大谷石と建築家の巨匠
RPGダンジョンのような幻想的な地下空間! そんな口コミでSNSを中心に話題になっている場所がある。栃木県宇都宮市にある大谷資料館という場所だ
大谷採石場
ここで石を本格的に採掘しはじめたのは江戸時代の中期ごろ。それから戦後に至るまで機械化されることなく手堀りで作業が行われていた。ツルハシで石を砕いて、それを人が背負って外に運んでいく。当時の労働者の負担たるや・・・。
そういった苦難を感じさせる展示もあるかと思えば、観光客を呼び込む為の工夫なのか、オブジェだったり、キラキラ輝く照明、プロジェクションマッピングなんかがあちこちできらめく、なんとも不思議な光景が広がっていた。照明の色がきつくて、石そのものを見せる展示にはなっていない。その辺を期待して行った人はどこか肩透かしをくらうだろう。
せっかく綺麗な大谷石が見れる場所だから、石の質感がわかるような落ち着いた明かりで良いんじゃないだろうか。
アーティストのプロモーションビデオやドラマ、映画のロケ地としても良く使われるらしく、ロケ地巡りに来た人に向けた施設という印象だった。
大谷石でつくられた鉢 多肉植物との相性がかわいらしい
大谷石ってどんな石かというと火山灰が堆積してできた凝灰岩。中でも大谷一帯で採れるものは全体的に緑がかっていてきれいな色をしている。
写真はお土産で買った大谷石の鉢。質感が分かりやすいと思って載せてみた。
採石場となりにあるショップ 大谷石の鉢もここで買える
建築家フランク・ロイド・ライトについてはひっそり触れているだけだった
世界三大建築家の一人とも言いわれる建築界の巨匠、フランクロイドライト。彼は大正時代に日本を訪れいくつかの作品を残し、同時に師匠として日本人建築家を育てている。そんなライトが好んで使っていた石がこの辺り一帯で採れる大谷石だった。
僕が今回訪れたのは、あのライトが使った大谷石を見たい!との一心から。ところが、さきほども書いたようにこの場所は基本的にロケ地推しでやっているスタイルで、ライトについては館内入口のすみっこでさらりと触れられているだけだった。これはちょっと寂しい。世界的建築家が認めた石!みたいにどうどうとアピールしてもいいくらいなのに。
写真に写っているのはライトの代表作 旧帝国ホテル
展示されていたパンフレットに小さく映るのが帝国ホテル。大正時代に東京、日比谷に建てられた国際的なホテルだ。今は正面玄関部分だけが愛知県にある建築博物館、明治村に移築されている。
何年も前に中に入ったことがあって、繊細な装飾と石の温かさ、隙間から差し込む外部からの光にため息がでるほどの美しさを感じたのは今でも忘れられない。僕の一押しの建築だ。
館内で石について尋ねると、館長が対応してくださった。この時はじめて知ったんだけど、ライトが使ったのは正確にはこの大谷採石場から切り出された石ではなかったらしい。少し離れたところの山から取れる粗目の石とのこと。石の目が取れる場所でいろいろと変わってくることも教わった。
雰囲気推しの現場と、解説にこだわる無骨な資料館。なんともギャップにあふれたところが面白かった。
建築に興味がある人も、そうでない人も、どこかで楽しめるポイントがあると思う。そんな客層幅広い観光地だった。
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