別腹の君へ
食欲と性欲はよく似てる
お腹いっぱい食べても
違うタイプは別腹
だったりする
美形もいいが
知性も捨てがたい
体がいいのも魅力ですね
たまには若くてかわいいのもいいし
もちろんオヤジも素敵だ
と、いうわけで
別腹していたら
ある日
アヤシイ手紙が……。
全文紹介したいが
とても書ききれない
つまり長い
しかも自筆
レポート用紙10枚くらいに書かれた
それは
まさに
わたしの苦手とする
「論文」そのもの
わたしには
書いてあることが
さっぱり理解できない
面倒なので
放っておいたところ
また、来た……。
同じくらいの
分量の
「手紙」という名の
「論文」
あのね、
理屈じゃ通らないこと
世の中にはいーっぱいあるのだよ
それをわかってもらうため
わたしはまたまた放っておいた
まぁ、火をつけにくるほどじゃ
ないだろうと
タカをくくってただけなんだけど
だって、一回チューしただけなんだよ?
わたしだったら、一回チューしたくらいの男、
どうってことないんだけどなあ
でもそれはわたしの理屈で
彼はそのことに
重大な意味を見出しているのだ
あのさあ、
悪いこと言わないよ
君のその思いは
性欲だって割り切ってごらん
ラクになれるよ
同じような想いを
男と女が
共有できることなんて
ほとんどないんだ
共有していると思えるのは幸せな誤解
だから
立場でものを考えればいい
立場でものを考えることができるようになれば
たぶん君はラクに生きられるようになる
立場はいっぱいあるから
そのどれかに適当に自分を埋め込んでしまえばいい
みんなそうしてるんだよ
ね
そして、それでも、
「立場」からはみ出してしまう
かなしみや寂しさがあるとでも言うのなら
そのときは
詩でも書きなさい
詩なら読んであげるから
初出 現代詩フォーラム 20040702
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