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佐原チハル@趣味小説置き場
2015年2月28日 20:45
「俺が急にいなくなっても心配しないでな。元気でやってっから」その言葉通り、彼が消えたのは翌日だった。卒業まであとひと月での失踪。「バカヤロー」とは思ったけれど、俺は冷静だった。恋人にはなれずとも、俺も確かに彼の特別になれていたのだ。それがわかって、満足だ。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月27日 18:33
本棚を見て妹が言う。「兄貴マジキモい…」本棚には、1人の読者モデルの掲載された女性誌がズラリと並んでいる。その眺めに鼻を高くして、またキモいと言われる。「彼女」が本当は「彼」だと言うこと。俺の彼だと言うこと。俺だけの秘密。鼻を高くするくらい、いいだろう。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月27日 08:06
高校はあと2ヶ月もせず卒業だし、今夜は気になっていた映画が放送される。彼も、あと少し待った方がいいと言っていた。それでももう、どうしようもない。この場所を出て、今日僕は遠い彼のもとへ。「さ、行くか」外はまだ肌寒い。清々しい、今の気分にピッタリだと思った。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月25日 21:47
最近では、夕方になると新聞売りがあらわれる。安い値段ではないのだが。「ジロジロ見てんなよ」睨みつけ荒い言葉を発していた「新聞」は、金を握らせた途端、耳障りのいい言葉を並べ、ベッドではイイ鳴き声を聴かせてもくれる。それはとても快感だ。今日もいい買い物ができた。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月24日 21:20
遠距離ったって、海を渡るわけでもなし。だからこそ「たとえ火の中水の中」なんて、軽く思えていたのだけれど。舗装もされていない、道無き道をひた走る。会うために、会うたびに、4時間も。「限度があるだろ!!」それでも毎週通ってしまうのだから、愛の力は素晴らしい。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月23日 21:50
日本一の山、と聞いて、もち上がった彼の股間を思い出す僕は、そろそろ末期だろうか。「もう1回キスしていい?」頷き、受け入れながら、彼の山頂に指をはわせる。彼の細長い指も同様に。「お前のでか! 富士山みてぇww」触れ合う2つの富士の山頂。雪が溶けて雫が溢れる。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月22日 22:00
目立つ赤のヘッドホン。隣にいてもお構いなしに、いつもその耳は塞がれている。返事だっていつも返って来ない。だから「俺さーお前に惚れてんだよねーもーどーしよーなー」呟くように言ったのに「知ってたよ」なんてニヤリと言われたら、本当に俺はどうしたらいいんだろうな。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月21日 23:10
「寝坊しかけた」「バイトが忙しくてクタクタ」「コロッケで舌を火傷した」「課題の評価がよかった」平日4日分の、返信すらない小さなニュース。けれど。「明日行くね」金曜に送るこのメールにだけはレスがつく。「待ってる、気をつけて」僕の毎週の一大ニュースだ。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月20日 18:05
「雄と雌とで番わないなんて不自然」「同性愛行動をとる生物は自然界にもたくさんいるよ」と笑う彼。「子を作らないのは罪」「産む性じゃない僕らの言えたことじゃないね」「全人類がそうなったら世界が滅ぶ」敵うわけない抵抗に彼が笑う。抗う気が無いことももうバレている。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月19日 18:05
冬は寒いし、空腹だと悲しいし、ピンクのエプロンは男の僕には似合わない。それが当然と思っていた、けれど。常識に固まった僕は今夜もひっくり返されて。冬でもあなたの隣は暖かいし、お腹が空けば一緒に食べるのが楽しみだし、筋肉質のあなたはピンクのエプロンもよく似合うんだ。*今日は、地動説を唱えたコペルニクスの誕生日です。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月18日 18:21
髪から、服から、自分から漂う煙草のにおいに嫌悪感がわいた。キスは煙を吹き込まれるような心地になるから不快だ。それでも家に帰り、シャワーを浴びてスッキリしてしまえば、あのにおいに包まれていた感覚を思い出したくて、洗濯前の服に顔を埋めたりする。嫌いだ、こんなもの。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月17日 17:44
「ひとりでにそんなになるなんて、大概だね」「そこ、そんなにしていいって許可した覚えはないんだけれど」「気持ち悪い」絶え絶えの呼吸で謝るけれど「誰が喋っていいって言ったの?」喉奥まで指を突き込まれ言葉を奪われる。甘い声で囁かれ、僕の先端からは涙が溢れる。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月16日 20:23
限りなく自分を透明にして、目立たず、隣にいても体力を使わせない。存在感のなさが僕のウリ。「一緒にいておもしろくないとか言われない?」そんなことないよ、とだけ笑って答えた。だってあの癖の強い、派手な太陽みたいな男の隣は、きっと僕のような男だからこそ似合うんだ。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説
2015年2月14日 20:24
「これ、どうぞ」「ネクタイか! 高かっただろ?」そうでもない、ことは言わない。「しかしこれ、首輪みたいでまだ慣れなくてなぁ」「社会人なんだから我慢しなよ」そう笑って答えるけど、会社ではなく僕への、鎖の変わりなのだということも言わない。絶対に言わないんだ。 #記念日BL #小説 #短編小説 #超短篇小説