パレスチナの映画監督、ハンナ・アタラさんにインタビューしました!
皆さんこんにちは!学生応援団のわくとです。
今回は、パレスチナの映画監督であり、現在でもパレスチナのガザ地区で子ども向けの映画上映活動を行っているハンナ・アタラさんへのインタビューの様子をお届けします。
ハンナ・アタラさんの経歴
まず、ハンナさんの経歴を簡単にご説明します。
ハンナさんは、ベルリンとエルサレムを拠点に活動する映画監督であり、フィクションとドキュメンタリーの両方の映画制作プロジェクトに携わる。
また、プロとしてのキャリアを通じ、声なき声に力を与えることを目指しており、2014年にパレスチナ自治区のラマッラーにて非営利組織 “Filmlab: Palestine” という、パレスチナの映画文化を向上させるためのプラットフォームを設立しました。
さらに、ヨルダンのタルビヤ難民キャンプにおける、パレスチナの若い世代と高齢世代の難民の間で知識を共有するプロジェクト "the Palestinian Memory Documentation Project"の発起人でもあります。
(引用元:https://aiff.jo/team/hanna-atallah/)
今回ハンナさんは、東京国際映画祭と国立映画アーカイブの共催イベントである「TIFF映画国際教育シンポジウム」(11/2開催※終了)のゲストとして来日されました。
今年の「TIFF映画国際教育シンポジウム」では、《世界のこどもたちが映画を待っている》をテーマに、戦争や貧困、難民などさまざまな社会状況の中で困難にさらされているこどもたちに向き合って映画教育を実践している方々をお迎えし、映画ができることや、映画教育の可能性について議論が交わされました。
(イベントページ⇒https://www2.nfaj.go.jp/exhibition/eigakyoshitsu2024/)
ハンナ・アタラさんにインタビュー!
-現在のガザ地区では、どのような映画の上映活動を行っているのでしょうか?
私たちは"Next Generation Program"という、パレスチナの子どもたちに映画を届ける活動をしていますが、まず知ってほしいことは、現在のジェノサイドが起こる前から殺戮は起きていて、そんな状況下でも、私たちはこの活動を続けていた、ということです。
現在は、難民キャンプに避難している人たちから観たい映画の希望を聞き、オンラインのプラットフォーム上から上映する映画を選定します。
映画を決める時は、いつ危険な状況になるか分からず、長編映画を観る余裕はないため、短編を選びます。また、子どもたちが少しでも多くの希望を持てるような、子ども映画を選ぶことが多いです。
-今回の東京国際映画祭では、どのような映画をご覧になりましたか?
今回は3~4日しか日本に滞在できないので、多くの作品を観ることはできませんでしたが、特に印象的だったのは、『TIFFティーンズ映画教室』(※)で上映された、日本の中学生たちが作った映画でした。
3作品が上映されたのですが、才能のある子どもたちの、良いアイディアに溢れた素晴らしい作品ばかりでした。
また、映画教室のメイキング映像も上映されたのですが、子どもたちが真剣に映画を作る様子を、大人たちが極力手出し口出しせず、見守っていたのがとても素晴らしかったです。
日本の中学生たちが作った映画は、パレスチナでも伝わるはずです。
※TIFFティーンズ映画教室とは…
若い映画ファン・映像作家の創出を目的に設立されたTIFFユース部門の特別企画として、特別講師に西川美和監督を迎え、2024年8月に実施された中学生向けの映画制作ワークショップ。
(詳細はこちら⇒https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37009YUT05)
-現在もガザ地区は大変困難な状況に直面していますが、そんな中でも、子どもたちが映画を観ること、そして作ることの意義はどのようなところにありますか。
私は、映画にはマジックがあると思っています。
映画を通していろんな世界が見えてきて、自分ではない他者の物語を知ることで、心が動かされることがあります。
それこそまさに映画の力であり、私は映画が持つ力を信じています。
また、パレスチナ人以外の人たちがパレスチナを題材にした物語を作る時、パレスチナ人を「かわいそう」や「ヒーロー」のようなステレオタイプに当てはめることがあります。
パレスチナ人である私には、そのような物語に抵抗感があり、同時に、私たち自身が自らの物語を伝えることが重要だと思っています。
それを伝える方法として映画があり、映画を通して、私たちの思いを次世代に届けていきたいです。
このような状況でもパレスチナで面白い映画はたくさん作られていて、例えば、21歳のパレスチナ人が作った映画で、人生で初めて海を観にいく、という映画があります。
主人公は、実は海まで10分ほどの距離にある場所に住んでいるのですが、岸を隔てる分離壁があるため、これまでずっと海を観たことがありませんでした。そんな彼女が初めて海を見る瞬間を描いた映画で、とても素晴らしいので皆さんにも観てほしいです。
また、最近ガザ地区で作られた映画で、若い女性がアメリカへ留学することが決まったものの、どのようにして国から出るかという問題に直面し、夢をかなえるために小さな抵抗をしていく、という物語があります。
これらは、皆さんにとっては当たり前にできていることかもしれませんが、普通のことが制限されていることを、少しでも知ってもらいたいです。
インタビューを終えて
ハンナさんは、お忙しい中にも関わらず、私たち学生の言葉に真摯に耳を傾け、丁寧に思いを伝えてくれていて、穏やかな人柄がうかがえました。
また、ハンナさんの言葉の中にもありましたが、私自身も、映画の持つ力の大きさを改めて実感しました。映画は、自分以外の誰かの物語を教えてくれますし、映画を通して、ハンナさんとの心のつながりが生まれました。
(13期わくと)
映画を見るという行為は、他者への想像力を育てる行為だと思います。ニュースや新聞で報道される「遠くで起こっている出来事」も、映画であれば、彼らの視点から、彼らの文脈で物語ることができます。その物語から、それを受け取る自分自身の無自覚さを自覚し、他者へ思いを巡らせることが重要であると感じました。(14期ゆか)
今回の記事を通じて、少しでもパレスチナの現状を知ってもらえれば幸いです。
ハンナさんが、他の場所でも元気に過ごされていることを心から願っています。インタビューさせていただきありがとうございました!
最後までお読みいただきありがとうございました。
↓↓↓学生応援団の他SNSもぜひチェックしてください!↓↓↓