UP:退社時間には絶対帰るスタッフたちには理由あり #002
夫は日本で数年働いた後、どうしてもフィリピンに戻りたくて、今の職場に復帰した。日本で修士・博士課程、助手としての大学勤務経験を通じて、彼はすっかり日本の働き方に馴染んでしまっていた。つまり、退社時刻はあってないようなもので、上司がいれば残業するのに何の違和感もなく働いていた。
フィリピンに戻った後、退社時刻になっても、もちろん帰ったりはしない。
が、彼のオフィスのスタッフたちは皆、退社時刻になると、きっかり家路に着くのだ。最初は何も気にしてなかったが、数週間後、仲良くなったスタッフに理由を聞いてみた。
「このオフィスの3階に何かがいる。暗くなると、誰もいないのに物音がしたり、窓からホワイトレディー(White Lady)を見かけた人もいます。だから、2階と3階の階段の踊り場にマリア像が置いているんですよ」
と教えてくれたらしい。
実際にそのオフィスビルは、3階建なのだが、3階は誰も使用していなかった。
怪異の原因は、第二次世界大戦中、国立フィリピン大学(University of the Philippines、UP)のDiliman(ディリマン)キャンパスは、旧日本帝国軍に占領されており、捕虜達の骨が多数埋まっているらしい。無念の死を遂げた人たちの霊がそうさせている、と。
これが事実かどうかは確認できなったが、当時、旧日本帝国軍に占領されていたのは確かなようだ。
Benitez Hall(現教育学部)、Malcolm Hall(現法学部)、経営学部の3つの校舎が占領され、兵舎や司令部など、さまざまな軍事目的で日本軍に使用されていたそうだ。ただし、強制収容所や抑留所はUPにはなかったらしい。
夫は、UPキャンパス内の他のオフィスでも働いているのだが、そこのオフィスにもホワイトレディーを見かけるらしい。そのオフィスのガードマンも何度も見た、と言っている、と。
幽霊・オカルトなど一切信じない彼は、
「何か見間違えただけなんじゃない」
とサラリとながしているが、この手の話は、他のUPを卒業した義妹や元同僚、UPで働く友人からもよく聞く。
どこまで信じるかどうかは、自分次第。
だが!、だけど、UPキャンパス内の街灯がない漆黒の闇、何かが潜んでいてもおかしくないような暗闇を見たことがあれば、何か見間違えた、とはなかなか思えない私です(汗)