神は細部に宿る
「神は細部に宿る」という言葉があります。ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが残したとされる言葉で、細部へのこだわりが作品の完成度を大きく左右し、そこにこそ真の価値が生まれるという意味です。
この言葉の大切なポイントは次の3点です。
1. 細かい部分までこだわり抜くことで、全体としての完成度が高まる。
2. ディテール(細部)にこだわった丁寧な作品には作者の強い思いが込められており、まるで神が命を宿したかのごとく不朽の作品として生き続ける。
3. 細かな部分まで気を配らなければいけない。これで作品の本質が決まる。
経営活動においても、この言葉は重要な教訓となります。戦略に基づき、自社の顧客を明確化し、その顧客から絶大な支持と満足を得て、競合との差別化を図るためには、製品やサービスの細部にまで気を配り、徹底的に磨き上げることが不可欠です。
ブランディングを行い、広告活動でお客に発信する際にも、例えば顧客接点となるウェブサイトのデザイン、店舗の清潔さ、従業員の対応など、細部にまで気を配り、それらを仕組み化して顧客体験を向上させ、満足度を高めることが重要です。
社長は、「お客の満足度を高めよう」と声高に訴える一方で、現実は伴っていないケースがあります。例えば、メールなどの文章作成において、相手が読みやすいように改行位置を適切にしたり、英数字を半角にしたりするなど、細部にまで気を配る必要があります。
看板、名刺、提案資料、チラシなど、ブランドからアウトプットしたあらゆる広告媒体においても同様に美しくある配慮が必要です。
「お客と知り合い、使っていただき、続けてもらう」という顧客との関係構築のプロセスにおいても、客層戦略によって設定した顧客に応じて、例えば、過度なサプライズ体験よりも一つ一つの接客が丁寧かつ美しく行われているかどうかが重要です。ファンになってほしい顧客に響くかどうかが、ここに繋がります。
多くの中小企業では、このようなディテール(細部)へのこだわりが不足していると感じることが多々あります。残念ながら美しくないのです。細部を疎かにすると、ブランド構築が難しくなり、競合他社との差別化も困難となるのは必定です。
細部へのこだわりは、短期的な利益には直接結びつかないかもしれません。しかし、長期的な視点で見れば、企業のブランドイメージ向上、顧客ロイヤリティの向上、そして持続的な成長に大きく貢献します。更には企業の姿勢や価値観を反映するものであり、顧客は細部にまで気を配られた製品やサービスを通じて、企業の誠実さやプロ意識を感じ取り信頼を深めます。
中小企業の経営現場では、経営をデザインする専門人材が不足していることが多いのが現状です。このような場合、デザインについて少し知識があるからといって社員に任せるのではなく、戦略を熟知した外部のプロフェッショナルに依頼することが賢明です。なぜなら、顧客は細部まで見抜く鋭い目を持ち、「神」のように見つめているからです。