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佐原チハル@趣味小説置き場
2015年5月11日 00:48
「お前のそういう柔軟性あるとこ、好きよ」ドタキャンも浮気も許した。許せる柔らかさが、彼の帰ってくる所以だと思っていた。上質なゴムのような俺は、けれどゴムなので、伸ばし続ければ萎び、劣化もする。ある朝弾け、切れて、戻ることをやめた。隣だと思っていた、掌の上。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月11日 00:39
昔、本をもらった。くれたのは憧れの、隣家のお兄さん。憧れは募り、本は本棚から消すことができないまま。20年後の今日僕は、彼が結婚し、妻子を連れて里帰りしてきていると知る。今日だ、と思った。彼の子に、この本を。笑顔でいられるようにと念じつつ、隣家へ向かう。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月10日 22:57
咥え込むような姿に欲情する。「ほら、お前も」と差し出され、初めてのそれを両手で包む。壊れ物のようにそっと。そして、口元へ。喉に甘い刺激。癖になる刺激。跡をひきながら離した唇の残滓を舐めとる。甘い。もはや、甘いばかりの。からん、とビー玉が小さく音を立てた。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月10日 22:51
なんであんな駄目な男に惚れたのかと不思議がられる。友人らには、やめておけ、と忠告もしてもらえている。けれど。「ざけんなこのクソゴミ野郎。きもい。無理。きもい」「あ…っ」軽蔑の冷たい目で睨まれ暴言を吐かれる度、下半身が疼く。そう、物事には、理由があるのだ。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月4日 17:33
「ほれ、飲め」寂れた住宅地の中にある、そこだけ陽だまりの落ちてきたような小さな庭で、緑茶を淹れてもらう。お茶の美味しさなんてわからなかったのに。パックのお茶なのに。ふいに涙がこみ上げる。50年後、60年後…老後までの約束を彼と交わせた奇跡が、静かに沁みて。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月4日 17:26
「好きだよ」どれくらい?「すごく好きだ」愛してる?「愛してる」どれくらい?「すごくすごく、すごく愛してる!」…語彙力のない彼が一生懸命に伝えてくれるのが嬉しくて、いつもつい、しつこく聞いてしまう。本当は別に、言葉なんか大して欲してないのにな。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月4日 17:20
デート経験のない俺に付きあい、練習させてくれた幼馴染の兄貴。「このことは、誰にも…弟さんにも言わないで欲しいんです」口元に指をあて、ウインクしてくれる。「利用者の秘密は守るよ」ワンコインでの指導。彼の弟さんを、幼馴染の彼を、どうか満足させられますように。※「図書館は、利用者の秘密を守る」…「図書館の自由に関する宣言」第3より #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年5月4日 17:08
教室内ではいつも地味な彼が叫ぶ。「そっちもっとしっかりおさえて!」初めてのお泊まりデートは、まさかのキャンプ。気に入りらしい「マイテント」をはらせる彼の姿は、室内のそれとは一変している。緑の中でこそ輝く人だったのだ。変態的に微笑む彼に惚れ直す、春の休日。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説