田舎から出てきたばかり
まだ都会に慣れていない
デートの仕方も知らず
ま、若いからあっちのパワーだけは全開
お金も持ってないし
住んでるところも地味
ついでに見た目も地味
でもよく見ればブサイクじゃないから
磨けばなんとかなるかんじ
仕事場に現れた
かわいい学生のバイト君
少し遊んであげるよ
少しだけね
わたしはいろんなことに飽きちゃって
べつに行きたいところなんてないんだ
だから気が合うと
君は錯覚すると思うよ
遠くに彼氏がいて
仕事場には不倫相手のオヤジ
ただの男はそのへんで浮遊してる
でもね
ほんとは
今
一番近くにいるのは
君なんだ
彼氏が来るという日
何も知らない君は
勝手に風邪をひいて
仕事場に現れた
真っ赤な顔で
40度の熱で
こっそり裏で
解熱鎮痛剤を手渡し
今日はもう帰っていいよと言うと
さびしそうな目で君は私を見た
風邪のせいで赤く充血した目で
ねえ、子犬くん
困ったな
今日は遠くから
彼氏が来るんだよ
と
思ったけど
わたしの口から出たのは
「おかゆ作ってあげるから、家で待っててね」
という言葉
子犬君は安心したように笑った
子犬に弱いママは
子犬を拾っちゃいました
とさ
初出 現代詩フォーラム 20040803
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