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『Mystic Place -Mountain Scenery of Ceramics-』 発刊に寄せて

陶芸家・高田尚紀はその世界では極めてユニークな存在である。
彼の作品を見れば、その独自性はひと目で見て取れる。

まず彼は一般的な茶器のみを制作するクリエイターではない。彼の本領はそのモチーフであるマウンテン・ランドスケープである。

荒涼とした山肌、屹立する鋭い山陵。そして独特の色彩。
彼はいわば山岳陶芸家と呼んでもいい。


撮影(すべて) / 持城壮

幼い頃に見た記憶が原風景となる

高田の父は登山愛好家であった。
父は幼い高田を連れてよく日本アルプスの山々を歩いた。
その光景のインパクトが高田の原風景として息づいている。

高田は後に陶芸家となるが、その陶芸の技術を用いて、彼の愛する日本アルプスの雄大な姿を再現した。
その作品はインスタグラムなどで公開され、多くのファンを作った。特に、欧米の愛好家から大きな支持を得ている。

山岳に存在する架空の理想郷

子供時代に見た山岳、そして大人になってから歩いた山岳の数々。
彼はその記憶からある理想郷を創り出した。
その理想郷を記録した作品集が本書籍『Mystic Place -Mountain Scenery of Ceramics-』(TIDY刊)である。
本書は日本アルプスを登山する主人公(著者)が山腹のとあるゲートをくぐったところから、夢想する山の奥深くに踏み入り、ついには彼が思い描いた理想の地である、山上湖に到達する過程を陶芸作品として仕上げたものである。


山上湖はあくまでも空想の湖である。
空想であるがゆえに、そこに湛えられた湖水のブルーの独特の彩色が心に響く。
深く深遠でありながらどことなく切ない。
これが彼の到達地点であり、現時点で彼が追求した美のひとつの到達点だ。

陶芸を愛し、山岳を愛する高田の旅はなおも続く。
山上湖に至った彼が次に踏破する世界を心待ちにしたい。


Mystic Place -Mountain Scenery of Ceramics-
(TIDY Publishing)


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