
片岡『いつかあなたに逢えたなら』読了(BL小説)
普段「これ読み終わったよ! おもしろかった!」というのは、つぶやきの形で一応記録しています。
いるのですが表題のこちらの作品、そうしてひと言で、140字であらわすには少し、いえあまりにも言葉が足りないように思い、こちらに書きます。
再読して、ちゃんと感想が言葉になったらもっとしっかりした記事の形にしようと思うのですが、いったん読みながらしていたツイートを羅列させます。
下手なまとめブログみたいな粗悪さでごめんなさい。
こんな記事をあげるのは、さすがにはじめて。
でもまだちょっと、気持ちの整理がつかないのです。
少し前にジャケ買いしたBL小説を読んでいる。震えながら読んでいる。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
あらすじは確認していた。その設定が陳腐な要素として使われていたり、地雷である可能性も覚悟はしていた。
震えている。
まだどうなるかわからない。でも、それを知る人ならきっとはじめから見えているだろう空気が流れている。
傑作かもしれない
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
読了した。苦しい。ハピエンである。リアルであり、ファンタジーでもある。読みながら指先が冷たくなっていた。生理的なレベルかもしれないが涙が出た。傑作か否か、受けの性格もストーリー展開もあまりにも都合が良く、しかしそう腹ただしく感じないのは、誠意が見えるから。変化の先の自由への恐怖。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
この作者さんの他の作品も読みたい、読み尽くしたいのだが、なんとこれがデビュー作だという。読み尽くしだん である。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
変化の先の自由への恐怖。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
踏みにじられた尊厳のまま閉じ込められている、全てが終わり本来なら腐っているはずのそこに身を置き続けることの方が、怖くない。
変化は、ときに耐えられないほどの恐怖だから身が竦む。
変化と「先」を知るまでの、喉奥に泥を詰め込まれるような葛藤。
少し時間をあけて、もう一度読み込みたい。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
ここでオープンにおすすめしにくい。でも生まれて初めて、hontoサイトでレビューを書こうと思う。辿り着いた人が、この作品とうまく出会ったり出会わなかったりできますように。
私はたぶん大切にする。
別の作品で、いつか彼が人になった姿を垣間見たいな。
受けにとって、最初からずっとあった地獄が彼を殺す類のものである一方、この先の彼を待つのは生き地獄なのだよな。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
そういう地獄と一緒に、でもそうしてやっと人間として生きるようになった姿を描くのは、漫画なら羅川真里茂さんや麻生ミツ晃さんが思い浮かぶのだが……
この作者さんは書かないかもしれない。マイナスがやっとゼロになる、そのことには大きな価値も喜びもあり、言祝ぎを贈るものであり、意味あることだ。花咲く春のような。春を描く作家さんなのかもしれないし。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
でも私、この方の描く生き地獄が見たいな……その先でどう呼吸できるようになるのか。
受けの献身、あれは突き詰めればエゴである。しかしそれがいい。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
攻めはクズだが、悪いやつではない。し、受けがあんなにも献身的なままなのに完全に尻に敷かれているので、今後も翻弄されまくりだろうな。ちょうどいいのかもしれない。
攻めくん、だってさぁ受けくんに絶対に返しきれないじゃん。受けくんにもらった・もらっているあまりにも大きなものに、同じものを返せると思えないんだよな。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
だって受けくん、もう一生分貰い済みですってきっと思っている。攻めくんの苦労が偲ばれるが、せいぜい苦労しまくれよ、と思う。幸。
受けくん、考えることをやめない子なのだよな。無機物になることを覚え、でもあんな些細な救いを手に入れてしまったから、無機物ではいられなくなってしまった。
— 春 (@tiharu4happy) April 13, 2020
考えることをやめない人、私は大好き。
ここまで書いておいてなんですが、この作品に対しての私の評価、かなり甘々かもしれない。
しかしクズ(め)攻め×健気受けというカップリングが大して好きではないはずの私がなぜこんなにも震えたのか……。
ところで、表紙・挿し絵はyocoさん。
この作品で、BLアワードにて表紙デザイン賞を受賞しています。
もともとジャケ買いだったので「わかるー! いいよねー!」と思ってはいたのですが、読み終えてから返ってくると、なんてぴったりな表紙なのだろうと感動します。
ほんとうに素晴らしい表紙です。
はぁ……はやく再読しよう。
追記;レビューを書きました
以下に転記します。
ジャケットに一目惚れして購入した。BLアワードで表紙デザイン賞を受賞したらしい。それも納得の美しさ。
作品は、いわゆる「(最初はソフトな)クズ攻め×健気受け」。よくあるパターンだし、受けの設定の不幸さも、BL世界なら王道と言えば王道。
しかし、しかし。
終盤のご都合主義を否定できないくらい、綺麗にととのえ作られた良作だったと思う。
設定は王道だが、誠実さが並外れている。
酷さをポルノに使わない。「持つと持たぬと」の間にある溝の深さを、柔らかな言葉でも逃げずに見据える。
受けの健気な献身は美しいが、よくよく考えればエゴである。そして受け自身も、自分のそれがエゴであるとわかっている。エゴという言葉や概念を知らなかったとしても。
それが、とても清々しい。
攻めのクズさも、少しずつ感化され氷解していく。受けは自己評価が低いまま攻めを翻弄させるし、攻めの与える愛情を受け取るのがあまり上手ではないから、攻めは湯水のように愛情を与え続けなければきっと、攻め自身が満足も安心もできない。慢心なんて絶対にむり。
クズにはいい呪いだと思う。いつまでも愛情いっぱいでいて欲しい。
そう、本書は綺麗なハッピーエンドなのだ。
ご都合主義、結構。
命を削る雨はやさしく静かに降るし、その滴は庭の花木を芽吹かせ生き返らせる。
残酷さを残酷なまま上質なシルクでくるんで、やわらかく提示されてしまった。読者の私たちは、極上の質感にうっとりとしながら呻くしかない。
繰り返すが、ハピエンである。だから大丈夫。
なお、構成も見事である。
視点が切り替わるが、整理されているので混乱しない。
映画のように、このささやかで美しい世界に引き込んでくれる冒頭のシーンは、中盤に形を変えて挿入され、視界が広がりクリアになる。
並行して走っていたライン、点在していたモチーフがひとつに収束してラストシーンへの明快な道筋になる。
構成まで美しい。見事だ。
そうして読み終えて表紙にかえってくると、気づくのだ。この表紙が、いかに秀逸なデザインであるかということに。
この表紙の1枚絵は、間違いなく、この物語を完璧に表現している。
この表紙に惹かれた人は、せっかくなので一読してみて欲しい。きっとこの物語を必要としている人もいるだろう。
私はこの作者さんが描くこの物語の続き、
甘く、残酷に支配されたしあわせな生き地獄を、ぜひ読んでみたい。
それではいったん、以上です。
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