常識的に考えて理解できること」であり、それを「超えた」現象が「超常現象」です。
常識では理解できないような出来事も、私たちにはまだ理解できないだけであって、その出来事が成立するのなら、それを成立させている、より大きな全体を統括する、未知のシステムがあるのではないか。そのように考えれば、常識を超えた「痙攣行者」の信じられない能力も、やがては理解可能な現象になるかもしれない。

ホログラフィックモデルは、そのひとつの可能性になり得る、と、タルボットさんはこの本で伝えたいのだと思います。

世界中の人々がスマートフォンを使い、何百キロも離れた相手の顔を見ながらおしゃべりをするなんて、ほんの20年前にはあり得なかったことが、現在、そうしようと思えば誰もが日常的におこなうことができるようになりました。

同じように、機械やそのテクノロジーに限らず、生身の人間の能力もまだまだ未知数であり、その可能性はどこまでも無限に拡がっている、と私は考えます。

「痙攣行者」のような強烈な現象を我が身で体現するとなると、さすがに・・・・・どうなんだろう?
なんにせよ、私は私として、和太鼓奏者として、佐藤健作という肉体の可能性を信じ、未知なる世界へと進み続けよう! そんな勇気をこの本は与えてくれます。

とにかくあまり怖がらずにいて欲しい。「水の恐怖」さえ克服してしまえば、量子物理学の不思議で魅惑的な考え方の海で泳ぐのは、思ったよりもずっと優しく感じられることだろう。じっくり考えてみれば、自分の世界観を変えてしまうような考え方もいくつかあるやもしれない。
実を言うと、この本にある様々な考え方が、読者諸兄諸姉の世界観を本当に変えてしまうことを私は願っている。

「はじめに」より
『投影された宇宙』— ホログラフィック・ユニヴァースへの招待
 著者 マイケル・タルボット
訳 川瀬勝
春秋社

マイケル・タルボット(Michael Talbot)
1954年、ミシガン州生まれ。ミシガン州立大学卒。幼い頃より超常現象を体験し、科学がなぜ超常現象を解明できないのかについて探究を続ける。『神秘思想と新物理学」『量子を超えて』『あなたの過去生:生まれ変わりハンドブック」などのノンフィクションの他、小説も3冊ある。1992年、ニューヨークで死去。

川瀬勝(かわせ・まさる)
会議通訳者、翻訳家、ヒプノセラピスト。ハワイ大学卒、慶応義塾大学大学院修士課程修了。国会議員秘書などを経て独立、各界要人の通訳を務める。モントレー国際研究大学翻訳通訳大学院での教授職ののち帰国。訳書にフリーク『気づきの扉」(サンマーク)、ハンコック「異次元の刻印」(バジリコ)、デラヴィ『地球巡礼者」(武田ランダムハウスジャパン)、キャディ『心の扉を開く』(日本数文社、共訳)、メイス『七つのチャクラ」(サンマーク)、ウィルソン『アトランティスの遺産』(角川春樹事務所)など。


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