唱歌『故郷』と父
唱歌の『故郷』
この曲を聞くと父を思い出すようになった。
三番の歌詞が、父の生き方と重なるのかもしれない。
父も緑深く水の綺麗な場所で生まれた。しかし祖父が戦死して父の人生も変わることになった。父は故郷を飛び出して、資格を取り事業を始めた。昭和の時代、良い時も悪い時もあったようだ。結婚していた母の苦労も並大抵のものではなかったはずだ。
私が子供だった頃、お酒に酔った父は当時の苦労話をよく口にしていた。でも当時の私は「また同じ話だ」と、あまり聞いていなかった。
なのに...
父が亡くなって二年余り。今頃になって『故郷』を聞くと泣けてくるのは何故だろう。今は東儀秀樹さんが篳篥(ひちりき)で演奏する『故郷』が好きでよく聞いている。優しい篳篥の音色が気持ちをほぐしてくれる。そして、三番の歌詞が頭に浮かんでは涙が止まらなくなってしまう。
私も歳を取ったからなのか。
父ももう一度、故郷に帰ってみたかっただろうな。
今夜もまたベッドでひとり、『故郷』を聞いて涙するのだろうか。