SUF Ep.15 “Mr.Universe(ミスター・ユニバース)“

Greg
ほら スティーブン
ディナーだぞ

アイスクリーム・ア・
ラ・パイだ

Steven
ありがと パパ

Greg
少しは良くなったか

膨らんだりは
落ち着いたみたいだが


今すぐ食べなくてもいい

Steven
ごめん 
ちょっと考え事してて

Greg
考え事って?

Steven
自分がママじゃないんだって
分かるまで随分掛かったよね

今は僕は僕だって知ってる

でもじゃあ一体僕って誰なの?

自分が何したらいいのかを
知りたい

Greg
それはパパにもわかるぞ

Steven
ほんと?

Greg
パパもお前くらいのころは

自分が誰なのか 何をしたいのかも
わかってなかった

Steven
ずっとロックスターに
なりたかったんじゃないの?

Greg
まさか

16になるまで音楽には
触れたこともなかった

車を買って初めて
外の世界を知ったのさ

旅に出て全てが変わった

確かに お前は他の星を
見て来たかもしれないが

ウェストキーストーンも
チャームシティも知らないだろ?

パパはあの時代を通して
今のパパになった

SAでサンドイッチを食べながら
車が行き交うのを眺めてな


Steven
へえ

Greg
お前も景色を
変えてみたらどうだ

自分を見つけたいなら
まずは探し始めないと

Steven
だね そうだね!

Greg
行くぞ 息子よ!
今すぐだ!

Steven
本気?

Greg
道がお前を呼んでる
聞こえないか?

Steven
だね
聞こえる気がする




ねえ パパ
覚えてる?

いつかの歌を
もう一度

ねえパパ
覚えてる?

肩車は
もう無理かな

ねえパパ
今思うんだ

成長しても
日々は過ぎてく

ねえパパ 覚えていて
世界中にパパは一人

ただ一人〜♪


Greg
2ブロックくらい先のとこで
初めて演奏したんだ

Steven
そうなの?

Greg
まだミスター・ユニバース
でさえなかった

ただのギター持った子供さ

土曜日に家から抜け出してな

Steven
待って

じゃあどうして
ユニバースになったの?

Greg
知りたいか?
教えてやろう



よし 誰もいないな


Steven
え?
ここ誰の家? パパ?


パパ?


Greg
昔はもっと楽だったのに


Steven
パパ 不法侵入だよ


Greg
一つだけ探すものがある

Steven
パパ お金持ちなんだから
盗むことないよ

早く出よう

Greg
待ってろ

Steven
何を探してるの?

Greg
すぐ分かる

Steven
本当に誰もいない?

こんなのおかしい

何か書き置きを…

どこかに紙とペンがあるはず

でもなんて書こう

”素敵な家に侵入して
ごめんなさい“?

”いい趣味をお持ちのようですね“?

”ポプリまである“

嗅ぐお菓子みたいだ

“舶来のスプーンも素晴らしい”

“ガラスの山羊も”

全く
とにかく書いてみよう

紙はないかな




パパからの手紙?

全部未開封だ


パパ!?



パパ!



ここパパの家!?

Greg
俺のじゃない
親の家だ


Steven
これパパの部屋なんだ!

すごく綺麗だね

牢獄で育ったんじゃなかった?

Greg
そうさ

お前には想像もつかんだろう

門限に監視にミートローフ

Steven
ミートローフ嫌いなの?

Greg
20年間毎週木曜は嫌いだった


Steven
そんなに酷いはずないよ


Greg
スティーブン
酷いもんだった


初めてタコスを食べたのが
いくつか分かるか?

遅すぎた…


Steven
じゃあこれパパのなんだ

これ手形?

赤ん坊の頃の靴!

レスリングのトロフィー?
レスリングしてたの?

Greg
嫌々な

Steven
中学のアルバム!



わぁ 歯の矯正してる!

僕にそっくりだ

もっと人間っぽいけど



皆 書き寄せしてる

ティムからは“いい夏を”

それから…

ローレンってだれのこと?
たくさん書いてるね

Greg
一緒に数学コンテストに出たんだ

親に無理矢理やらされた
他にも沢山な


Steven
二人はどこ?

