目に見えないもの
それは目に見えない
見えないけれどある
確かにある
見知らぬ場所をお散歩中に
見つけた空き家
ぼろぼろの屋根の下から
黒猫が四匹
わたしを見つめ鳴く
知らない庭の
知らない犬
大きなむく犬
わたしを見つめ鳴く
泣いているんだ
取り壊し寸前の空き家に
小さな水槽
緑の藻の中に
赤い金魚が一匹
ぱっくんぱっくん
口を開いて
こちらを向いて
泣いてる
目に見えないものは
ないんだって
思ってる
醒めた大人のわたし
でも
ね
あるんだ
目に見えないもの
だって
あるんだ
ぎゅーっと胸が絞られて
誰にも証明できなくて
それでも
あるんだ
って
本当は
わたしも
いつだって
泣いてる
初出 現代詩フォーラム 20040725
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