カシマスタジアムで感じた、鹿島アントラーズが愛される理由<2>
・前回のあらすじ
以前は過去の因縁から、あまり良い想いを抱いていなかった日本を代表するクラブ、鹿島アントラーズ。
しかし、年月の経過と鹿島にかかわりのある人たちの出会いを経て、自分の考えも少しずつ変わっていった。
そんな中、空いた日に鹿島VS川崎というビッグカードが開催されると知り、ワクワクした気持ちでカシマサッカースタジアムに乗り込むことになった私を待っていたのは、驚きの光景だった・・・。
・意外とフレンドリーな空間
今回、自分はバックスタンドで観戦しました。サッカーを「観戦」というより「応援」という感じで行くことがほとんどである自分にとって、バクスタで見るのは高校サッカー以来。プロの試合では本当に久しぶりのことでした。ヴェルディの試合ではバクスタに来る人はそこまで多くは無く、のんびりした感じで応援したい人や、どちらのサポーターでもない第三者の方が野次馬的に来るケースがほとんどです。そんな感じなので、J1クラブのバクスタってどんな感じになっているのか観察してみることにみました。
率直な感想は「意外とフレンドリーじゃん」ということ。フロンターレのユニフォームを着ている人も普通に混じり、スタグルを探したりしていました。
あとは、ほとんどの人がユニを着用しているということ。第三者的な感じで来る人ってそんなに多くはないんですかね。もっとも、私もこの前のマリノスvs神戸はガッツリプレゼントユニを着ていましたが笑
ここで、以前のネガティブなイメージは改めないといけないと感じました。やはりビッグクラブ、のんびり応援を楽しみたい人や他サポさんとも気軽に交流したい人たちが、これまで一定多数いるんだと。
ただ、しっかりと線引きされている部分もあります。ご存知の人は多いかな、そうアウェイ席の扱いについてです。
・裏技「スタグル密輸」
カシマスタジアムといえば、「肉祭り」とも称される肉料理をメインにした豊富なスタグルの屋台が豊富なことで有名です。
おなじみのモツ煮に加え、ハム焼き、ハラミ丼・・・。食欲をそそられるメニューがそこかしこでお客様を待っています。
ただ、その恩恵を受けられるのは主に鹿島のサポーター、およびバクスタやメインに来る人たち。
トラブルを避けるために、ビジター(アウェイ)席はそもそも入り口が間然に別であることはもちろん、それだけではなく面したメインとバックのスタンド席と直接繋がる通路は柵で区切られて警備員が見張っており、一切通り抜けはできなくなっています。
もちろんビジター席にも屋台はあるようですが、数は少ないです。しかしせっかくカシマに来たからにはおいしいもの食べたい!というアウェイサポさんが使う裏技が「密輸」というやり方です。
これはアウェイとメインスタンド、バックスタンドを隔てている柵(メインは赤い柵、バックは銀色の柵です)の下にスペースが空いており、そのスペースから物が出し入れできるようになっています。
この柵の部分から、バックスタンドにいる友人の鹿島サポやバックスタンドで見ている仲間のサポにお願いをし、お金と引き換えにスタグルを受け取るのを「密輸」と呼ぶのです。
今回、twitterで何度かお話していたヴェルディとフロンターレのサポを兼任されている方に「ハラミ丼」を密輸させていただきました。
・日本トップクラスの臨場感
そんなこんなでスタグルも渡し終えて、ようやく腰を落ち着けて観戦することに(キャップが持ち込みできないので苦労しました。階段をハラミ丼をもっておそるおそる登っていた時に「ハラミ丼ってあれじゃない?」と声かけたギャルサポさん、聞こえてるよ笑)いろいろバタバタしたけど、席にたどり着くとそこからの景色は素晴らしいもの。
サッカースタジアム日本最高峰と言われているその臨場感は伊達じゃない。傾斜がちょっと緩いけど、全然気にならない。この距離からでも選手がはっきり見えるのはすごい。
そしてバクスタの人たちも、ほとんどのお客さんがユニフォームを着てタオマフを回し、手拍子をしている。電車の時もそうでしたが、本当にこの地域にはサッカー、特に鹿島アントラーズというクラブが値付いているんだなと実感しました。
・終わった後の充実感
試合は記憶に新しいように、川崎フロンターレが2-0で勝利。開幕戦から10数試合無敗だった鹿島に、見事ホームで土をつけたのでした。
私が見に来た試合でたまたま、ほぼ勝つか引き分けになる姿しか見てこなかったはずのサポーター、お客さんたちに負けを見せてしまって、ただの偶然だろうとは思いますが、申し訳ない気分になりました。
どこか中立で見ながらも、過去の因縁や密輸したサポさんの喜んでいる顔を見て、川崎に肩入れしている部分もあったのかもしれません。
しかし、少なくともあそこで試合を見るうちに、私が以前抱いていた鹿島への憎しみの感情は無くなりました。
地域に密着し、歴史を大事にしている素晴らしいクラブだからこそ、これだけ多くの人が、かつては辺境の地でしかなかったこの場所に、毎度足を運んでいる。
地方クラブだけでなく、ビッグクラブにも多くの人が支え、作り上げてきた文化がある。
かつて16年前、今は亡き旧国立でヴェルディサポーターとして鹿島と戦った時は憎い敵としか思っていませんでした。
次戦うのは再来年か、それとももっと先か、はたまた来年なんらかの形で戦うことになるのかわからないけれど、次は敵ではなく、良きライバルとしてここに出向き、勝利を勝ち取りたい。
そんなことを思いつつ、帰りの電車に向かう鹿島の空は、澄んだ夕暮れでした。
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