 Greg
今頃フロリダだ

毎年毎冬行くんだ

初めて行くのを断った時は
カンカンに怒ってた

Steven
髪!
すごく短い!

Greg
俺の卒業写真か?

切らされた
ライブの直前だったのに

Steven
ライブの写真はないの?

Greg
冗談だろ

どんな音楽も禁止だったんだぞ

だからこそ——

隠したんだ



やっぱり!

これだ
やっとここから出られる

ガラクタは置いていけ


よし
片足ずつだ…

Steven
玄関使っちゃダメなの?

Greg
ああ そうだな
つい癖で





Greg
まて スティーブン

お前の自分探しの旅なんだ

お前が運転席に座れ

Steven
でも次の行き先は?

Greg
お前次第さ




わかったよ

パパがまだグレゴリー・デマヨ
だったころは——

皆と同じ事を
一緒にするフリをしていた

だがある日 社会科の友達が

こいつをくれた

このCDに入った曲が
今のパパを形作ったんだ

準備はいいか? スティーブン


♪宇宙に君の居場所を見いだせ

宇宙も君を見つめているぞ

君に宇宙の居場所を見いだせ

今にわかる
夢は叶う

Steven
ねえ…
Greg
待て ここからだ


パーティーにようこそ
ミスター・ユニバース

君の一部になれて嬉しい

岩と花に出会い
秒と時間に出会い

カケラと冬
リンゴと教会

雫と神殿
猫と城

君は何にでもなれる
見たものにも
見てないものにも

それこそが
ミスター・ユニバース

ミスター・ユニバース♪

Steven
パパ 
名前の由来ってこれ?

Greg
そう そのとおりだ

Steven
歌から取ったわけ!?


Greg
これを聞いた時
全てが変わった

あの時気づいたんだ

考えもしなかったことが
この世には沢山あるんだとな

この世界を この宇宙を——

家から飛び出して
全て見たくなった

だからこのバンに乗り込んで
二度と振り向かなかった!

そうして旅先のベッドや
地下室を転々としてた日々が——

ママやお前との出会いに
繋がるとは思わなかったが

さあ今度はお前の番だ

ミスター・ユニバースを聞いて
どこに行きたくなった?

Steven
え? わ わからない

Greg
もう一度聞けばわかるさ



Steven
パパ
こんなの役に立たない

こんな曲いらない

僕はパパが持ってたものが
欲しかった

Greg
なに?

Steven
パパの家に生まれたかったよ

Greg
そんなバカな

Steven
パパの親は
そう悪くなかったかも

門限だって監視だって
ミートローフだって

何か理由があったんだ

Greg
スティーブン 

俺の親を知らないから
そう言えるんだ

Steven
ママの家族よりはマシさ!

銀河の遠い向こうまで
会いに行った

でもパパはすぐそこだ

Greg
スティーブン

パパは何も自由に
させてもらえなかった

好きなもの着るもの欲しいもの
全て否定された

本当だ
お前は俺よりもずっといい

Steven
なんで気付かなかったんだ

パパもママと同じなんだね

Greg
お前は自由に育ったじゃないか

Steven
僕はバンの中で育った!
学校にも行ってない!

二日前まで医者にも
行ったことがなかった!

Greg
お前はジェムなんだ!
他の子供とは違う!

Steven
僕も皆と同じになりたかった

僕の問題は
ジェムだってことじゃない



ユニバースに生まれたことだ!

Greg
危ない!

スティーブン!

はあ よかった

あまり怖がらせるな


Steven
僕何したの…

Greg
レッカーを呼んだ
車はひどいが何とかなる

その パパは パパは


お前を誇りに思う

Steven
なに?

Greg
パパはお前みたいに
親に歯向かう勇気はなかった

何でも言えるように
なってくれたな

何だって話してくれよ

今は辛いだろう
わかるよ

車を直して 家に帰ろう

途中でアイスを買おう
どうだ?

朝にアイスを食べてもいいかもな…


[END]


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